Windows Server 2019評価版の提供再開がここまで遅れた理由は?山市良のうぃんどうず日記(149)

2019年1月17日(米国太平洋標準時)、「Windows Server 2019評価版」ISOメディアの提供が再開されました。2018年10月初めに公開後、数日で提供中止となった評価版ですが、再開に3カ月以上かかった理由がよく分かりません。

» 2019年03月19日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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山市良のうぃんどうず日記

Windows 10 October 2018 Update騒動は収束したけど、Windows Serverは?

 「Red Stone 5(RS5)」とも呼ばれるWindows 10 October 2018 Update(バージョン1809)は、2018年10月初めにGA(Generally Available)となり、正式にリリースされました。しかし、直後にさまざまな問題が発覚して数日でロールアウトは停止され、ISOメディアの提供も停止となりました。

 その後、2018年11月13日(米国太平洋標準時、PST)に再リリースされ、2019年1月中旬には「自動更新」による配布(対象は機械学習に基づいて段階的に)も開始されています。Windows 10 バージョン1809のロールアウトは3カ月半ほどかかりましたが、ようやく正常化したようです。

 RS5にはサーバ版もあります。長期サービスチャネル(Long-Time Servicing Channel:LTSC)のWindows Server 2019(Datacenter、Standard、Essentialsエディション)、半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)のWindows Server,version 1809、無料のハイパーバイザー製品であるMicrosoft Hyper-V Server 2019です。

 これらは一部を除いてWindows 10 バージョン1809と同じ2018年11月13日(PST)に再リリースされました。しかし、その後の状況はWindows 10 バージョン1809とは異なり、いまだ正常化したとはいえません。以下の表に、RS5の2018年10月初めのGAからこれまでを、タイムラインにまとめてみました。

日時 内容
2018年10月2日(PST) Windows 10 October 2018 Update(バージョン1809)およびWindows Server 2019リリース(OSビルド17763.1ベース、Datacenter、Standard、Essentials、Microsoft Hyper-V Server、Semi-Annual Channel version 1809)、評価版ISOメディア提供開始。
2018年10月5日(PST) Windows 10 バージョン1809の機能更新プログラムのロールアウト停止、全ての製品版、評価版ISOメディアの提供停止。
2018年11月13日(PST) Windows 10 バージョン1809再リリース(OSビルド17763.107ベース)。Windows 10 バージョン1809の機能更新プログラムはWindows Updateのオプションとしてのロールアウトが再開(「更新プログラムのチェック」をクリックしたユーザーに対して)。
手動アップグレード用のダウンロード提供、Windows 10 EnterpriseおよびWindows 10 Enterprise LTSC 2019の評価版ISOメディアのダウンロード提供も再開。
同日、Windows Server 2019再リリース(OSビルド17763.107ベース)。ボリュームライセンスセンター(VLSC)でのみ製品版ISOメディア提供再開。Visual Studioサブスクリプションなどには翌週以降に順次提供再開。
2018年11月27日(JST)ごろ Azure MarketplaceでWindows Server 2019 Datacenterイメージが利用可能に。
2018年12月14日(PST) Windows Server 2019 Essentials評価版ISOメディア(OSビルド17763.107ベース)の提供再開。
Windows Server 2019 Essentials評価版ソフトウェア|180日
2019年1月16日(PST) 「半期チャネル(対象指定)」に対して、Windows 10バージョン1809機能更新プログラムの自動更新でのロールアウト開始。
2019年1月17日(PST) Windows Server 2019評価版ISOメディアおよびVHD(VHDは英語版のみ)の提供再開(OSビルド17763.253ベース)。
Windows Server 2019評価版ソフトウェア|180日

 注目していただきたいのは、Windows Serverの評価版の提供再開時期です。Windows Server 2019 Essentials評価版は、製品版の再リリースから1カ月後、Windows Server 2019(Datacenter/Standard)評価版は、製品版の再リリースから2カ月以上たってからの提供再開です。

 それまで、再開時期が事前にアナウンスされることはありませんでした。Microsoft Hyper-V Server 2019に至っては、筆者のもう一つの連載記事でお伝えしたように、まだ再開されていません(Visual Studioサブスクリプションでも未提供)。

 Windows Server 2019評価版と同じように、Microsoft Hyper-V Server 2019の提供が再開されれば以下の公式ブログでアナウンスされるはずです。

 Windows Server 2019は「ソフトウェア定義のデータセンター(Software Defined Datacenter)」機能の一部に制限がかかっている状態でリリース、再リリースされました。具体的には、「記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct:S2D)」と「ネットワークコントローラー(Network Controller)」を構成しようとしてもエラーが表示され、ブロックされるのです。

 これらの機能は「Windows Server Software-Defined(WSSD)プログラム」で認定されたハードウェアでの利用が推奨されています。当初、最初の認定ハードウェアが2019年1月中旬にローンチされるとされており、認定ハードウェアが利用可能になり次第、Windows Updateを通じて制限を解除すると以下のサポート情報に記述されています。WSSDローンチイベントは2019年2月という公式ブログのアナウンスもあります。しかし、これらの情報にその後のアップデートはなく、実際、どのような状況になっているのかよく分かりません。

以前の評価版とはどこが違うのか?

 Windows Server 2019評価版の提供が再開されるまで、英語のダウンロードサイトには次のように説明されていました。

Following the launch of Windows Server 2019, we started the process of publishing the media for the 180-day evaluation media. In the process, we found an issue with the Eval media and are in the process of fixing it...
(筆者訳:Windows Server 2019のローンチに続いて、私たちは180日評価版メディアを発行する作業を開始しました。その作業の中で評価版メディアに問題があることが判明し、現在、それを修正する作業をしています……)

 Microsoft Hyper-V Server 2019のダウンロードサイトには、現在もそう説明されています(画面1)。Microsoft AzureでWindows Server 2019が利用できるとか、製品版メディアには影響しないとかとも書いていますが、Microsoft Hyper-V Server 2019を待っている人には意味が通らないでしょう。

画面1 画面1 2019年3月15日時点のMicrosoft Hyper-V Server 2019のダウンロードサイト(英語)

 “評価版メディアの問題”とは、製品版がOSビルド17763.107ベースで再リリースされる理由となった問題(ユーザーデータ消失問題など)とは別のことのように読み取れます。

 Windows Server 2019 Essentials評価版のメディアは、ダウンロードサイトで公開されているプロダクトキーを入力して評価版としてインストールするタイプであり、おそらく製品版と評価版のISOメディア(OSビルド17763.107)は同じものです。製品版のプロダクトキーを入力すれば製品版としてインストールされ、評価版のプロダクトキーを入力すれば評価版としてインストールされます(画面2)。

画面2 画面2 Windows Server 2019 EssentialsのISOメディアは製品版と評価版でおそらく共通。評価用のプロダクトキーを入力すると、180日評価版としてインストールされる(評価版から製品版への移行には非対応)

 逆に、製品版メディアを評価版としてインストールすることも可能です。こちらは評価版メディアに問題があったわけではなく、評価版を認証するMicrosoftのライセンスサーバの準備に1カ月かかったのかもしれません。

 ちなみに、評価版としてインストールされたWindows Server 2019 Essentialsは、Windows Server 2019 Essentials製品版のプロダクトキーを使用して製品版に移行することはできません。Standardエディションの製品版プロダクトキーを使用して、Windows Server 2019 Standardにアップグレードすることは可能です。

 一方、さらに時間がかかったWindows Server 2019評価版は、プロダクトキーの入力が求められないタイプのものです(評価用のプロダクトキーは事前に組み込まれています)。こちらは、2019年1月の累積更新プログラム(KB4480116)が適用済みのイメージがベースとなっています(OSビルド17763.253)。もしかすると、1月の累積更新プログラムに含まれる修正の中に、評価版メディアの問題の修正があり、それを待っていたのかもしれません。これは、あくまでも筆者の想像です(画面3)。

画面3 画面3 Windows Server 2019評価版は、OSビルド17763.253(2019年1月の定例の累積更新プログラムと同一ビルド)

 ちなみに、Windows Server 2019評価版は、評価終了後に製品版プロダクトキーを使用して製品版に切り替えることが可能です。その方法については、以下のドキュメントで説明されています(Windows Server 2019にも適用されます)。

初版の評価版は180日を待たずに期限切れに

 2018年10月初めにWindows Server 2019評価版をダウンロードして持っている方の中には、再リリース後の評価版の提供再開前から、Windows Server 2019の評価を続けていた人もいるでしょう。しかし、評価中に目を離した隙に、なぜかシャットダウンしていたという経験はないでしょうか。

 Windows Server 2019評価版は、インストールから10日以内にインターネット経由でライセンス認証を行う必要があります。認証されない状態のまま10日が過ぎると、「猶予の期限切れ」となり、起動後1時間ほど経過すると自動的にシャットダウンするようになります。実は、OSビルド17763.1ベースの初版の評価版は、ライセンス認証ができないという問題が2018年10月初めのころから報告されていました。

 その後、この問題が解消されたという話は聞きません。つまり、OSビルド17763.1ベースの初版の評価版は、これから新規インストールしたとしても10日で「猶予の期限切れ」となってしまうのです(画面4)。

画面4 画面4 2018年10月初めにダウンロードした評価版ISOメディアでインストールしたWindows Server 2019はライセンス認証が成功せず、10日の「通知」状態の後に「猶予の期限切れ」となる

 1時間でシャットダウンしてしまうようになると、Windows Updateによる更新は難しいでしょう(1時間内に再起動まで行けば可能です)。修正する必要があった評価版メディアの問題とは、このことなのかもしれません。これもまた、あくまでも筆者の想像です。

 なお、初版の評価版のインストールに対して「slmgr.vbs /rearm」コマンドを実行し、猶予期限をリセットしても、10日後に再び「猶予の期限切れ」になります。製品版プロダクトキーによる製品版への切り替えで、製品版としてライセンス認証が可能かどうか、筆者は確認していません。ちなみに、提供が停止された初版のMicrosoft Hyper-V Server 2019には、手元の環境で確認した限り、「ライセンスの状態:ライセンスされています」と正しくライセンス認証が行われていました。

これから評価版で評価を始める方へ

 提供が再開されたWindows Server 2019評価版やWindows Server 2019 Essentials評価版のダウンロードメディアを使用して、これからこれらのOSを評価しようと考えているなら、本連載の第144回の記事をご覧ください。

 ここで書いてあるように、Windowsセットアップが作成する既定のパーティション構成をそのまま使用するのではなく、自分で推奨パーティション構成にパーティションを切ってから新規インストールすることをお勧めします。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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