これからの時代、クラウドネイティブは正義だ――そう信じて移行を推進するとき、ぜひ周囲を見渡してほしい。環境の変化に戸惑い、生産性が低下している人たちがいるかもしれない。運用管理者に光を当てるオンラインイベント「Cloud Operator Days Tokyo 2021」のNTTコミュニケーションズの講演では、そんな戸惑う人たちに寄り添い、運用しやすい環境作りの工夫が紹介された。
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サービスを運用管理する上で重要な情報となるのが、ログだ。運用管理者は障害対応やパフォーマンスチューニングなどさまざまな場面でログを確認し、サービス品質の改善や安定稼働に尽力する。
運用管理者は、これら業務を効率良く進めるために、独自で組んだスクリプトを使いこなしていることが多い。それがある日を境に、親しみ慣れた従来の方法ではログを確認できなくなってしまったらどうだろう――「Cloud Operator Days Tokyo 2021」の講演「Kubernetesでコンテナを使ってサービス化したら運用者がログを追えなくて工夫した話」では、そんな悩みを聞き漏らさず、ちょっとした工夫でクラウド移行後も快適に業務ができる環境を整えた秘話が披露された。
同講演に登壇したのは、NTTコミュニケーションズでSRE(Site Reliability Engineer)を務める昔農凜太朗氏。同氏はプロダクトライフサイクル向上に取り組む中で、10を超えるプロダクトのインフラをクラウドネイティブ化するミッションに着任。「全社的な取り組み」という大義名分の下、積極的に推進していた。
「クラウドネイティブという単語はある種の“正義”のように扱われていた」と昔農氏は言う。「次の開発からはクラウドネイティブでいきますと宣言したとき、真っ向から反対する動きはそれほど大きくなかった」と明かす昔農氏は、推進する側も「絶対良いものになる」「サポートも十分に行う」「インフラ設計や運用に必要なスキルセットはKubernetesやDocker、コンテナ、パブリッククラウド、Infrastructure as a Code程度」「みんなと一緒に会社を強くしていこう」などのメッセージを発信しながら、従事してきた。
しかし、受け入れる側にとって、当然の流れと理解しながらも、新しいことに移行する不安や既存環境との違いに戸惑いがなかったわけではなかった。
あるとき、昔農氏はある相談を受けた。それは、「Kubernetes上のコンテナで動いているアプリケーションのログって、どうやって見るの?」という質問だったという。
「これまではLinux上のプロセスのログはファイルとして扱えるので、『tail -f』などのコマンドを使ってログをリアルタイムに確認できた。Google Cloud Platform(GCP)上のKubernetesのコンテナでログを確認したい場合は『Google Cloud Monitoring』を、OSS(オープンソースソフトウェア)上のコンテナであれば『Grafana Loki』といったログ可視化ツールを使うことになる。『これまでのやり方を捨てて、いきなり別の手法に変えろ』と言われても困るし、不便に感じる人もいるだろう。一緒に働く仲間がつらい思いをしているのに、見過ごすことはできない。むしろ、そんな状態でも推進するクラウドネイティブ化は、果たして正義なのかとジレンマで苦しんだ」(昔農氏)
そこで、昔農氏は問題を整理することにした。
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