2019年9月に開催された日本国内で最大規模のPythonコミュニティーによるカンファレンス。その第1日目 基調講演の内容をレポートする。
2019年9月16〜17日にかけて、日本そして海外から多くのPythonユーザーやPythonコミュニティーが参加する「PyCon JP 2019」カンファレンスが大田区産業プラザPiOで開催された*1。本稿と続編では、カンファレンスの第1日目と第2日目の基調講演の内容をまとめる。
*1 厳密には9月14日には「PyCon JP 2019 Sprint」が、翌15日には「Tutorial Day」が開催されている。
PyCon JP 2019のテーマは「Python New Era」。2020年1月1日にはPython 2系のサポートが終了することや、昨今の機械学習ブームの中で広くPythonが受け入れられるようになってきたことなど、「Pythonが新しい時代を迎え」ようとしていることを象徴するイベントとなった。
おおよそ1000人の参加者を集めた今回のカンファレンスでは、多くのトークセッションやライトニングトーク、スポンサーブースやコミュニティーによるポスターセッションなどで「Python大好き」という参加者の思いが感じられた(セッション一覧についてはこちらを参照)。
2日間に渡るカンファレンスでは、「Python New Era」というテーマに沿って、以下の基調講演が行われた。
本稿では、第1日目の基調講演の内容をかいつまんで報告しよう。
第1日目の基調講演では『独学プログラマー Python言語の基本から仕事のやり方まで』の筆者であるコーリー・アルソフ氏が「Pythonが世界を席巻している理由」「急速な成長が続く理由」「Pythonが成長を続けるためにユーザーができること」について語った。
アルソフ氏とPythonやプログラミングとの関わりをまとめると次のようになる。
プログラミングの世界で一度は挫折したものの、Pythonと出会ったことで、彼は「ずぶの素人からプロの開発者」へと成長し、Pythonを通じてさまざまな人や世界と出会うことになった。Pythonが彼の人生を大きく変えたともいえる。
そして、現在は以前の彼と同じく、プログラミングの経験のない人がプロのPython開発者として世界で活躍する手助けをしている。
アルソフ氏によれば、Pythonが世界を席巻している理由としては次の3つが挙げられる。
「初心者にも受け入れられやすい」というのは「シンプルで理解しやすい」「基礎を学んだ後に進むべきパスがいろいろある」「給料がよい」「フリーランスにも適している」といった理由からだ。特に「シンプルで理解しやすい」というのは、上で述べたように彼自身がプログラミングの学習で一度挫折しているという経験から出た言葉でもあるはずだ(だが、実際に大学で最初に学ぶ言語としてPythonが選択されることも増えているという)。
他の要素については詳細を割愛するが、Pythonにはさまざまなフレームワークやライブラリがあり、それらを活用することで、Pythonの基礎を身に付けた後には、自分の嗜好や仕事の種類に応じて、さまざまな道を歩めるだろう。さらに世界でも日本でもPythonプログラマーの給与は上昇を続けている。その一方で、Pythonプログラマーとして成長を続けながら、フリーランスとしての実績を積み上げていくという生き方もある。こうした事柄については、上掲の基調講演の動画をご覧いただきたい(英語)。
また、Pythonプログラマーに対する需要は、信じられないほどの勢いで増加している。
これは世界中の大企業でPythonが使われるようになったことと、データサイエンティストに対する需要の上昇などが要因として挙げられる。データサイエンス分野ではPython、R、SQLなどのスキルが必要だ。そのため、データサイエンスの世界に飛び込もうというのであれば、Pythonを身に付ける必要があるというのだ。また、15年の間には米国では今ある仕事の半分程度がAIによって置き換えられるという予測もある(これは日本でも同様だろう)。
新たな時代への変革の原動力となっているのが、データサイエンスの分野であり、それを支えるPythonといえる。こうしたことからもPythonに対する需要はまだまだ成長を続けるだろう。
ここまで見てきたように、Pythonは初心者にも適した言語であり、今後もPythonに対する需要は増え続けるだろう。だが、それを支えるPythonのコミュニティーは世界でもベストなものだとアルソフ氏はいう。
筆者が思うには、カンファレンス(やその前日)に集まった参加者や登壇者、スポンサーはもちろんコミュニティーを形成する重要な要素だろうし、Pythonのコア開発者やさまざまなフレームワークやライブラリを開発している方々にもそうだろう。さらにPythonのドキュメントの日本語化を進める人たちも欠かせない。特にこれといったグループには属さずともオンラインで、あるいはオフラインでPythonについて語る人たちだって、コミュニティーの重要なメンバーだ(抜けている要素があったらごめんなさい)。そして、そんな人たちが集まってできあがっているのが、PyConというイベントだ。
Pythonが成長を続けるには、コミュニティーも成長を続ける必要がある。そのためには、Pythonについての情報に常にアクセスする必要もあるし、何らかのコミュニティーに属するという手もあるだろう。
最後に、アルソフ氏は「ブログでも、ポッドキャストでも、何かのコミュニティーでも、それを通じて日本や世界中のPythonコミュニティーとつながることを、何か始めよう」として、Pythonへの貢献を呼びかけた。Pythonのコア開発者となる、オープンソースプロジェクトに貢献する、初心者の手助けをするなど、貢献の仕方もいろいろだ。
しかし、アルソフ氏自身がPythonと出会ったことで人生が大きく変わったように、ほんのちょっとした手助けでもそれがPython初心者にとってはとても大きなことかもしれない。そして、少しずつの手助けが積み重なっていくことで、PythonコミュニティーそしてPythonの大きな成長へとつながることになるだろう。
次回は第2日目の基調講演について見ていく予定だ。
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