「Windows 10」で使えていた裏ワザが「Windows 11」では使えなくなった、という経験はないでしょうか。例えば、「Windows Update」の裏ワザとして、Windows 10では「UsoClient StartScan」を利用できましたが、Windows 11では期待通りに機能しないように見えます。
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Windows 10では当初、Windows Updateの「更新プログラムのチェック」をクリックすると“先進ユーザー(Advanced User)”と見なされ、その更新プログラムが必須(推奨)なのかどうか、オプションなのかどうかに関係なく、利用可能であればダウンロードとインストールを始めてしまうという仕様でした。
そのため、「オプションの更新プログラム」のインストールをスキップするには、「更新プログラムのチェック」ボタンには触らず、6時間ごとに繰り返される「自動更新」の確認サイクルに任せる必要がありました。
現在、Windows 10/11では「更新プログラムのチェック」をクリックすると、オプションの更新プログラムを検出しますが、インストールするかしないかはユーザーが選択できるようになっています(ただし、Windows 10の「.NET Frameworkのオプションの更新プログラム」は自動的にダウンロードとインストールが始まってしまいます)。
以前の先進ユーザー向けの機能は、2023年5月の「オプションの更新プログラム」でWindows 11に追加された「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」トグルスイッチが担うようになりました。このトグルスイッチは2023年12月に「Copilot in Windowsプレビュー」をWindows 10にロールアウトするために、「Windows 10 バージョン22H2」にも追加されました。
自動更新の確認サイクルを手動ですぐに開始する“裏ワザ”として、Windows 10では以下のコマンドラインを実行する方法があります(画面1)。
usoclient startscan
「usoclient.exe」は、「Update Orchestrator Service」(日本語版のサービス表示名は「Orchestrator Serviceの更新」で誤訳)とやりとりするクライアントコンポーネントです。筆者は心の中で「ウソクライアント」と親しみを持って呼び、上記の方法を活用してきました。Windows 10の初期のバージョンで記事にしたこともあります。
Windows 11で同じコマンドラインを実行しても、更新プログラムの確認は期待通りに始まりません(画面2)。
Windows Sysinternalsの「Strings(strings.exe)」ユーティリティーで「usoclient.exe」からテキスト文字列を抽出してみると、Windows 10には確認できる「StartScan」が、Windows 11(バージョン22H2およびバージョン23H2)では確認できませんでした(画面3)。
しかし、「更新プログラムのチェック」をクリックする動作をコマンドラインから実行できる「UsoClient StartInteractiveScan」は、「usoclient.exe」内に文字列として見つかりませんでしたが、コマンドライン操作はWindows 10と同じように機能します(画面4)。ちなみに、文字列「StartScan」は「usodocked.dll」や「usosvcimpl.dll」に見つかりましたが、文字列「StartInteractiveScan」は見つかりませんでした。
「usoclient.exe」の「StartScan」パラメーターが削除されていないことは、Windows 11の「タスクスケジューラ」(Taskschd.msc)でタスクパス「\Microsoft\Windows\UpdateOrchestrator」にある「Schedule Scan」タスクを開始するプログラムを確認すると分かります。そこにはWindows 10と同じ「UsoClient StartScan」のコマンドラインが設定されているからです(画面5)。
コマンドラインから「UsoClient StartScan」を実行しても最終チェック日時に変化はありませんが、その直後にWindows Updateのログ(「Get-WindowsUpdateLog」コマンドレットで生成)を確認すると、何かしら反応していることは分かります(画面6)。
おそらく、前回実行してから一定の時間が経過していなければ、何もしないように動作が変更されたのだと思います。そのため、実は、タイミングによっては「UsoClient StartScan」が機能することもあります。しかし、短期間に繰り返し実行しても何も動作してくれません。
Windows 10では、「更新プログラムにチェック」のクリックに相当する裏ワザとして「UsoClient StartIntaractiveScan」以外に、ショートカット「ms-settings:windowsupdate-action」(start ms-settings:windowsupdate-action)も利用できます。
この「ms-settings:URIスキーム」ショートカットについては、以下の公式ドキュメントでも説明されています。ただし、これらのコマンドライン操作を実行したときに、更新プログラムのインストールが(自動更新などで)終わっていて、再起動待ちになっていた場合、「再起動」をクリックしたのと同じことになる(すぐに再起動が始まってしまう)ので注意してください。
Windows 11で「ms-settings:windowsupdate-action」を使用しても、何も変化はありません。こちらは本当に使えなくなったようです。「設定」アプリが開かれている場合は、現在表示されているページのまま変化はありませんし、「設定」アプリがまだ開かれていない場合は、既定のページが開かれます。既定のページとは、Windows 11のHomeおよびProエディションは「ホーム」、Enterpriseエディションは「システム」です。この動作は、URIスキームを認識できなかったことを示しています(画面7)。なぜなら、「ms-settings:<でたらめな文字列>」を実行したときと同じ動作だからです。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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