日本人は「なぜこのコードを書いているのか」をおろそかにしがちGo AbekawaのGo Global!〜Paul McMahon(後)(1/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もTokyoDevを運営する、Paul McMahon(ポール・マクマホン)さんにお話を伺う。多くの企業と国際的なソフトウェアデベロッパーをつないできた同氏が語る「日本企業が海外のソフトウェアデベロッパーを欲しがる理由」とは。

» 2023年10月17日 05時00分 公開

 国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。前回に引き続き、今回もTokyoDevのPaul McMahon(ポール・マクマホン)さんにお話を伺った。個人の活動として始めたTokyoDevの取り組みは、日本で働きたい海外のソフトウェアデベロッパー(開発者)にとって欠かせないものへと成長していく。

 聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。

TokyoDevは「エンジニアを助けたい」という思いで始めた

阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) TokyoDevを立ち上げたのは2011年ですか。

Paul McMahon(ポール・マクマホン、以下ポールさん) そこはちょっと複雑です。当初はビジネスとして始めたわけではありません。2008年にドメイン登録して、最初の記事を書いたのは2010年です。そして、現在のように日本でのデベロッパーの求人情報「Finding a developer Job in Japan」を扱うようになったのは2011年ごろだと思います。そこからビジネスとしての成長が始まりました。

画像 現在のポールさん

 たぶん、当時、このような情報を英語で発信していたのは私だけだったようで、多くの方がサイトを訪れるようになり、多くの質問をいただき、もっと多くの記事を上げてくれと頼まれました。メーリングリストも活用し、多くの人がサイトを訪れられるようにもしました。そのような活動を1〜2年していくと「このサイトからの求人情報で就職が決まった」や「日本でのリクルーターの報酬は何円らしい」といった多くの業界情報が集まるようになりました。

 そんなとき、ある会社のCTO(最高技術責任者)が私のところに来て、「君は多くのデベロッパーを知っているようだね。お金を払うので良いデベロッパーを見つけてくれないか」と言いました。これは確実にビジネスになるなと感じました。

 そこでメーリングリストに価格を付け、それを用いて企業が誰かを雇用したときに報酬をもらうという仕組みを考えました。このビジネスが始まったのは2013年くらいのことです。最初の数年間はとても小さな売り上げでしたが、2018年ごろになって、ようやくある程度の売り上げが確保できるようになりました。

阿部川 とても自然な成長の仕方ですね。

ポールさん そうですね。TokyoDevは大変オーガニックに(有機的に)自然に成長しているサイトだと思います。最初の私のゴールは単純に「エンジニアを助けたい」というものでしたし。もちろんお金を稼ぐことも大事ですが、この活動はどちらかというと副業的なもので、ビジネス的にアプローチするものではないと思っています。

 実のところ、2020年まではTokyoDevはそれほど利益の出るビジネスではありませんでした。しっかりとお金をもらえるようになったのは2018年の夏くらいだったと思います。2022までは、私一人で、個人事業主として運営していました。

阿部川 楽しいことをしたい、エンジニアを助けたいといった思いでTokyoDevの活動をされているとのことですが、今後ビジネスを拡張する考えはありますか。

ポールさん 基本的な考え方は変わってはいません。ご承知のように、機会を捉えて仕事をすれば、仕事の総量が増えて忙しくなり、そうなればより多くのプレッシャーも生まれます。とはいえ、良い機会はソフトウェアエンジニアの能力を高めることができます。それは潜在的に多くの方々を助けることにつながるでしょう。大事なのは、ただ単に顧客をどんどん増やしていって、売上などの数字を達成するのではなくて、人々の能力を常にアップさせていたきいということです。


編集中村 編集 中村

 大事なことですよね。顔が売れるほど引き合いが増えていわゆるビジネスチャンスも増えるわけですが、だからといってあまり利益側に偏ってしまうと本来の意味が薄れてしまう。一方で、収益がなければ取り組みそのものが継続できなくなる。バランスが大事なのは百も承知なのですが、実践するとなると簡単ではありません。ポールさんの場合は「二足のわらじを履く」ことでそれを実現しているのですね。


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