ちょっと待った! 個人向けMicrosoft DefenderアプリはMicrosoft 365製品ファミリー向けではありません、Windows標準のDefenderも置き換えませんその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(213)

既にIT系メディアのニュースでご存じかもしれませんが、Microsoftは2022年6月中旬に、クロスデバイス対応の個人向けアプリおよびサービスである「Microsoft Defender for individuals(個人向けMicrosoft Defender)」の提供を開始しました。自分も利用できると誤ってインストール、さらには無駄に購入してしまわないように、想定される勘違いをリストアップしてみました。

» 2022年06月29日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

Windows視点で見れば、組み込みのMicrosoft Defenderに+αの監視サービス

 「Microsoft Defender for individuals(個人向けMicrosoft Defender)」の提供開始に合わせ、Microsoft Storeに「Microsoft Defender」というアプリが登場しました。また、Android、iOS、macOS向けの各オンラインストア(macOS向けはMicrosoftのダウンロードサイト)でも同名のアプリがダウンロード可能になっています(画面1画面2)。

画面1 画面1 2022年6月中旬にMicrosoft Storeに登場した「Microsoft Defender」。Windows 10やWindows 11には標準でMicrosoft Defenderが組み込まれているのに、これはいったい何者?
画面2 画面2 Android、iOS、macOSのオンラインストアにも「Microsoft Defender」アプリが登場(画面はGoogle Playストア)

 システム要件に書いてある通り、このアプリは「Microsoft 365 Personal」または「Microsoft 365 Family」サブスクリプション契約者がインストールして利用できるものです。指摘する必要があるかどうか分かりませんが、Microsoft 365 Familyは、“Microsoft 365の製品ファミリー”という意味ではなく、「Family」プランのことです。そして日本市場では「Family」プランは提供されていません。日本市場で個人向けに提供されているサブスクリプションは「Personal」プランのみです(※1)。

2022年7月14日追記

※1 Microsoftは2022年7月19日から、日本市場向けに「Microsoft 365 Family」の提供を開始します。


 企業向けのサブスクリプション(「Microsoft 365 E5」など)では、以前から企業で利用されるデバイスのセキュリティとその状態を一元的に管理できる機能「Microsoft Defender for Endpoint」が利用可能なプランがありますが(画面3)、簡単に言ってしまえば、Microsoft Defender for individualsはその個人向けサービスということができるでしょう。

画面3 画面3 企業向けのMicrosoft 365サブスクリプションで利用可能なMicrosoft Defender for Endpoint

 これまで企業向けのみで提供されていたWindows以外のデバイスに対応したエンドポイント保護ソフトウェア(提供機能はプラットフォームごとに異なる。例えば、iOS向けはウイルス対策機能が含まれない)が個人ユーザーでも利用可能になった点に興味を持たれる人は多いと思いますが、「Windows 10」や「Windows 11」に標準搭載されている「Microsoft Defenderウイルス対策(Microsoft Defender Antivirus)」を置き換えるものではありません。

 Windows 10やWindows 11に組み込まれているMicrosoft Defenderウイルス対策は、以前は単に「Windows Defender」と呼ばれていました。Windows 10 バージョン1703で「Windows Defenderセキュリティセンター」(現在の「Windowsセキュリティ」)が導入されたときに「Windows Defenderウイルス対策」として統合され、その後、Microsoftのセキュリティ製品が冠する「Microsoft Defender」ブランドの名前に変わりました。

 本連載の第147回で取り上げたように、名前がころころ変わってきたMicrosoft Defenderウイルス対策ですが、今でも単に「Windows Defender」や「Microsoft Defender」と呼んでいるユーザーも多いのではないでしょうか。

 なお、上記の「個人向けMicrosoft Defender」ページの「よく寄せられる質問への回答」では、Microsoft Defenderウイルス対策(およびWeb保護機能)を「Windows Security」と表現しています。Microsoftとしては、クロスプラットフォーム対応で管理/監視サービスを含めたもの(Microsoft Defender for Endpoint/for Personal/for IoT/for Cloudなど)をMicrosoft Defenderと呼びたいようですが(他にもMicrosoft Defenderを冠したセキュリティ製品やサービスはありますし、Microsoft Defender System GuardやMicrosoft Defender Application GuardといったWindowsのセキュリティ機能にも使用されています)、多くのユーザーは「Windows Security」のことを「Microsoft Defender」と認識していると思います。

 Windows 10やWindows 11に「Microsoft Defender」アプリをインストールしたとしても、組み込み済みのMicrosoft Defenderウイルス対策とWeb保護機能で引き続き保護され、その状態を新たに「Microsoft Defender」アプリの画面で同一ユーザーの「Microsoft Defender」アプリで保護された個人デバイス(スマートフォンなど)とともに一元的に把握できるようになるだけです。

 OS標準のMicrosoft Defenderウイルス対策が置き換わることはありません。これはWindowsに限っていえば、Microsoft Defender for Endpointでも同じです。一方で、Windows以外のデバイス向けの「Microsoft Defender」アプリはウイルス対策(iOS以外)やWeb保護といったセキュリティ機能を提供します。

想定される7つの勘違い

 今回の個人向けサービス提供の話や内容を知らず、このアプリをMicrosoft Storeやその他のデバイスのオンラインストアで見掛けた場合、以下のような勘違いが想定されます。いずれも正しくありません。

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