35歳からのキャリア――中堅世代こそ「Will、Can、Must」を考えよう仕事が「つまんない」ままでいいの?(90)(3/4 ページ)

» 2022年06月15日 05時00分 公開

40代になるとキャリアを自分で形成する必要が出てくる

 さて、問題はここからです。

 30代のころは会社からやるべきことが指示されますが、40歳前後になると、指示されることが少なくなり、やるべきことを自分で考えることが求められるようになってきます。

 このとき、「いままでの経験を生かして、今後は○○をしていきたいな」のように、やりたいことがあればいいのですが、それがないと、会社のやるべきこととできることの重なりが小さくなっていき、「言われたこと(やるべきこと)はやっているけれど、このままでいいのかな?」と、何となく不安を抱くようになります。

 ベン図はこんな感じ。できることはあるけれど、やるべきこと、求められることが少なくなっていく感じです。

40代のWill、Can、Must

 しかも、近年は「人生100年時代」や「45歳定年制」などといわれ、いままでより長く働かなければいけないっぽい。でも、定年まで働けるのかも分からない。なのに、会社人生の先が何となく見えてくるし、役職定年をする先輩が身近にいたりすると、ますますやるべきこととの重なりが減っていく感じがして、さらに不安になってしまいます。

 こんなときは、どうにかして、Will、Can、Mustの重なりを増やしていきたいですよね。

年代に合わせて、Will、Can、Mustをマネジメントする

 年代別に、Will、Can、Mustがどのように変化していくかを、私の個人的な経験もふまえてお話ししてきました。

 働く環境にもよりますが、35歳前後まで多くの人は会社からやるべきことが与えられます。やるべきことに対して、できることを増やしていけば評価されるし、成長も実感できます。そして周囲からの「ありがとう」という声に、「この仕事は楽しいな」と感じて、やりたいことが見えてきます。

 一方で、やりたいことが見えてこなかったり、40代以降のように、会社のやるべきことが減ってきたりすると、Will、Can、Mustがなかなか重なりません。その結果、不安になります。

 ここで、2つの提案をします。

1 あらためて「できること」を言語化しよう

 若いころは、「○○ができるようになった」のように、できることが増えていくことを容易に実感できます。また、若いころに必要なのは、「ITのスキル」や「生産管理のスキル」「会計のスキル」などのように、第三者にも分かりやすい表現しやすい「スキル」です。

 一方、経験を重ねてきて仕事がマネジメント……つまり、人を支援する領域に入ってくると、「スキル」が成長するような仕事が減り、「チームをまとめる」「折衝する」「成長を支援する」といった「人となり」が大切な仕事が増えてきます。これらの仕事は、「私はこれができます」「私はこれが得意です」といった言語表現が難しい……。

 その結果、「管理職をやっていました」「課長をやっていました」「部長をやっていました」のように、これまでの経験を「肩書で」説明してしまうケースがあります。しかし、肩書では「何ができるのか」が明確ではありません。

 だからといって、組織を円滑に回すためには、マネジメントだって大切な仕事ですし、信頼感という意味で「人となり」だって大切です。この「分かりにくいけれど、大切な業務」を言語化するためには、普段から「自分は何を大切にしていて」「どんな経験を積み(ときには挫折も味わい)」「どんな行動をしてきたのか」を認識し、第三者にも分かりやすく説明できるといいですよね。

 そこで、年代に関わらず「私は何が得意で、何ができるのか」(つまり、Can)を、日ごろから意識的に言語化しておくといいでしょう。そうすれば「自分は何者か」という自己認識にも役立ちますし、「何ができるか」を第三者にちゃんと説明できれば、自己アピールにもなります。社内外に関わらず、次のキャリアにつながる可能性が出てきます。

 ちなみに私は、良いことも悪いことも含めて「これまでやってきたこと」「気付きや発見」などを年齢別にまとめて、ポートフォリオを整理しています。経験を言語化することによって、「何ができるか」を明示できますし、ポートフォリオを整理するたびに「育っている感じ」を実感できます。また、以前仕事をご依頼いただいた方に、「経歴や考え方がまとまっていたので、どんな方なのかよく分かりました」と言われました。

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