WSLがMicrosoft Store経由でインストール可能になった。また、WSLコマンドを使ったインストールでも、デフォルトがMicrosoft Storeと同じバージョンに変更されている。従来のWSLと、Microsoft Store版の違いやメリットなどについて解説する。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
「WSL(Windows Subsystem for Linux)」をインストールするには、当初、[コントロールパネル]の[プログラムと機能]−[Windowsの機能の有効化または無効化]ダイアログを使って「Linux用Windowsサブシステム」を有効化する必要があった(WSL 1の場合)。
その後、WSLがバージョン2(WSL 2)となり、Windows 10では機能更新プログラムの適用によってWSLコマンドがOS標準搭載となり、コマンドプロンプトでWSLコマンドを使ってインストールが可能になっている(Windows 11では最初からWSLコマンドがOS標準搭載となっている)。
さらに2022年11月には、長らくプレビュー版としてMicrosoft Store経由で配布されてきたWSLのバージョンが、「1.0」となり、正式提供となっている(原稿執筆時点では、2022年12月1日付のバージョン「1.0.3」の提供されている)。
従来のWindows 10/11にWSLコマンドを使ってインストールしていたバージョン(Windowsコンポーネント版)とこのMicrosoft Store経由のバージョン(Microsoft Store版)で、WSLをインストールする方法ならびに両者の違いなどについて検証してみた。
WSLコマンドを使って、WSLをインストールするには、管理者権限でコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行する。これにより、WSL 2とLinuxディストリビューションのインストールが同時に行える。<Linuxディストリビューション名>に「Debian」とすれば、WSL 2とDebianが一緒にインストールできるわけだ。
wsl --install -d <Linuxディストリビューション名>
なお単に「wsl --install」とすると、デフォルトのLinuxディストリビューションであるUbuntuがインストールされる。Linuxディストリビューションをインストールしたくない場合は、「--no-distribution」オプションを使用する必要がある点に注意してほしい。
一度、Windows 10/11の再起動後が必要になる。再起動後、Linuxディストリビューションのターミナルウィンドウが自動で開き、Linuxディストリビューションのインストールが行われる。サインイン後、Linuxディストリビューションのインストールが開始されるまで、少し時間がかかるのでしばらく待つことに注意してほしい。インストールが始まらない場合は、手動で[スタート]メニューからLinuxディストリビューションの起動を行うと、インストールが開始される。
原稿執筆時点では、WSLコマンドを使ってWSL 2のインストールを行うと、後述のMicrosoft Store版がインストールされる。Microsoft Store版ではなく、Windowsコンポーネント版を使いたい場合は、以下のように「--inbox」オプションを付ける必要がある。
wsl --install --inbox -d <Linuxディストリビューション名>
前述の通り、WSLをMicrosoft Store経由でインストールすることも可能だ。「Microsoft Store」アプリを起動し、検索ボックスに「wsl」と入力して、[Enter]キーを押すと、「Windows Subsystem for Linux」が検索できる。[入手]ボタンまたは[インストール]ボタンをクリックすることで、インストールが行える。
Windows 10の場合、OSのバージョンによっては「Microsoft Store」アプリからのインストールに対応していないので注意してほしい。「Microsoft Store」アプリからインストールできない場合は、Windows Updateを実行し、最新のバージョンに更新すればよい。
Microsoft Store版の場合、同時にLinuxディストリビューションはインストールされないので、「Microsoft Store」アプリの「wsl」の検索結果をスクロールして、Ubuntuなどの好みのLinuxディストリビューションを探し、[入手]ボタンまたは[インストール]ボタンをクリックすることでインストールを行う。
なお、Linuxディストリビューションを起動した際、以下のようなエラー画面が表示されたら、[コントロールパネル]の[プログラムと機能]を開き、左ペインで[Windowsの機能の有効化または無効化]を選択、開いた[Windowsの機能]ダイアログで「仮想マシンプラットフォーム」にチェックを入れ、この機能を有効化すること([コントロールパネル]の開き方は、Tech TIPS「Windows 10で素早くコントロールパネルを開く方法」または「Windows 11では「コントロールパネル」がなくなったの? いいえ、あります」参照のこと)。再起動が要求されるので、再サインイン後、Linuxディストリビューションを起動して、インストールを完了する。
Microsoft Store版の場合、事前に「仮想マシンプラットフォーム」を有効にしておけば、WSLならびにLinuxディストリビューションのインストール後の再起動は不要だ。
Microsoft Store版のWSLでは、「Microsoft Store」アプリの自動更新機能によって更新が行われる他、[ライブラリ]画面を開いて、[更新プログラムを取得する]ボタンをクリックすることで手動による更新も可能となっている。これは、WSLコマンドを使って、Microsoft Store版をインストールした場合も同様だ(「--inbox」オプションを付けて、Windowsコンポーネント版をインストールしない限り、「Microsoft Store」アプリによる自動更新が有効になる)。
そのため、Windowsコンポーネント版が、Windows Updateで提供される累積更新プログラムで更新(基本1カ月に1回)に限定されるのに対し、Microsoft Store版では随時更新が可能であるというメリットがある。逆にWSLのバージョンをある程度固定したいような場合は、Windowsコンポーネント版の方がよい(累積更新プログラムを適用しないことで、WSLのバージョンを固定できる)。
またアンインストールも、Microsoft Store版なら[スタート]メニューで[Linux用Windowsサブシステム]を右クリックして、[アンインストール]を選択すればよい。Windowsコンポーネント版の場合は、[Windowsの設定]アプリ(Windows 10)/[設定]アプリ(Windows 11)の以下の画面を開く。
「Windows Subsystem for Linux Update」でアンインストールを実行すればよい(Microsoft Store版も[Windowsの設定]アプリ/[設定]アプリでアンインストール可能)。「Windows Subsystem for Linux WSLg」がある場合は、こちらもアンインストールする必要がある。
Microsoft Store版は、[Windowsの設定]アプリの[アプリと機能]画面(Windows 10)/[設定]アプリの[インストールされているアプリ]画面(Windows 11)を開き、「Linux用Windowsサブシステム」で[詳細オプション]を選択し、[Linux用Windowsサブシステム]画面を開くと、WSLの終了、修復、リセット、アンインストールが行える。WSLに不具合が生じた場合など、リセットを実行したり、修復したりできるのは便利だ。
Windowsコンポーネント版では、終了や修復、リセットは行えないので、この点はMicrosoft Store版の大きなメリットとなっている。
既にWSLを利用しており、Windowsコンポーネント版がインストール済みの場合、「Microsoft Store」アプリを起動し、Microsoft Store版のWSLをインストールすることで、Microsoft Store版に更新できる。
また、コマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行することでも、Microsoft Store版に更新可能だ。
wsl --update
自分のWindows 10/11にWindowsコンポーネント版とMicrosoft Store版のどちらのWSLがインストールされているか分からない場合、コマンドプロンプトで以下のコマンドを実行することで判別可能だ。
wsl -v
wsl --status
Microsoft Store版のWSLがインストールされている場合、コンポーネントの各種バージョンが表示される。一方、Windowsコンポーネント版の場合、「-v(--version)」オプションに対応していないため、WSLコマンドのヘルプが表示される。バージョン情報が表示されたらMicrosoft Store版がインストールされていると判断できる。
また、「--status」でWSLのデフォルトのディストリビューションやバージョンなどが確認できる。Windowsコンポーネント版とMicrosoft Store版でメッセージが異なるので、それでも判別可能だ。
その他にも、「Microsoft Store」アプリを起動し、WSL(Windows Subsystem for Linux)を検索して、[Windows Subsystem for Linux]画面に[開く]ボタンが表示されていた場合は、Microsoft Store版がインストール済みだ。[入手]ボタンまたは[インストール]ボタンが表示されていた場合は、WSL自体がインストールされていないか、Windowsコンポーネント版がインストールされている。
WSLコマンドでインストールした際、デフォルトではMicrosoft Store版がインストールされることからも予想できるように、将来的にはWindowsコンポーネント版は廃止され、Microsoft Store版に統一される方針のようだ。特別な理由がない限り、Windowsコンポーネント版ではなく、更新やアンインストールが容易なMicrosoft Store版をインストールしておいた方がいいだろう。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.