インダストリークラウドプラットフォーム(ICP)は、企業のミッションクリティカルな優先事項に合わせて、業界固有の成果を実現する。本稿では、ICPの仕組みと新たな価値について紹介する。
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インダストリークラウドプラットフォーム(ICP)は、企業のミッションクリティカルな優先事項に合わせて、業界固有の成果を実現する。ITリーダーはこのプラットフォームのコンポーザビリティ(※)を利用することで、業界で加速するディスラプション(創造的破壊)や業界固有の要件に対処するために必要な適応力を獲得できる。
ICPは従来のクラウドサービスと、カスタマイズされた業界固有の機能を組み合わせることで、取り組むのが難しい業界の問題、課題に対処し、価値実現までの時間を短縮する。これはコンポーザビリティを生かして、差別化を実現するイノベーションをより利用しやすくすることで可能になる。
企業はICPを利用して、経済的および地政学的に長引く不確実性により良く対処しようとしている。ICPの明確に定義された業界別の価値提案に基づいて、企業は具体的なビジネス成果を達成できる。Gartnerの調査によると、企業の39%近くがICPを導入し始めており、さらに14%が試験導入している。さらに約17%が、2026年までに導入することを検討している。
Gartnerは2027年までに、企業の70%以上は、ビジネスイニシアチブを加速させるためにICPを使用するようになると予測している。この割合は2023年には15%未満だった。
ICPは、注目すべき新たなトレンドだ。適応性が高く、今日的な意義のある業界別ソリューションを提供し、企業に価値をもたらすからだ。ICPは、クラウドインフラやプラットフォーム技術の初期ユーザーにとどまらず、ビジネスユーザーにも効果的にアピールすることで、クラウドの導入を大きく促進する。ICPは基盤となるSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)と、一連の革新的な技術やアプローチを組み合わせる。
また、企業はICPを利用して、自社のプロセスやアプリケーションを、市場や顧客の変化に迅速に適応させることができる。さらに、ICPのモジュール型のコンポーザブルなアプローチにより、パートナーはマーケットプレースやアプリストアを通じて、付加価値機能を提供しやすくなる。
こうして、クラウドプロバイダーに続いて多くの独立系ソフトウェアベンダー(ISV)やシステムインテグレーターが加わり、インダストリークラウドエコシステムがより豊かになることが、ICPが価値を付加する重要な方法だ。
包括的でありながらモジュール化されたこうしたアプローチにより、ある業界から別の業界に、より簡単かつ迅速に技術やビジネスのイノベーションをもたらすことも可能になる。
政府クラウドのようなコミュニティークラウドでは、クラウドのコピーや一部を分離したバージョンを作成し、個別にメンテナンスする必要がある。インダストリークラウドはこうしたコミュニティークラウドとは異なり、基盤となるプラットフォーム機能のフルセットを業界のユーザーに提供する。
ICPは、パッケージ化されたビジネス機能、業界を意識したデータファブリック、コンポーザブルツールといった革新的な技術やアプローチを用いて、従来のクラウドの枠を超えた付加価値を生み出す。そうした中でクラウドプラットフォームをビジネスプラットフォームに変えると同時に、技術イノベーションツールをビジネスイノベーションツールに拡張する。
インダストリークラウドがその可能性を最大限に発揮するには、いわば「エコシステムクラウド」に進化する必要がある。企業は、共有されるビジネスプロセス(調達、流通、決済処理など)に参加することで、これらのエコシステムを利用できる。このビジネスプロセスには、研究開発やイノベーションも含まれるかもしれない。だが、こうした価値を捉えるには、企業はICPを利用するに当たって、IT部門とビジネス部門双方の幅広いステークホルダーを巻き込む必要がある。
クラウドとエッジへの投資を担当するITリーダーは、ICP機能の導入により、差別化に向けたトランスフォーメーションの取り組みに合わせて既存のプロセスを最適化し、再構築する戦略を策定しなければならない。ICPを利用する目的は、単に既存の機能を置き換えるのではなく、大きな価値を付加する新しい機能で自社の既存ポートフォリオを拡充することにある。
出典:The enterprise benefits of industry cloud platforms(Gartner)
※この記事は、2023年12月に執筆されたものです。
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