なぜ、ハイブリッドワークはうまくいかないのか……? 本稿では、うまくいかない理由と、その改善ポイントを紹介する。
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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Insights」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
2022年12月。企業は“オフィス回帰”を目指していたものの、2回目の大きな挫折を余儀なくされていた(新型コロナウイルス感染症のオミクロン変異株の流行による)。そのとき、私はマズローの「欲求5段階説」を、未来の働き方に当てはめて考えてみようと思い付いた。
マズローによると、人間の欲求には5つの段階がある。最も低次の欲求は「生理的欲求」で、より創造的、知的な「自己実現欲求」が最も高次の欲求だ。さらに重要なのは、人間は、低次の欲求を満たす確固たる基盤がなければ、帰属、承認、自己実現という高次の欲求がわかないということだ。
私が欲求5段階説を踏まえて未来の働き方を考察し、図解した記事を初めて発表してから1年半余りたつ。だが、依然として、経営リーダーは「従業員をオフィスに復帰させるにはどうすればよいのか」と頭を悩ませている。
私は毎日、顧客とやりとりする中で、従業員をオフィスに呼び戻す方法を知りたがっている経営リーダーたちと話している。こうしたリーダーからは「尻をたたくのではなく、動機付けをしようとしているがうまくいかない」といった声が聞かれる。最近メディアに掲載された記事のタイトルを幾つか抜き出してみると、暗中模索していることが浮き彫りになる。
--出社の義務付け、ピックルボール、ビール。何がハイブリッドワークを定着させるのか(NY Times)
--ハイブリッドワークが新常態――半分しか埋まっていないビルも常態化(Barrons)
--CEOは、オフィス回帰を巡る議論は決着がついたと考えた。それは間違っていたようだ(NBC)
--「オフィス回帰は自らの首を絞める」と従業員は批判(Business Insider)
従業員の帰属欲求や承認欲求、自己実現欲求が満たされていれば、企業が従業員から受ける恩恵がはるかに大きくなることは容易に分かる。だが、ほとんどの企業は、生理的欲求と安全欲求という基本的な欲求を満たせられずに足踏みしている。従業員の5段階の欲求は、以下のように要約できる。
現在、ハイブリッドワーク戦略は通常、リーダーがシステムで「どの程度の予測可能性を必要とするか、あるいは望むか」や、「どの程度の柔軟性を許容するか」を考慮して計画される。皆さんがどうかは分からないが、私の知っているほとんどの人はあまり柔軟ではない。
そして、「より柔軟になるためには、多くの労力を費やしてライフスタイルの選択を変え、新しいスタイルに慣れるまで苦労しなければならない」ことを理解すると、柔軟性を高めることの優先順位は低くなってしまう。
画一的なハイブリッドワーク戦略への傾倒や、さらに悪いことには「週の大半を完全出社とする」という思考停止のようなやり方がいまだに見られるのは、そこに理由がある。ハイブリッドワークを計画するにあたっては、以下の点に注意する必要がある。
Gartnerの「2022 Digital Worker Experience Survey」(2022年デジタルワーカーエクスペリエンス調査)では、従業員の92%がハイブリッドワークを望んでいることが分かった。ただし、こうした従業員のうち「出社日を会社や上司に決めてほしい」と思っている人は14%にすぎない。さらに印象的なことに、他の従業員(86%)のうち「自分で最低限の義務を選択肢から選択すること」「完全な自主性に任されること」「直属のチームと一緒に出社日を計画すること」をそれぞれ望む人の割合が、ほぼ同じであることも明らかになった。
額面通りに受け止めれば、これは素晴らしいニュースではない。この3つの方針のいずれかに沿って、全ての従業員を対象としたハイブリッドワーク戦略を策定すると、50%以上の従業員の意向に合わないということだからだ。だが、欲求階層説を踏まえてこのニュースを見ると、なかなかうまくいかないハイブリッドワークをリーダーが成功させるのに役立つヒントも含まれている。これらのヒントを生かして以下のような方策を講じられる。
出典:Why We Are Stuck in a Hybrid Vortex and How To Break the Cycle(Gartner Blog Network)
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