日本人は「なぜこのコードを書いているのか」をおろそかにしがちGo AbekawaのGo Global!〜Paul McMahon(後)(3/3 ページ)

» 2023年10月17日 05時00分 公開
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インターナショナルな企業になるために何が重要か

編集中村 先ほどは日本のデベロッパーに向けてメッセージをいただきましたが、外国のデベロッパーに「日本で働くとこんな良いことがある」とか「日本で働くときはここに注意してね」といったアドバイスはありますか。

ポールさん その質問に答える前に申し上げないといけないことがあります。1つは、私がTokyoDevでお付き合いしている企業は比較的インターンナショナルな企業が多いので、日本の一般的な企業とはある意味異なります。もう1つは、例えば英語圏のソフトウェアデベロッパーと、ベトナムや中国などから日本に来て、SIer(システムインテグレーター)などで働くデベロッパーとでは状況が異なります。この2つの理由から、誰にでも当てはまる適切なアドバイスはできないことを了承してください。

 日本で働くこと、ここではインターナショナルを意識している日本企業で働くということですが、それについては一般企業で働くこととそれほどの違いはないと思います。あえて言うなら日本語が分かるようになった方が日本での生活は充実します。

編集鈴木 企業によっては雇用の条件に「日本語必須」とするところもありますよね。

ポールさん 確かにそうした企業もあるとは思いますが、決して一般化はできないと思います。あまりインターナショナルではない企業が今後のことを考えて外国籍のデベロッパーを雇い、仕事と日本語を同時にトレーニングして、日本人的なマインドセットを理解してもらうようにしているケースもありますから。一般的には、多くの企業がインターナショナルなデベロッパーを雇いたいと考えていると私は思います。というのも、インターナショナルな視点を持って仕事をしてきた人は世界の競争の中で勝ち残ってきたわけですから、高いスキルを持っていることが多いからです。

 ただ、社員のほぼ全てが日本人であるような組織構成の企業は、やはり苦労しているようです。経営層に近いところにバイリンガルなメンバーを入れ、企業の国際化を進めるといった取り組みが大切ですが、その前段階ではどうしても外国籍の人で日本語が話せるメンバーの力が必要です。しかし、日本語が流ちょうに話せて、しかもエンジニアである、といった人はそうそういないので人材探しは大変なようです。

Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 IT業界には早口の人が多いことは何度も書いた。まさにその中心、ソフトウェアデベロッパーの業界にあっても、ポールさんはゆっくりと話す。恐らく頭の中は恐ろしい速さで回っているのだろう。それを私が理解できるように、かんで含むように話し、こちらの質問にも注意深く対応してくれた。

 AI(人工知能)が広く行き渡っていく世界で、知識とは、教育とは、大学とは、一体何だろうか。これらがよって立ってきた基盤が今、問い直されている。しかしカナダはすごい。高校から自分の好きなことが学べ、大学になっても専攻を変えることさえできる、しかも国費で。このような国は変化への対応の速さが信条とは思うが、その根本にあるのは、危機感への本気度や、覚悟ではないだろうか。韓国しかり、シンガポールしかり。さてわが国やいかに。

 ポールさんの仕事は、広くいえば日本の国際化だ。それはもちろん言葉だけの問題ではなく、グローバルなコミュニケーションの概念や、互いのやり方の違いを越えることだ。実はITの分野はどの分野よりも“超えなければいけないハードル”は低い。すでに世界はITでできていると、私は思っているからだ。それを誇りとすれば、国際化などたやすい。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

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