ヤマハ発動機、無人農業用車両をはじめとしたロボティクス事業でNVIDIAのチップ、ソフトウェアを採用数千億円規模の事業を目指す

ヤマハ発動機は2018年09月13日、同社の戦略的事業分野であるロボティクス技術への取り組みに、NVIDIAのロボティクス/エッジコンピューティング向けコンピューティングモジュール「NVIDIA Jetson AGX Xavier」、およびロボティクスのシミュレーション/トレーニングを自動化する「NVIDIA ISAACロボティクスソフトウェア」を採用すると発表した。

» 2018年09月13日 12時00分 公開
[三木泉@IT]

 ヤマハ発動機とNVIDIAは2018年09月13日、NVIDIAのロボティクス/エッジコンピューティング向けコンピューティングモジュール「NVIDIA Jetson AGX Xavier(エグゼヴィア)」、およびロボティクスのシミュレーション/トレーニングを自動化する「NVIDIA ISAACロボティクスソフトウェア」をヤマハ発動機が採用すると発表した。

ヤマハ発動機 先進技術本部 研究開発統括部長の村松啓且氏

 ヤマハ発動機は、同社が研究開発を進めている多様な次世代インテリジェントモビリティ製品群にJetson AGX Xavierを搭載する。製品によって他のコンピューティングモジュールを採用する可能性を否定してはいないが、開発はXavierをプラットフォームとして進めるという。

 ヤマハ発動機 先進技術本部 研究開発統括部長の村松啓且氏がさらに期待するのはISAAC。これにより、「(同社の)あらゆる製品に展開可能な、万能型の知能化プラットフォームを構築したい」としている。その過程では、現場の意見をNVIDIAにフィードバック。発表後間もないISAACがより良い製品になるよう、支援したいとしている。

 ヤマハ発動機はNVIDIAの技術を、まず無人農業用車両、次に産業用ドローンの応用範囲拡大、さらに電動小型低速車両(ラストマイルビークル)に適用していくつもりという。また、二輪車のアクティブセーフティ、無人小型電動観測艇、プログラムレスな産業用ロボットなど、その他分野に関しても、「できるところからやっていく」とする。

ヤマハ発動機のインテリジェントロボティクス事業に幅広く使えるプラットフォームの構築を目指す

 無人農業用車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)は、早ければ2020年度の製品化を目途に開発しているもの。ヤマハの農薬散布用無人ヘリコプター/ドローンは、国内稲作地の3分の1で使われているという。だが、開発中のUGVは、これとは全く異なる。

 無人車両が畑を走行し、搭載するロボットによって摘果などを行う。車両は基本的には完全自動操縦で、問題発生時にのみ遠隔的に人が介入する形をとるという。収穫以外の人手に頼る作業も担い、「一年中使えるものにしたい」と村松氏は話す。小型、軽量で走破性に優れ、長時間稼働可能で、周辺認識能力が高い製品を開発するとしている。最初に投入する市場はおそらく海外で、米カリフォルニア州などを考えているという。

 産業用無人ヘリコプター/ドローンに関しては、前述の農薬散布に限らず、物流に広く利用できるようなものを想定している。例えば200kmといった長い航行距離、運搬重量の大きさ、耐久性、高い自律運航能力といった点を重視して開発しているという。

 電動小型低速車両(PPM:Public Personal Mobility)は、グローバルで30%、国内で80%のシェアを持つという同社のゴルフカーをベースに開発している。観光地、過疎地、さらには都市部での利用を想定し、需要予測に基づく自動運航ができるようなものを生み出したいという。市場における展開は、政府の規制が絡むため、読み切れない。一方で技術的な課題も見えてきたという。実証実験を通じて得られた知見の一つは、「現実は複雑」だということ。複雑な周囲の状況を認識して判断するには、高い演算パワーが求められるということ。このため、「今のうちから(Xavierのような)パフォーマンスを想定して開発していく」という。

 ヤマハ発動機は2016年策定の中期経営計画で、基盤技術開発の戦略的要素に、ロボティクス技術の応用・拡大と、知能化/AIの活用をうたっている。2017年度の売上高は1兆6700億円の同社だが、ロボティクス関連ビジネスは、「数百億でなく数千億の規模にしていきたい」という。

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