立ち上がれ民よ! 他人やシステム頼みのネットツアーをやめて、ネットサーフィンを取り戻すのだ!
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
年が明けたと思ったらもう2月! 大丈夫です、2024年はまだ9割残っています。まだ大丈夫だ、たぶん、きっと……(言い聞かせ)。
ところで皆さん、ブックマークは使っていますか? 筆者はここ10年ぐらい、仕事以外ではブックマークをほぼ使っておらず、そのせいで心がすさんできていたことに気が付きました。
そして突如思ったのです。これからはブックマークの時代だ、ブックマーク復権が来るぞ、と。
念のため、ブックマークを説明します。「しおり」の意味で、Web上では、お気に入りのページやWebサイトを保存しておき、後から同じページにアクセスしやすくするWebブラウザの機能を指します。
1990年代から2000年前半のインターネット黎明(れいめい)期……ロボット検索やSNSが普及する前、ブックマークはネットサーフィンに欠かせないものでした。気に入ったWebサイトをブックマークして繰り返し訪れるという形でネットサーフィンを楽しむ人は多かったと思います。そのころのネットサーフィンには楽しかった思い出しかありませんし、ブックマークの「おもしろ」フォルダや「ゲーム」フォルダは宝箱でした。
2010年以降ぐらいからでしょうか。気付いたら筆者は、ブックマークからネットを巡回することをやめていました。必要なWebサイトは検索エンジンから都度探すことが増え、面白い記事やサービスの情報は、Twitter(現在のX)をはじめとしたSNSから得ることが増えたからです。ネットサーフィンのメイン端末がPCからスマートフォンに移るにつれ、ブックマークからWebサイトを巡回するのが面倒になったこともあり、ブックマーク機能の利用がめっきり減りました。
その結果、どうなったか。最初の数年は問題なかったように思います。SNSを通じ、ブックマークを巡回するより簡単に、純度の高い面白情報を得ることができたから、それでいいと思っていました。
ですが、気付いたらSNSが……というかTwitter(X)が、荒野になっていたのです。炎上ネタや批判、批評ばかりが目立ち、見ているだけで疲れてしまう場になっていた。面白記事や役立つ内容が流れてくることもあるのですが、味付け過剰で過激なものが増え、ずっと見ていると胸焼けしてしまうようになりました。
別のSNSはどうだろうとFacebookに目を向けても、今やなりすまし広告だらけ。Instagramは悪くないけどキラキラし過ぎ。Googleニュースの記事推薦サービス「Discover」も見ているけれど、心が重くなるようなニュースが多い。ネットのどこを見ても、何か疲れる!
そう感じ、仕事を終えたらできるだけスマートフォンを見ない、“ネット断ち”に近い生活をしていたこともあります。ただ、もともとインターネットやWebの文章が好きでWeb業界に入った身、面白いものや好きなものを見逃してしまっているのではないか、という思いもありました。
そんなモヤモヤを抱えていた2023年の年末、老舗の面白サイト「デイリーポータルZ」Webマスターの林雄司さんにインタビューする機会がありました。いろいろな話を聞いたのですが、印象に残ったのが「これからはリンク集ですよ」という林さんの言葉です。
昨今は、オウンドメディアを含めてメディアが増え続け、面白い記事はあふれ返っている。でも、せっかくの面白記事が、埋もれてしまって見つからない。だから今こそ、かつてYahoo! JAPANにいた「サーファー」(検索ディレクトリに登録すべき有用なWebサイトを探す人)のように、人力で面白ページのリンク集を作るべきではないか、と林さんはおっしゃっていました(「デイリーポータルZ」では2024年に実際、リンク集企画を始めています)。
なるほど、と思いました。SNSやGoogleのAI(人工知能)が「お薦め」してくる記事や内容が合わないなら、初心に立ち返り、自分が好きなテイストのメディアや記事を、自分で見つけて「リンク集」を作るべきではないか。今こそ、ブックマークを復活させるべきではないか! と。
そこで使い始めたのがWebブラウザのブックマーク……ではなく、Xです。SNSですみません。ただ、Xがアルゴリズムで整理したタイムラインをそのまま見るのではなく、「推し」のリストを作って好きな人やメディアを登録し、そこを見るよう習慣を付けました。Webブラウザブックマークでもいいんですが、スマートフォンからだとちょっと使いづらいので、この形に落ち着きました。
SNSやGoogle Discoverのお薦めに依存していたころは、「ネットコンテンツはつまらなくなった」などと主語をでっかくして怒りがちでしたが、リスト中心に見るようになってからは、どのリンクを押してもホッコリな、楽しいインターネットが戻ってきました。変わったのはコンテンツそのものというより、アルゴリズムにお薦めされて視界に入る内容だったんですね。
90年代と比べれば、コンテンツ自体は爆増していますから、面白いと思える内容やメディアもむしろ増えているはず。それを見つけることさえできれば、インターネットは「かつての面白かったころ」の輝きを取り戻してくれるはずです。
他人やシステムのお薦めに頼り切った結果、好きなもの、面白いものを見逃した揚げ句、「この世にすてきなものはなくなった」とふてくされるのはなかなかダサい。2024年は、自分から面白さを探すこと、意識的に面白くすることを意識していきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.