学び、感謝し、挑戦する リリィ・ティオングの世界Go AbekawaのGo Global!〜Lily_Tiong(後)(3/3 ページ)

» 2023年03月23日 05時00分 公開
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エンジニアとは自ら問題を見つけ、解決できる人のこと

阿部川 日本のエンジニアにメッセージをいただけますか。

リリィさん 日本のエンジニアの方々はとても優れた技能を持っていますし、仕事に対する姿勢も素晴らしいと思います。エンジニアとしてのスキルも高いし、知識も豊富です。一番感銘を受けたことは「知識を自分たちだけのものとせずに皆でシェアする」という姿勢です。それに日本には、仕事の機会や情報など、エンジニアが使える資産がとても豊富にあります。

 ですから、日本のエンジニアのみなさんが今よりももっと英語でコミュニケーションができれば、もっと多くの機会が生まれますし、外国に比べて競争力も強いと思います。

 それともう1つ。日本のエンジニアはもっとイノベーションやクリエーションを発揮してもいいと思います。何か全く新しいものにチャレンジするとか、エンジニアリングの領域で全く新しいツールを開発するとか。

 エンジニアというのは問題を解決する人だと思います。でも、問題が自分のところに来るのを待つのではなく、自ら問題を探して解決する、それこそが新しいことを創造できるエンジニアスピリットではないでしょうか。

阿部川 「言語」「イノベーション」「チャレンジ」。この3つは常に念頭に置かないといけないキーワードですね。仕事でのコミュニケーションは英語ですか?

リリィさん 日本語と英語の両方を使っています。チームメンバーは私の日本語がおぼつかないのを知っているので、大事な議論になると寛容にも英語でやってくれます(笑)。

阿部川 それでいいと思いますよ。大事なことは、上手に話すことではなく、十分にコミュニケーションできることですから。

編集鈴木 マレーシアは海外で働く人が多いという印象があるのですが、それは一般的な話なのでしょうか。あと、リリィさんのように日本や米国など、遠く離れた国で就職したい人は多いですか。

リリィさん そうですね。シンガポールで就職する人が多くいます。シンガポールはマレーシアの隣ですし、給料がマレーシアの3倍ももらえるので。日本で働く人はそれほど多くないと思います。

編集鈴木 リリィさんはなぜ、シンガポールではなく、日本を選んだのですか。

リリィさん 私はシンガポールには興味がないんです(笑)。シンガポールは文化的にもマレーシアと似ているので、それよりは文化が違う日本がいいと思いました。

 日本は食べ物がおいしいし、自然が豊富で人が優しい。私は写真が好きなので、公園など自然がきれいな場所に、写真を撮りに行きます。日本は本当にきれいだと思います。まだそんなにたくさんの場所に行っていないので、これからも時間があったら、写真を撮りに行きたいです。

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Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 結局人は学校で物事を学ぶのではなく、そこに至るまでの環境で培われた力や素地(そじ)で自ら学ぶ力を身に付け、さらに学びたいことを見つけ、それがまた新しい機会へと自らを導く。学校はほんの少しだけそれを後押しするにすぎない。PCの新聞広告を切り抜いていた少女が、異国にきてAIのプロフェッショナルを目指す。賢い母の手で育てられたおかげだ。

 言語、イノベーション、チャレンジ。何度も使われているキーワードだが、2つの戦争(コロナ禍と、ロシアのウクライナ侵攻)のはざまで生きざるを得ない私たちは、それでもこのキーワードを忘れてはいけない。私たちはみな、それぞれの人生のエンジニアで、エンジニアとは、自ら問題を解決する人のことなのだから。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

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