Windows 11時代のクライアントPC選び――エディションはどれを選べばよい? ProとEnterpriseの違いは?企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(3)

Windows 11には、企業向けの複数のエディションが存在します。Enterpriseはフル機能版と認識している方が多いようですが、Windows 10以降、新機能についてはProとEnterpriseでソフトウェア的な違いは実質的にありません。では、ProとEnterpriseは何が違うのでしょうか。

» 2022年12月26日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内

企業向けには3つのエディション、そのうち1つはサブスクリプション

 「Windows 11」には、複数のエディションが存在しますが、企業向けのエディションとしては以下の3つが基本になります。

  • Windows 11 Pro
  • Windows 11 Pro for Workstations
  • Windows 11 Enterprise

 Homeを含め、各エディションの機能比較は以下のMicrosoftのサイトで確認できます。ProとPro for Workstationsの違いは、後者がグラフィックスに集中した作業や膨大なデータの高速処理を対象に設計されており、最大4ソケットのCPUと最大6TB(テラバイト)までのメモリをサポートするという、サーバクラスのパフォーマンスと機能(「永続メモリ」や「SMB《Server Message Block》ダイレクト」「Resilient File System《ReFS》」のサポート)を提供する点の違いです。一般向けにはProかEnterpriseかという選択になるでしょう。

 上記Webサイトの比較表に、Enterpriseが入っていないことに気が付いたでしょうか。Enterpriseは正確にはエディションではなく、Windows 11 Pro向けのアップグレードを含む、デバイスまたはユーザー単位の以下のいずれかの「サブスクリプション」契約になります。

  • Windows 11 Enterprise(デバイス単位)
  • Windows 11 Enterprise E3(ユーザー単位)
  • Windows 11 Enterprise E5(ユーザー単位)

 デバイス単位の「Windows 11 Enterprise」は、Windows 11 Proへのアップグレードライセンスです。「Windows 11 Enterprise E3」は、アップグレードに加えて、クラウドベースのデバイスとアプリの展開、更新、管理機能、サーバレスの印刷管理機能である「ユニバーサルプリント」や、「Azure Virtual Desktop(AVD)」と「Windows 365 Cloud PC」のインスタンス使用権を提供します。「Windows 11 Enterprise E5」は、さらに「Microsoft Defender for Endpoint」が追加されます。

 Windows 11 Enterpriseサブスクリプションは、ボリュームライセンスとして購入する方法と、「Microsoft 365」の企業向けプランの一部として購入する方法があります。

 規模や用途によっては、Windows 11 Enterpriseを導入するよりも、従業員300人以下の中小企業向けの「Microsoft 365 Business」という選択肢もあります。Windows 11 Enterpriseへのアップグレードライセンスは含みませんが、Microsoft 365アプリ(Officeアプリ)やクラウドベースのコラボレーション環境、管理機能、セキュリティ機能を導入できます。

EnterpriseはWindowsの“フル機能版”ではない

 「Windows 7」や「Windows 8」「Windows 8.1」のころ、Enterpriseはソフトウェア的な機能差がある企業向けエディションというイメージを持っていた方が多いと思います。

 例えば、「AppLocker」(Windows 7 Enterprise〜)、「BranchCache」(Windows 7 Enterprise〜)、「DirectAccess」(Windows 7 Enterprise〜)、「Windows To Go」(Windows 8 Enterprise〜)など、明確にEnterpriseでなければ利用できないソフトウェア機能が存在しました。

 これらの機能は、「Windows 10」以降でもEnterpriseに対して引き続き提供されてきましたが(Windows To Goについては、Windows 10 バージョン1903で非推奨となり、バージョン2004で削除されました。Windows 11では利用できません)、Windows 10以降に新たに追加された機能についてはProとEnterpriseで違いはありません(画面1画面2)。

画面1 画面1 Windows 11 Proで利用可能なWindowsの機能
画面2 画面2 Windows 11 Enterpriseで利用可能なWindowsの機能。Proと違いはない。従来のEnterprise限定機能については、Windows To Goを除き引き続き利用可能

 例に挙げた従来のEnterprise限定機能を使用しないのであれば、Windows 11 Enterprise E3またはE5サブスクリプションを購入しながら、デバイスのWindows 11 Proはそのまま使用するということも可能です。

 例えば、Windows 11 ProデバイスはコミュニケーションやWeb利用に限定し、業務はAVDやWindows 365 Cloud PCのデスクトップにアクセスして、その仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)環境で行うといった利用方法などです。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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