Appleシリコン搭載Mac向けLinuxの開発に取り組む「Asahi Linux」プロジェクトは、Asahi Linuxの新たなフラグシップディストリビューションが「Fedora Asahi Remix」になると発表した。2023年8月末までの正式リリースを目指し、パッケージの統合や機能追加を進めている。
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「Asahi Linux」プロジェクトのリーダーであるヘクター・マーティン氏(通称:marcan)は2023年8月2日(米国時間)に公式ブログで、Asahi Linuxの新しいフラグシップディストリビューションが「Fedora Asahi Remix」になると発表した。
同プロジェクトは、Fedora Asahi Remixを2023年8月末までに正式にリリースすることを目指し、パッケージ統合などの作業を進めている。正式リリースまでに多くの新機能を追加するとしている。
Asahi Linuxは、ArmベースのAppleシリコンを搭載するMacコンピュータにLinuxを移植することを目的としたオープンソースのプロジェクトだ。ユーザーが任意のLinuxディストリビューションを選択でき、それが自身のAppleシリコン搭載マシンでうまく動作することを確信できるようにすることを目標に掲げている。だが、Appleシリコンは全く文書化されていないプラットフォームであるため、それを実現するには、膨大な量のリバースエンジニアリング、開発、統合作業が必要になる。
そのプロセスを開始するには、これらの作業がどのようなものになるかを把握するために、試験的に独自のディストリビューションを作成してみる必要があった。
そこでAsahi Linuxプロジェクトは、Armコンピュータ向けLinuxディストリビューションの「Arch Linux ARM」をベースに、Asahi Linux Arch Linux ARM remixを開発し、2022年春にα版をリリースした。ただし、これは完全にダウンストリームなプロジェクトであり、アップストリームのArch Linux ARMやArch Linuxとの有意義な関わりはなく、継続的な発展性に欠けていた。
一方で、Fedoraプロジェクトから提案を受け、Asahi Linuxの取り組みをFedoraに統合するFedora Asahiプロジェクトが、2021年後半に立ち上がった。Asahi Linux Arch Linux ARM remixのリリースと並行して、2022年に作業を開始した。1年間でカスタムパッケージ、カーネルとMesaのフォーク、特別なイメージパッケージの要件など、AppleシリコンサポートがFedoraに完全に統合され、現在は仕上げ段階に入っている。
Fedora Asahiの取り組みは、Asahi Linuxの全てのカーネルやMesaの作業と同様に、アップストリームファーストだと、マーティン氏は強調している。Fedora Asahiのカスタムツール(m1n1低レベルブートローダや、asahi-scriptsツールなど)は、既にアップストリームのFedoraリポジトリにあり、全てのFedoraユーザーが直接利用できる。一方、ハードウェアイネーブルメントパッケージのフォークは、Fedora Asahi SIGによって管理されているCOPR(Cool Other Package Repo)に保管され、Fedoraインフラからビルドされ、提供されている。
Fedora Asahiプロジェクトを通じてディストリビューション統合のエキスパートと協力し、こうしてディストリビューションインフラを使用することで、Asahi Linuxプロジェクトは、ハードウェアのリバースエンジニアリングとカスタムドライバおよびソフトウェアの開発という得意分野に集中し続けることができると、マーティン氏は述べている。
アップストリームプロジェクトと直接協力することで、コアディストリビューションとのより緊密な統合だけでなく、他のパッケージの問題を迅速かつスムーズに修正することも可能になるためだ。これまでニッチなプラットフォームだったArm64デスクトップLinuxでは、テストが手薄になり、バグが発生しやすかったことため、特に重要だと、マーティン氏は述べている。
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