生成AIが促進する職場の民主化Gartner Insights Pickup(341)

生成AIの急速な普及を受けて、企業でナレッジとスキルの民主化が大きく進みそうだ。ITリーダーは、生成AIの民主化効果を活用し、成長機会を創出しなければならない。同時に、これに伴う重大なリスクを軽減する必要がある。

» 2024年03月08日 05時00分 公開
[Arun Chandrasekaran, Gartner]

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 生成AIの急速な普及を受けて、企業でナレッジとスキルの民主化が大きく進みそうだ。従業員は、潜在能力を発揮するためのナレッジとスキルを手に入れるだろう。ITリーダーは、こうした生成AIの民主化効果を活用し、生産性を高め、コストを削減し、成長機会を創出しなければならない。同時に、この民主化に伴う重大なリスクを軽減する必要がある。

 生成AI自体も、クラウドコンピューティングとオープンソースの統合によって民主化されつつあり、世界の従業員が生成AIモデルにアクセスしやすくなっている。こうした生成AIの民主化は既存プロセスの改善につながり、これによって仕事のやり方が一新される。生成AIにより、幅広い役割や業務にわたって従業員が、情報やスキルに平等にアクセスできるようになるからだ。これは、この10年で最大級のディスラプション(創造的破壊)をもたらすトレンドだ。

生成AI導入で組織の生産性が大幅に向上

 生成AIは、ビジネスの運営方法に革命的な変化をもたらし、生産性や効率、イノベーションの新時代を開く。定型業務の自動化から、複雑な問題の創造的な解決策の立案まで、幅広い用途に使われるようになるだろう。

 企業は大規模言語モデル(LLM)により、従業員が幅広い分野にわたって、AIと会話をしながら豊富なナレッジを活用する仕組みを構築できる。従業員はこの仕組みを通じて、社内外の膨大なナレッジの恩恵を受けられる。

 生成AIモデル、ツール、アプリケーションは、パブリッククラウドのAPIとして利用できるようになり、開発者はアプリケーションを構築しやすくなった。独自モデルを構築、運用せずに済むからだ。実際、Gartnerは、2026年までに企業の80%以上は生成AIのAPIやモデルを使用して、生成AIに対応したアプリケーションを本番環境に展開するようになると予測している(2023年時点の5%未満から増加)。

 また、企業はオープンソースモデルを採用することで、生成AIをより柔軟に導入したり、セキュリティとプライバシーをより良くコントロールしたり、ユースケースに合わせてモデルをカスタマイズする機会の拡大を享受したりできる。

生成AIの民主化が組織の業務を改善

 生成AIの民主化は、効率の改善やビジネスの生産性向上などの大きな機会を開く。生成AIアプリケーションは、電子メールの作成やコーディング、大規模文書の要約といった手作業や反復作業を迅速化する。価値の高い業務も、より効率的に遂行できるようにする。パーソナライズされたAIアシスタントにより、従業員は新しい業務により容易に習熟できる。

 さらに、生成AIは情報へのアクセスを民主化する。つまり、情報を見つけやすくし、文脈に沿った検索を可能にし、会話形式で情報を入手できるようにする。生成AIの民主化は、さまざまなモダリティ(データ種別)で新しいユニークな出力を生成できる。マシンの創造性はまだ初期段階にあるが、新商品開発のスピードアップや差別化のために、さまざまな方法で活用できる。

ITリーダーが軽減すべき生成AIの民主化リスク

 ITリーダーは、生成AIのユースケースに優先順位を付けたマトリックスを作成し、これらのユースケースについて試験的導入、導入展開、本番移行のスケジュールの概要を示さなければならない。従業員のトレーニングとウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に健康で、充実している状態)を優先する変更管理アプローチを採用する必要もある。従業員が定型業務を自動化しながら、生成AIツールを安全に、自信を持って使用できるようにするためだ。

 さらに、ITリーダーが責任ある方法で民主化を実現するには、ガバナンスを導入する必要がある。責任ある方法とは、コンテンツの正確性、信ぴょう性、ガードレールを確保し、生成AIアプリケーションが不測の事態を招かないようにするとともに、経営陣に常に最新情報を提供することを指す。

 生成AIアプリケーションの計り知れない可能性と爆発的な普及に伴い、生成AIはITリーダーの最優先事項の一つとして急浮上している。生成AIに対する企業の熱い期待は、生成AIが組織の効率を大幅に高めるとともに、大きな収益成長力をもたらす、他に類を見ない技術トレンドであることから来ている。

出典:Generative AI will drive a democratized workplace(Gartner)

※この記事は、2024年1月に執筆されたものです。

筆者 Arun Chandrasekaran

Distinguished VP Analyst


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