Office 365 ProPlusの名称変更とチャネル名変更、既存環境への影響は?企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(76)

大企業向けのOfficeアプリといえば、サブスクリプション製品である「Office 365 ProPlus」ですが、最近、このアプリの名称と更新チャネルの名称が大きく変更されました。「Microsoft 365管理センター」での確認と、Officeアプリのポリシー管理用テンプレートや「Office展開ツール(ODT)」を使用している場合は、最新版の利用と現在利用中の設定への影響の調査、見直しをお勧めします。

» 2020年06月16日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

Office 365 ProPlusがMicrosoft 365 Apps for Enterpriseに改称

 Microsoftは「Office 365」ブランドで提供されてきた個人向け、一般企業向け、大企業向けのOfficeサブスクリプションの名称を、一部を除いて「Microsoft 365」に統一しました。「Office 365 E」など大企業向けサブスクリプションは今回の変更に含まれませんが、このサブスクリプションに含まれるOfficeアプリは「Microsoft 365 Apps for Enterprise」(大企業向けMicrosoft 365)に変更されています。この変更は、2020年4月末に「月次チャネル(Monthly Channel)」向けにリリースされた「バージョン2004」を皮切りに、順次他のチャネルにも適用されます。

更新チャネル名称の変更と企業向けの新しい月次チャネル

 Microsoftは2020年5月14日(米国時間)、Officeアプリの更新チャネルについても名称変更と新しいチャネルの追加を発表しました。

 従来の「月次チャネル(Monthly Channel)」「半期チャネル(Semi-Annual Channel)」「半期チャネル(対象指定)」は、以下の表1に示すように大きく変更されます。

新名称(日本語/英語) 以前の名称(日本語/英語)
Beta Channel Insider、Insiderファースト/Insider Fast
最新機能提供チャネル(プレビュー)/Current Channel(Preview) 月次チャネル(対象指定)、Insiderスロー/Monthly Channel(Targeted)、Insider Slow
最新機能提供チャネル/Current Channel 月次チャネル/Monthly Channel
月次エンタープライズチャネル/Monthly Enterprise Channel なし
半期エンタープライズチャネル/Semi-Annual Enterprise Channel 半期チャネル/Semi-Annual Channel
半期エンタープライズチャネル(プレビュー)/Semi-Annual Enterprise Channel(Preview) 半期チャネル(対象指定)/Semi-Annual Channel(Targeted)
表1 Officeアプリの更新チャネルの新しい名称

最新情報(2020年6月24日追記)

 米国時間2020年6月11日リリースの管理テンプレート(バージョン5029.1000)で、「最新機能提供チャネル」は「最新チャネル」に、「BetaChannel」は「ベータチャネル」に修正されました。


 各更新チャネルのサービス内容に変更はありませんが、「月次エンタープライズチャンネル(Monthly Enterprise Channel)」が新たに追加されました。新しい名称による更新プログラムの提供は、2020年5月12日(米国時間)リリースの「月次エンタープライズチャンネル(Monthly Enterprise Channel)」向けバージョン「2003」から順次行われます(画面1画面2)。

画面1 画面1 Office 365 ProPlusの「月次チャネル」は、2020年4月末リリースの「バージョン2004」から「大企業向けMicrosoft 365」に、2020年6月初めリリースの「バージョン2005」から「最新チャネル」に名称変更
画面2 画面2 2020年5月12日(米国時間)、新しい更新チャネルが利用可能に。他の更新チャネルでの変更も6月以降の新しいバージョンで順次行われる

 また、2020年6月9日(米国時間)以降、サブスクリプションの新しいテナントにおける既定の更新チャネルは「最新機能提供チャネル(Current Channel)」に変更されます。

 なお、表1の日本語名称は2020年5月リリースの管理用テンプレートに基づいていますが、現状、管理テンプレートでは「チャネル」が「チャンネル」と表現されています。「チャネル」と「チャンネル」の表記の揺れは、しばらくはさまざまなところ(Officeアプリのバージョン情報など)で目にするかもしれません。

 Officeアプリのバージョン情報や「Microsoft 365管理センター」(旧称、Office 365管理センター)では「最新機能提供チャネル」ではなく、「最新チャネル」と表記されています。 また、Officeアプリのバージョン情報では、「半期エンタープライズチャネル(プレビュー)」ではなく、「半期エンタープライズチャネル(プレビュー版)」と表記されています。

 従来の更新チャネルから名称が変更されたものについては、そのサービス内容に基本的に変更はないようです。「最新機能提供チャネル(Current Channel)」(旧称、月次チャネル(Monthly Channel))と、今回新たに追加された「月次エンタープライズチャンネル(Monthly Enterprise Channel)」の違いについては明確に区別する必要があるでしょう。

 これらの違いを以下に示しますが、「月次エンタープライズチャンネル(Monthly Enterprise Channel)」は、最新機能をいち早く取り入れながら、予測可能なスケジュールに従って更新でき、更新回数を減らすことができるオプションといえるでしょう。

最新機能提供チャネル、最新チャネル(Current Channel)

 スケジュールの予告なく、新機能が含まれる新バージョンがリリースされ、すぐに利用可能になります(通常、1カ月に1回)。また、セキュリティ更新が毎月第2火曜日(米国時間)、非セキュリティ更新が予告なくリリースされます。特定のバージョンのサポート期間は、次のバージョンがリリースされるまでになります。


月次エンタープライズチャンネル(Monthly Enterprise Channel)

 新機能、セキュリティ更新、非セキュリティ更新が、毎月1回、毎月第2火曜日(米国時間)にのみリリースされます。特定のバージョンのサポート期間は2カ月提供されます。


 新しいテナントについては、「最新機能提供チャネル、最新チャネル(Current Channel)」が既定の更新チャネルになります。これまで「一般法人向けMicrosoft 365 」(旧称、Office 365 Business)の既定の更新チャネルは「月次チャネル」、「大企業向けMicrosoft 365」(旧称、Office 365 ProPlus)の既定の更新チャネルは「半期チャネル」でした。

 「月次チャネル」では何度か、特に日本語環境において更新プログラムのインストールにより問題(VBAマクロやAccessクエリが機能しなくなる)を引き起こしました。既定の更新チャネルにしたのはMicrosoftが推奨したいからだと思いますが、更新チャネルの選択には十分に注意してください。

 新しい更新チャネルへの対応は、2020年5月の発表時にMicrosoft 365管理センターで利用可能になっています。既存の更新チャネルが自動的に切り替わることはありませんが、新しい更新チャネルを利用したい場合は「設定」の「Officeプログラムのダウンロード設定」でいま一度確認し、必要があれば変更することができます(画面2)。

画面3 画面3 「Microsoft 365管理センター」を利用した更新チャネルの設定

Office管理用テンプレートやODTを利用している場合

 企業内クライアントのOfficeアプリの更新や展開のために、Officeアプリのポリシー管理用テンプレートや「Office展開ツール(Office Deployment Tool、ODT)」を利用している場合は、製品名変更や更新チャネル名変更の影響を調査し、対処してください。既存の設定が影響を受けることはありませんが、新たに追加された更新チャネルに対応するには、最新のテンプレートやツールを利用する必要があります(画面4画面5)。

画面4 画面4 古い管理テンプレートを使用した更新チャネルの選択。既存の指定は引き続き有効だが、新たに追加された「月次エンタープライズチャネル」には対応できない
画面5 画面5 2020年5月14日にリリースされた新しい管理テンプレートを使用した更新チャネルの選択。「月次エンタープライズチャネル」に対応済み

 ODTは2020年4月にリリースされた最新バージョンについては、今回の製品名変更や更新チャネル名変更の影響はありません。構成ファイルでは、従来と同じ製品名(Product ID="O365ProPlusRetail")と更新チャネル(Channel="Monthly"または"Broad"または"Targeted")は有効です。更新チャネルについては、新たに追加された更新チャネルと名称変更された既存の更新チャネルについて、新しい値も利用可能になっています。詳しくは、以下のドキュメントを参照してください。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。