onsemiの新潟県小千谷市にある半導体工場を買収し、「JSファンダリ」が設立された。パワー半導体やアナログ半導体などのファウンドリ事業を始めるという。もともとこの工場は三洋電機の半導体工場として設立されたもの。なぜ、JSファンダリとして独立することになったのか、背景を探ってみた。
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既に2023年も3月になっているというのに、2022年末の企業買収の話が、いまさらのようにニュースに取り上げられていた。「JSファンダリ」という日本発の半導体ファウンドリ会社が新規設立されて、新潟県小千谷市にある「onsemi(オンセミ)」の半導体工場を買収、パワー半導体やアナログ半導体などのファウンドリ事業を始めるという。
北海道への進出が決まったらしい「Rapidus(ラピダス)」の5兆円のファウンドリ投資が話題をさらう裏側で、地味なファウンドリが始動していたのだ。ただ、どちらも「日本半導体を何とかせにゃならん」と考えた政策的な動きがチラチラと見える話である。
まずは半導体工場を売却した側の「onsemi」をざっと復習してみよう。onsemiは、昔は「ON Semiconductor」が正式名称で、通称が「onsemi」だったのだが、今では「onsemi」の方が正式名称になっている。米国アリゾナ州に本社を置く半導体会社である。
PCなどを追いかけていても、同社の名前をあまり聞かないのは「ねじくぎ」みたいな地味な半導体製品が主力製品であるからだ。「ねじくぎ」に華やかなスポットライトが当たることは少ないが、それらは何を作るのにも必要な部品でもある。地味な分野ながらonsemiは、業界大手といっていいだろう。最近では車載向けの半導体、パワー系のデバイスに力を入れてきたらしい。
アリゾナ州フェニックス近郊、スコッツデールのあたりには、古くからIntelやMotorolaといった半導体大手が進出していた。onsemiの前身は、Motorolaの半導体部門の一部であり、Motorolaの中でもディスクリートとか標準ロジックとか地味な半導体製品を引き受ける形で発足した会社だ。
蛇足だが、マイクロプロセッサなどMotorolaでも華やかな半導体製品の方は、Freescaleという名で独立した。しかし、Freescaleはとっくに欧州の「NXP」に買収されて、その名は消えている。
onsemiは、地味な分野の中で急速に台頭した。その過程で他社(これまた地味な会社が多いのだが)を買収して大きくなっている。有名どころでは、Fairchild Semiconductor International(フェアチャイルドセミコンダクター)を買収している。
Fairchildは、業界人ならみんな知っている、シリコンバレーの半導体企業の根っこにあった会社だ。そこから多くの企業がスピンアウトして、成功している。例えば、Intelもその1つだ。
定番のオペアンプ(アナログIC)や電源ICといったものの多くが、Fairchildのオリジナルである。その業界の老舗中の老舗であるFairchildをonsemiは買収している。onsemiには、古い定番商品のラインアップもあり、これはMotorola、これはFairchildという型番が現れるのはそういう理由による。
onsemiは、日本でも工場買収をしている。新潟県小千谷市にある三洋電機の半導体工場を買収したのもその一環だろう。三洋の小千谷の工場は、主として三洋電機の家電製品を支えるための各種半導体製品を製造していたのだと思う。外販もしていたのだろうがその比率は分からない。
1980年代くらいから日本の大手電機各社は自社内に半導体製造部門を持つことが多かった。小千谷の工場も、三洋製の冷蔵庫からラジカセみたいなものに至る各種製品に半導体を供給していたのだと思われる。
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