バグがあっても心配いらない、それは単なるコードですGo AbekawaのGo Global!〜Tyler McMullen(後)(3/3 ページ)

» 2023年10月04日 05時00分 公開
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恐れないで、それはただのプログラム

阿部川 最後に、若いエンジニアにアドバイスやメッセージをお願いできますか。

タイラーさん アドバイスしたいことは幾つもありますが、なんと言っても一番は「コンピュータについての、どんなことに対しても恐れないでほしい」ということです。

 これはよくする話ですが、例えば誰かがプログラミングのバグにぶつかったとしましょう。すると「これはきっと不可能だ」とか「私には複雑過ぎる」とかいう人もいるのですが、それは違います。これは単なるコードです。

 そんなとき私は「このバグは面白いね、Linuxカーネルを使ったらどうなるかやってみようよ」などと言います。そしてLinuxカーネルのソースコードを開けて、何か当てはまるのがないかソースコードをさらってみます。そうすることで脳が活性化されて、いろいろなことをやってみたり考えたりできるようになります。

 私は自分のキャリアの中で「新しいことを恐れない」ということをいつも自分に言い聞かせてきました。新しいことだから学べない、などということは決してないのです。学びさえすればできるようになるのです。

阿部川 よく日本のエンジニアは「あまりに細部にこだわり過ぎる」「失敗を恐れ過ぎる」などといわれています。それが必要なこともありますが、行き過ぎると良くない。恐れず、学ぶことが大切ですね。

編集中村 新しい技術が出てくると、覚えないといけないことが多すぎて、手を出しづらいと私は思っているのですが、タイラーさんのように常に興味を持っていれば、新しいことを学んでいくのも大変ではないとも思えます。どうすればタイラーさんのように新しいものに対して好奇心を持ち続けられるのですか。

タイラーさん 良い質問ですね、その質問、好きだなあ。(ちょっと考えて)何かを作り出すこと「クリエイティビティが作り出すある種の価値に対して、モチベーションがあるから」でしょうかね。

 例えばプログラミングをするとき「ビジネスとしてやらなければならないから」というよりは「何かを作り出すためにやる」。そう思えば楽しめます。そうしたモチベーションは時間がたてばたつほど、大きくなっていきます。というのは、学べば学ぶほど、もっと新しいものが作れるようになるからです(英語で“Creativity Drive”と表現した)。何かを作り出すために、能力をより高める。それがあればモチベーションを高く保ち続けることができます。

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Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 Creativity Drive。インタビュー内では、何かを作り出していると思うとモチベーションが上がる=ドライブがかかる、と言った意味合いで使っていた。仕事をするのではなく、新しいことを、何かを作り出している。確かにそう思えば、仕事は無味乾燥ではなくなるし、新しいことも学びたくなる。

 プログラマーは論理的な思考と、匠(たくみ)の技の両方が必要だ。「(動かないのは論外だが)動くだけではなく、美しいプログラムというものがある」と、あるプログラマーは言っていた。別の言葉で言えば「右脳と左脳、両方が交差するときに真のクリエイティビティが生まれる。テクノロジーとアート」と、Steve Jobsは表現した。

 インタビュー中、教育とは何か、とずっと考えさせられた。学校になどいかなくとも人は学べるし、まして現代は学ぶ手段にはこと欠かない。ただ学ぶための時間(それはなんとぜいたくなことだろう)、そして想像力(どうすれはそれは生まれるのだろうか)、確かにこの2つは、神様が人間にだけに与えた概念と能力なのかもしれない

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

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