本連載で何度も取り上げてきましたが、2022年6月15日、MicrosoftはWindows 10(長期サポートチャネル《LTSC》は除く)におけるデスクトップアプリケーションとしての「Internet Explorer(IE)」のサポートを終了しました。ただし、“サポート終了=即起動できなくなる”というわけではありません。
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一般のニュースでも大々的に取り上げられましたが(特に2022年6月16日に)、2022年6月15日、Microsoftは1年前の2021年5月に予告した通り、「Windows 10」におけるデスクトップアプリケーションとしての「Internet Explorer(IE)」のサポートを終了しました。
ニュースの中には2022年6月16日と報道しているところもありましたが、もう何年も前からMicrosoftは自社の製品やサービスのサポート終了日で国や地域(時差)を考慮していません。Windows 10におけるデスクトップアプリケーションとしてのIEのサポート終了は、グローバルで「2022年6月15日」(その国や地域におけるサポート窓口の営業時間終了まで)のはずです。
日本では2022年6月15日の水曜日に毎月の「セキュリティ更新プログラム(Bリリース)」が提供されたので、この更新プログラムでIEが利用できなくなる(事前のアナウンスにあった通りに、IEを起動しようとしても、代わりに「Microsoft Edge」が起動するようになる)と思ったユーザーは多いのではないでしょうか。
しかし、6月のBリリースは2022年6月14日(米国時間)であり、これにIE無効化への対応が含まれてはいません。また、6月15日(日本では16日)にIE無効化のためのパッチが提供されたわけでもありません。
筆者の環境では、6月15日を過ぎても、Windows 10 バージョン21H2上でIEはまだ普通に起動でき、Webを閲覧できます(画面1)。もちろん、6月16日以降の利用はサポートされません。その利用で重大な問題が発生したとしても、有償/無償を問わず、サポートを受けることはできません。
以下の更新されたFAQに書いてある通り、2022年6月15日以降、デスクトップアプリケーションとしてのIEのユーザーをMicrosoft Edgeに段階的に移行し(段階的な移行は以前から行われています)、その後、Windowsの累積更新プログラムによって、デスクトップアプリケーションとしてのIEが無効化され、完全に使用できなくなります。つまり、完全に使用できなくなる措置はまだ講じられていないのです。
IE無効化を含む累積更新プログラムは、まずオプションの更新プログラムCリリースとして提供され、翌月のBリリースで正式に提供されることになります。6月のCリリースではIEの無効化が行われなかったため(前出の画面1を参照)、7月のBリリースでもIEが無効化されることはありません。IEの無効化は、7月のCリリースで行われるかもしれませんし(つまり8月のBリリースに一般提供)、数カ月先のCリリース/Bリリースで行われるかもしれません。
既にIEを起動しようとしても、Microsoft Edgeが起動してしまうという場合は、Microsoft EdgeやIEの起動時にポップアップされた案内(つまり段階的な移行措置)を自分で受け入れてしまった(画面2)、Microsoft Edgeの「詳細設定|既定のブラウザー」(edge://settings/defaultBrowser)でそのように動作するように自分または管理者が設定した、またはポリシー設定で同様の設定が強制されているのでしょう。
MicrosoftはActiveXコントロールに依存するWebサイトなど、どうしてもIEでアクセスする必要がある利用シナリオのために、Microsoft Edgeに「Internet Explorerモード(IEモード)」を搭載しました。IEモードはIEのサポート終了後も、当面の間、サポートされます(少なくとも現在サポートされているOSのライフサイクル期間中、IEモードのサポート終了の際には1年前に告知)。
タイミングが悪いことに、2022年6月のBリリース(5月のCリリース)の影響で、デスクトップアプリケーションとしてのIEの代替になるはずのIEモードに問題が発生し、広範囲のWindowsに影響しました。
この問題は、「Known Issue Rollback(KPR)」という方法で2022年6月末までにWindows Updateを通じて修正されましたが、Windows Updateにアクセスしない管理された環境(Windows Server Update Services《WSUS》で管理されているデバイスなど)では、管理者が「グループポリシー」(またはローカルコンピューターポリシー)を用いてKPRと同様の修正措置を配布する必要がありました(画面3)。
プレビューのための5月のCリリースで発見されなかった問題が6月のBリリースにそのまま残り、多くの企業が6月15日にIEモードへ切り替えたことで、問題が顕在化したように見えます。このようなこともあるので、多くのIEユーザーがIEモードを使用するようになり、他の問題が報告、修正されて、IEモードが安定するようになるまで、MicrosoftはIEの無効化措置をやりたくても、思うように進められないかもしれません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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