中立的なデジタルIDの普及が進まなければ、普遍的な所有権と説明責任は定着しない。本稿では、デジタルIDの中立性の可能性と問題、重要性について考える。
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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタル所有権および説明責任は、デジタルアイデンティティー(ID)と不可分だ。もし、中立的なデジタルIDの普及が進まないとデジタルエコシステムが断片化し、真の普遍的な所有権と説明責任が定着しない。
デジタルIDの中立性について、私は次のように考えている。
こうしたデジタルID中立性には、以下の可能性がある。
ID中立性を支える技術は存在しているか、あるいは登場しつつある(IDフェデレーション、分散型ID、アバター、ソフトウェアロボット、検証可能な変更要求、データポッド、データマーケットプレース、マルチパーティコンピュテーション、ブロックチェーン、オープンバンキングなど)。だが、デジタルID中立性および関連するビジネスモデルは、普遍的に受け入れられている実用的なモデルとして、正式に定義されているわけではない。
現在のデジタル所有権および説明責任は、極めてサイロ化されている。この根本的なギャップが、さまざまなデジタルエコシステムの成長を阻害している。コンシューマライゼーション(とWeb2.0)は、組織別の断片的なデジタルIDモデルを背景に台頭してきた。そのため、ユーザーが商品やサービスにアクセスするには、その提供元ごとに登録し、その利用規約に従わなければならない。現在のデジタルIDモデルは、次のようなさまざまな問題を引き起こしている。
デジタルID中立性(とデータレスビジネスサービス)は、Web2.0の基盤となってきたビジネスモデルを根本的に変える。データレスビジネスサービスは「Web3.0」や「分散型Web」とも呼ばれる次世代インターネットにおいて、コンポーザブル(柔軟な組み立てが可能な)アプリケーションの構成要素となる、インターネットグレードのビジネスツールだ。
このことは、Web3.0に関する従来の解説では、十分に認識されていない。「レガシーIDモデルが引き継がれる」という暗黙の前提があるが、これは間違っている。Web3.0をサポートする強固なID中立性モデルがなければ、次世代インターネットへの組織の取り組みは失敗してしまう可能性がある。エコシステムの持続可能な成長が望めないからだ。
この問題を提起することは、組織の上級幹部にとって必須だ。金融サービスや政府機関、保険、医療、小売りといった業種では特にそうだ。多くの大規模組織が、次のような成長戦略を模索しているからだ。
これらの成長戦略は、従来のバザールモデルの模倣で可能になる。このモデルは、「誰もが登録なしで、個人データの提出を義務付けられることなく、店に入って取引や交流をして店を出られる」というものだ。
同様に、デジタルID中立性は、自己完結型のIDをデータレスビジネスサービスに付加することを可能にする。IDに関連するデータは、自己完結型のデータポッドに保存される。データポッドはユーザーの管理下に置かれるか、エージェントに委ねられる。
Gartnerは、技術専門家のために、分散型IDと検証可能な変更要求の調査研究を行う一環として、デジタルID中立性の考え方をさらに探求していく。Gartnerの初期仮説は次の通りだ。
出典:Some Thought on Why Digital Identity Neutrality Matters(Gartner Blog Network)
VP Analyst
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