せっかく中途解約に関する記述を契約書に記していたのだが、プロジェクトが中止になった折に損害賠償額を巡って両者は対立し、残念ながら裁判にまでなってしまった。
ベンダーは中止に当たり、契約に基づいて約9400万円を請求した。
実は個別契約2の1億9000万円のうち既に5000万円は支払われている。これはUI工程の全てと次に来るSS工程の一部に対する支払いだ。従ってベンダーは、それ以降に行った作業(SS工程の途中まで)を9400万円と見積もって請求したことになる。
前述した通り、SS工程はまだ完了していない。しかしベンダーは、この工程の中で自分たちが行った作業を「終了分」と考えて請求したことになる。
一方でユーザー企業は、検収も確認もしていない出来かけの作業は「終了」ではないと主張する。終了しているのはあくまでUI工程までであり、何の成果物もないSS工程に費用を払ういわれなどないと考えている。
もちろん、これを民法そのままで判断すれば、請負契約である以上、検収をしたもの以外の費用は不要だ。しかしこのプロジェクトの場合、前出の条文で「終了分」と書いているので、これが民法に対して優先する。ベンダーはそれを念頭に請求をしたのだ。
ただ基本契約の28条1項には、この「終了部分」が何を指すのかが明確に記されていない。ベンダーが行った作業を終了部分と見なすのか、あるいはSSという1つの工程の完了をもって終了部分と見なすのか、その定義が曖昧なのだ。
契約書にはない「終了部分」の定義を裁判所はどのように判断したのだろうか。判決の続きを見てみよう。
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