Red Hatが「RHEL」関連のソースコード公開に関する変更を発表したことを受け、同社に怒りや批判が多数寄せられた。これに対し、同社幹部は公式ブログで反論を展開した。
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Red Hatは2023年6月26日(米国時間)に公式ブログで「Red Hat’s commitment to open source: A response to the git.centos.org changes」(Red Hatのオープンソースへのコミットメント: git.centos.orgに関する変更への反応」と題する記事を公開した。
Red Hatが6月21日に、「『CentOS Stream』が今後、同社の企業向けLinuxディストリビューション『Red Hat Enterprise Linux』(RHEL)関連のソースコードを公開する唯一のリポジトリになる」と発表したことを受け、同社に対して不当な怒りや批判が寄せられているとして、反論を展開したものだ。
ブログ記事を執筆したのは、Red Hatのコアプラットフォームエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるマイク・マクグラス氏。Red Hat入社前は「Fedora Project」でボランティアをしていた人物だ。
Fedora Projectは、RHELにおける将来のメジャーリリースのベースとなるプロジェクト。CentOS Streamは、Fedora ProjectとRHELの中間に位置付けられているディストリビューションであり、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)やIHV(独立系ハードウェアベンダー)などのエコシステム開発者向けのコミュニティープロジェクトとされている。
記事によると、RHELのソースコード公開に関する変更を受けて、「Red Hatがクローズドソース企業になった」「RHELのコードに顧客しかアクセスできないようにした」「オープンソースライセンスのGPL(General Public License)に違反している」といった声がRed Hatに多数寄せられたという。
マクグラス氏は、こうした怒りや非難は、OSS(オープンソースソフトウェア)とGPLに関する誤解に基づいていると指摘した。「現在、Red Hatに対して言われていることとは裏腹に、われわれは顧客以外の人々も、われわれのハードワークに容易にアクセスできるようにしている」と述べ、次のように説明している。
マクグラス氏は、ダウンストリームソースに関するRed Hatの最近の決定に反発しているのは、「RHELに費やされた時間、労力、リソースに対価を払いたくない人々や、自分たちの利益のために、RHELを再パッケージ化したい人々だと思う」と述べている。
オープンソース活動に携わるコントリビューターには報酬を支払う必要があり、「こうした人々が作り出したコードを、付加価値を付けずにそのまま再パッケージ化して販売するだけでは、OSSの生産は持続不可能になる」と、マクグラス氏は主張する。
マクグラス氏は、健全なオープンソースエコシステムの中で、競争と革新を行っている企業として、Red Hatの他、SUSE、Canonical、Amazon Web Services、Microsoftを挙げ、「これらの企業は全て、関連するブランディングとエコシステム開発努力を伴うLinuxディストリビューションを開発している。これらのディストリビューションはLinuxのソースコードを利用するとともに、これに貢献している」と説明している。
これに対し、あまり付加価値を付けずにオープンソースコードを再パッケージ化するリビルダーもいると、マクグラス氏は指摘する。
「Red Hatはかつて、CentOSのようなリビルダーによる作業に価値を見いだし、SRPMをgit.centos.orgにプッシュして、簡単にリビルドできるようにした。だが最近、こうしたダウンストリームのリビルダーを抱えることに価値はないと判断した」(マクグラス氏)
こうした無料のリビルドは、RHELのエキスパートの輩出や、売り上げ拡大につながるとの見方もあるが、実際にはそうではないという。
「コードに付加価値を付けたり、変更を加えたりすることなく、コードを単にリビルドすることは、全てのオープンソース企業とオープンソースにとって本当の脅威であり、オープンソースを、ホビイストやハッカーだけの活動に逆戻りさせてしまう可能性がある」(マクグラス氏)
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