これは便利! Microsoftが提供するテスト環境「Test Base」で最新Windows 11へのアップグレードの影響を事前に検証可能Microsoft Azure最新機能フォローアップ(207)

MicrosoftがAzureで提供しているクラウドベースの検証サービス「Microsoft Test Base for Microsoft 365」が、最新のWindows 11 バージョン23H2(本稿執筆時点ではInsiderプレビュービルド)でのテストに対応しました。

» 2023年10月27日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Microsoft Azure最新機能フォローアップ」のインデックス

Microsoft Azure最新機能フォローアップ

クラウド上のテスト環境「Microsoft Test Base for Microsoft 365」とは

 「Microsoft Test Base for Microsoft 365」(以下、Test Base for M365)は、2021年11月から一般提供されている「Microsoft Azure」のサービスの一つです。このサービスは、Microsoftによって完全に管理されるクラウド上のテスト環境で、「Windows 10」や「Windows 11」、Windows Serverのセキュリティ更新プログラム、Windows 11の機能更新プログラム、「Microsoft 365」アプリのセキュリティ更新プログラム、Windows 10からWindows 11へのインプレースアップグレードについて、ビジネスクリティカルなアプリケーションへの互換性やパフォーマンスの影響を自動的にテストし、その結果と分析情報をレポートしてくれるものです。

 企業や組織は、Test Base for M365を利用することで、ハードウェアやネットワークを含む複雑なテスト環境を準備、構築、維持するのに必要な手間や時間なしで、どこからでもAzureのセキュアな仮想マシンを使用して互換性の影響を調査できます。

 アプリケーションのバイナリやパッケージ(.exe、.msi、.msix、.zip、wingetパッケージ、Microsoft Intuneの.intunewimファイル)、テスト用のスクリプト(.ps1)をTest Base for M365にアップロードし、テストシナリオを構成することで、プラットフォームの依存関係の違い(機能更新プログラムによるOSのアップグレード)や、Windowsの次のセキュリティ更新プログラムやMicrosoft 365アプリの次のバージョンをインストールした場合に、その後もアプリケーションが期待通りに動作するかどうかを検証できます(画面1画面2)。

画面1 画面1 AzureポータルのTest Base for M365の管理ブレード。テスト用パッケージを作成してテストを自動実行させ、その結果を参照できる
画面2 画面2 テスト対象のアプリケーションは、バイナリやパッケージをアップロードする他、「WinGet」を使用して定義済みのパッケージから選択することもできる

 テスト環境の構築とテスト実行は自動化されており、Microsoftによって完全に管理され(スクリプトの修正や追加は可能)、テスト完了までには最大24時間かかることがあります。

 テストはスクリプトの実行ベースで完全に自動的に行われ、テスト用の仮想マシンのコンソールに直接アクセスして手動でテストを実施するという使い方はできません。テスト環境への直接的なアクセス手段は用意されていないのです。テストがエラーで失敗した、または正常に完了した後は、テスト実行中のコンソール画面を動画で確認することはできます(画面3)。

画面3 画面3 テストはMicrosoftが管理する環境で完全に自動的に行われる。テスト結果のレポートに加えて、エラーで失敗したテストも含め、テスト中のコンソール画面を動画(.avi)で確認できる

 なお、テストは英語環境で実施されます。日本語(ja-jp)のOS環境でのアプリケーションのテストは、日本語版OSを含むVHD形式のカスタムイメージを作成し、アップロードすることで対応できるでしょう。

 Test Base for M365は、テスト実行時間1時間当たり8ドルで利用できます。最初の6カ月は800ドル相当のクレジットが提供され、100時間相当のテストを無料で実行できます。テストの開始から完了までは24時間程度かかることもありますが、その全てが課金対象になるわけではありません。

 例えば、Test Baseサンプルアプリケーションのテスト(Windows 10からWindows 11へのアップグレード)の場合、テスト完了を確認できるまで4時間以上かかりましたが、実際の課金対象は2時間程度でした。使用状況は、無料期間を含め「課金ハブ|使用状況コンソール(プレビュー)」で確認できます。

継続的に機能強化されるTest Base for M365、Windows 11 バージョン23H2にも対応

 Test Base for M365が一般提供されて以降、短いサイクルで機能強化が続いています。2023年7月以降の新機能については、以下の公式ブログを参照してください。

 2023年9月の機能強化では、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムをインストールした際のアプリケーションへの影響をテストできるようになり(画面4画面5)、カスタムイメージのアップロードにも対応しました。

画面4 画面4 InsiderチャネルのWindows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムは、テストの種類「すぐに使用可能」テスト(Out of Boxテスト)および「機能」テスト(Featureテスト)で選択できる
画面5 画面5 Windows 10 バージョン22H2やWindows 11 バージョン22H2(OSベースライン)からWindows 11 バージョン23H2に更新された場合のテスト結果やパフォーマンスを比較

 また、プレビュー機能として「Windows on Arm」上でのテストにも対応しました(早期アダプターとして申し込みが必要)。Windows on Armを使用したテストは、クライアントデバイスの新しいプラットフォーム(アーキテクチャ)への移行の可能性を、少ないコストで調査するのによい機会を与えてくれるでしょう。

 本稿執筆時点ではWindows 11 バージョン23H2(Windows 11 2023 Update)はまだリリースされていません(2023年第4四半期、つまり2023年内にはリリース予定)。2023年9月に利用可能になったのは、Windows 11 Insiderチャネルのプレビュービルドを使用したテストです。

最新情報(2024年3月7日追記)

 Microsoftは2024年3月5日(米国時間)、Test Base for Microsoft 365のサービスの使用を“非推奨”とし、2024年5月31日にサービスを廃止することを発表しました。サービス廃止後は、利用できなくなります。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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