デジタルディスラプションに関する10の都市伝説Gartner Insights Pickup(97)

デジタルディスラプションの本質を理解しているCIOは、これをチャンスに変えられる。ここでは、デジタルディスラプションに関してよく聞かれる10の誤解を紹介する。

» 2019年02月22日 05時00分 公開
[Jill Beadle, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 Uberは、タクシー業界に与えたインパクトから、「ディスラプター」(創造的破壊者)と呼ばれる。だが、Uberが行ったことはそれだけにとどまらない。同社は、Gartnerがディスラプション(創造的破壊)の4つの要素と位置付ける「ビジネス」「技術」「産業」「社会」のうちの幾つかに、根本的な変化をもたらした。これは、Uberが真のディスラプターであることを示している。

 だが、こうした広範で根本的な変化には、都市伝説や誤解がつきまとう。ディスラプションは誇大に宣伝されたり、混乱を招いたりすることが多いからだ。ITに関しては特にそうだ。

 「都市伝説は“偽りの友人”だ。都市伝説はどこにでも生まれるので、われわれはディスラプションに関する俗説の流布を心配しなければならない」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントを務めるデイヴィッド・スミス氏は、2018年10月に米国のオーランドで開催されたGartner Symposium/ITxpo 2018で語った。

 「都市伝説は取り組みの障害になり、イノベーションを妨げ、われわれに誤った期待を抱かせる」(スミス氏)

 デジタルディスラプションは、今日の企業が直面する単一の最大の変化だ。そのため、CIOがマスターすべき最も重要なテーマとなっている。以下では、最も一般的な10の俗説を取り上げ、どこに問題があるのかを明らかにしていく。

都市伝説1:ディスラプションは悪いことである

 実際には、ディスラプションは常に、一部の人々にとって良いことだ。だが、本質的に良い、あるいは悪いということはない。ある人々にとってはチャンスだが、別の人々にとっては脅威だ。否定的な考え方にとらわれてはならない。ディスラプションがもたらすチャンスを生かすべきだ。

都市伝説2:ディスラプションは使われすぎのバズワード(流行語)である

 「ディスラプション」は使われすぎている言葉であり、この言葉に対して疲労を感じている人がいるのは事実だ。だが、ディスラプションは極めて今日的な意義を持ち、重要だ。無視してはならない。「何が創造的破壊の対象となるのか、ディスラプションはどのように重要なのか」「何が根本的に変わるのか」「誰が注意を払わなければならないか、それはなぜか」といった質問について話し合い、前向きな議論を行う必要がある。

都市伝説3:どんな変化もディスラプションである

 変化はディスラプションとイコールではない。ディスラプションが起こるのは、クラウドコンピューティングやスマートフォンの普及拡大のように、システムや環境における根本的なシフトが進んでいるときだ。多くの場合、ディスラプションと考えられているものは、実際には3Dテレビや「ポケモンGO」のような機能や流行だ。戦略には、ディスラプション後の状況を反映させる必要がある。

都市伝説4:ディスラプションは技術だけに関わる問題である

 ほとんどの場合、デジタルディスラプションには何らかの技術の要素があるが、技術自体は必ずしもディスラプションの主要要素とは限らない。ディスラプションは、その4つの要素(ビジネス、技術、産業、社会)において、「どのようなモデルが創造的破壊の対象となっているか」という文脈で捉える必要がある。

都市伝説5:ディスラプションは巨大デジタル企業のためだけのものである

 AmazonやGoogle、Appleのような巨大デジタル企業は、ディスラプションの先陣を切るかもしれないが、ディスラプションの大部分は、何千もの中小企業や大企業で起こる。こうした巨大デジタル企業に注目し、彼らに学ぶとよい。組織、文化、財務、またはビジネスモデルを変更し、ディスラプションを利用するプロセスを開始する行動計画を策定する。また、幅広い企業や個人に影響するディスラプションの波及効果も検討する。

都市伝説6:デジタルディスラプションは消費者市場でのみ起こる

 デジタルディスラプションは、まず消費者市場で見られる場合が多いのは事実だ。だが、その影響はさまざまな市場や企業に広がる。これは主に、「ITのコンシューマライゼーション」と呼ばれる現象に起因する。この現象は、消費者市場におけるディスラプションを企業のIT部門が取り入れることを指す。ユーザーの立場に立って消費者向けのシナリオを当てはめ、B2Bにおけるデジタルディスラプションを理解しなければならない。

都市伝説7:もてはやされているディスラプションほど影響力が大きい

 人工知能(AI)、ブロックチェーン、仮想現実(VR)は盛んにもてはやされ、注目を浴びている。だが、今のところまだ、真のディスラプションと考えられるほど成熟していない。真のディスラプションは主流として普及するだけでなく、波及効果ももたらす。過熱した人気や期待はやがてしぼむが、真のディスラプションの波及効果はそうではない。

都市伝説8:イノベーション、トランスフォーメーション、ディスラプションは、全て同じ事象である

 イノベーションとトランスフォーメーションは2つの異なる事象であり、好循環の中で発生する。ときには、一方が他方を妨げたり導いたりすることがあり、これによってディスラプションが起こる。両者のつながりを見失ってはならない。イノベーションやトランスフォーメーションの取り組みには、ディスラプション分析を取り入れるようにする。

都市伝説9:ディスラプションは自分には関係ない

 ディスラプションは全ての人に影響する。CIOやITリーダーは、ディスラプションを特定できるユニークな能力を持っていることが多い。だが、ディスラプターやディスラプションのチャンスに出会うのは、必ずしもCIOやITスタッフとは限らない。それらは技術以外の分野でも生まれるからだ。エンタープライズアーキテクトや最高戦略責任者と協力して、ディスラプションを利用する戦略を策定し、ディスラプターCIOとして自らを確立すべきだ。

都市伝説10:われわれがディスラプションの対象になるはずがない

 誰もがディスラプションの対象になる可能性があり、ディスラプターもその例外ではない。安泰な者は誰もいない。Appleも、防御的なディスプラション戦術を取るGoogleと戦わなければならない。GoogleのAndroidを搭載するスマートフォンは、Appleの「iPhone」と競合している。先見の明があるリーダーは、自社がディスプラションの対象になり得ることを認識し、次の根本的な変化から恩恵を受けられるように、創造的な自己破壊を行う戦略を採用する。おごりは禁物であり、創造的な自己破壊を恐れてはならない。

出典:Digital Disruption Myths(Smarter with Gartner)

筆者 Jill Beadle

Brand Content Manager


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