TechTargetは、「2024年のテクノロジー予測」に関する記事を公開した。「2024年はブロックチェーン、AI、反競争的活動、新しいプログラミング言語Mojoが見出しを飾ることになる」としている。
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TechTargetは2024年1月30日(米国時間)、「2024年のテクノロジー予測」に関する記事を公開した。
2023年のテクノロジー業界は全体的に順調だったが、興味深い出来事も幾つかあった。OpenAIのサム・アルトマン氏がCEOを解任され、その後復帰。“暗号通貨の神童”のサム・バンクマン=フリード氏は、現在は破産している暗号通貨取引所FTXを巡る怪しげな事件で有罪判決を受けた。テクノロジー業界全体の先導者として信頼性の高いMicrosoftの株価が2023年初頭の約240ドルから2023年末には約376ドルへと高騰している。
2024年はどんな年になるのか。本稿では2024年にテクノロジー業界で起きると思われる5つの予測を紹介する。
AIは、開発者の介入なしに、リポジトリに保存されているコードを修正し、リファクタリングできるようになる
プログラミング言語「Mojo」は、特にAIや機械学習のアプリケーション開発において、「Python」の代替手段としてが開発者の注目を集める
さまざまな業界で、暗号通貨以外のブロックチェーンの使い道が見つかる
開発者の多くは、ブラウザベースの統合開発環境(IDE)で作業することになる
ビッグテックの一部が解体される
2024年には、バグを発見し、コードをテストし、新しいテクノロジーに適応するためのAIツールがさらに改善されることが予想される。
OpenAIの「ChatGPT」、Googleの「Gemini」、GitHubの「Copilot」などのAIツールは、プログラマーの日々の仕事を楽にした。例えば、ChatGPTとGeminiは、開発者が単にやり方を忘れてしまった特定のプログラミングタスクの実行方法を開発者に示すことができる。
ただ、こうしたAIツールはまだ発展途上だ。例えば、筆者が試してみたところ、本稿執筆時点では、GitHubリポジトリ内のコードのURLをChatGPTに提供するだけでは単純なバグさえ発見できない。コードを複雑なユースケースに対してテストすることも難しい。AIはドメイン固有の知識に依存し過ぎていると感じる。
また、ChatGPTとGeminiはいずれも最新のテクノロジーに追い付くのに苦労している。AIは古いバージョンのテクノロジーの知識(基になるデータが入力された時点の知識)しかないため、答えを間違うことがある。開発者は、AIによる提案や推奨事項をチェックして、それらが正確であることを確認しなければならない。
とはいえ、AIツールは驚くべき速さで賢くなっている。今日のAIと明日のAIは違うものだ。日常業務にAIを利用する開発者が増え、その間違いを訂正するにつれ、AIが理解する範囲は広がる。開発者が入力する情報とAIテクノロジーのたゆまぬ進化の相乗効果によってAIの能力は高まっていくだろう。
その結果として少なくとも2024年末までには、ChatGPT、Gemini、CopilotなどのAIツールによってGitHubリポジトリ内のコードを自動的に修正、最適化も可能になると著者は予測する。複雑なユースケースに対して信頼性の高いテストを実行できる賢明さを備えるAIが開発される可能性も十分ある。
2024年は、Pythonと「Java」の長所を兼ね備えるプログラム言語“Mojo”の利用が広がる。
機械学習においては、運用上の要件を満たす上でも、ビジネスでの競争上の優位を確保するためにも「速度」が最も重要だ。一刻を争う質問に対する答えをAIが導き出すまで、誰も待っていたくはない。
機械学習の速度を上げる鍵となるのが“低レベルの言語”だ。コンパイルされたコードはインタープリタを介したコードよりも高速であるため、「C」「C++」「Go」「Rust」などの言語が機械学習アプリケーションの処理に広く使われている。
一方で、インタープリタ方式の言語も使い道はある。処理速度は遅いものの、特にデータサイエンスやデータ分析が関係するユースケースでは有用だからだ。恐らく、そうしたユースケースで最も使用されているのはPythonだ。
幸い、コンパイル言語の世界にPythonコードを持ち込むテクノロジーがある。それが“Mojo”だ。Mojoを提供するModularには、GoogleでTensorFlowインフラのシニアディレクターを務めていたクリス・ラトナー氏がいる。
「TypeScript」が「JavaScript」の上位互換であるように、MojoはPythonの上位互換を目指して開発されている。MojoはPython風の構文をサポートし、Pythonコードを簡単に作成して実行できる。その他、厳密な型指定、メモリ管理、特定のハードウェアに合わせてコンパイルを構成する機能などが追加されている。「Pythonより6万4000倍も高速なコードを作成できる」と主張する開発者もいる。
これほどのメリットを無視するわけにはいかない。ニーズもあるため、コミュニティーは成長を続けている。2024年には、このスキルセットに対するビジネス需要はさらに高まる。それに対応するため、多くの開発者がMojoスキルを磨くことになるだろう。
2024年には多くの業界で、ブロックチェーンへの理解が進むだろう。ブロックチェーンは通貨やNFTなどの投機以外にも多くの用途で用いることができる。
ブロックチェーンは暗号通貨「ビットコイン」(Bitcoin)を駆動させるエンジンとしてスタートした。その後、「イーサリアム」(Ethereum)、「アバランチ」(Avalanche)、「ソラナ」(Solana)などの基盤となっている。初期の暗号通貨は、一般的な購入手段としては利用しにくかった。ビットコインを使ってコーヒーやペイストリーを購入するのは難しかった。
ただし、暗号通貨取引所に持ち込めば、暗号通貨を米ドルなどの法定通貨と交換できる。暗号通貨の価値はさまざまな法定通貨に対して増減するため、短期投資の手段として暗号通貨を購入する人が増えた。その結果、ブロックチェーンと仮想通貨投機は同義語のようになってしまった。
とはいえ、ブロックチェーンの目的は暗号通貨を印刷することだけではない。印刷機の目的が紙幣を印刷することだけではないのと同じだ。印刷機にはそれ以上の用途があるのと同様に、ブロックチェーンにもさまざま用途がある。
ブロックチェーンは分散型のコンセンサス(同意)駆動技術であり、データは変更不可の状態で多くのPC間に同じ方法で格納される。一度、ブロックチェーンに格納されたデータは変更できない。また、ブロックチェーンに格納されたデータの“信頼できる唯一の情報源”となるPCは存在しない。ブロックチェーンネットワークを構成する1台のPCがダウンしても、他の多くのPCに同じデータが格納されているため、サービスは引き続き提供される。ブロックチェーンネットワークは、目的に合わせてパブリックにもプライベートにもできる。また、どちらであっても、ブロックチェーンネットワークは容易に監査可能だ。
これらは、さまざま点で魅力的な特徴だ。
特にブロックチェーンの“ピアツーピアで不変”という性質は、行政機関の運用や、真正性の公的検証を必要とする用途など、オープン性が重視されるさまざまな状況に適している。その例を以下に幾つか示す。
ブロックチェーンは、もはや仮想通貨投機のためだけのテクノロジーではなくなり、急速に主流のテクノロジーの一部になりつつある。
2024年、開発者はスタンドアロンのデスクトップ型IDEから一歩を踏み出し、ブラウザベースのIDEを利用するようになるだろう。
この動きは既に始まっている。開発者は、Microsoftの「Visual Studio Code for the Web」を使ってブラウザ内で「Visual Studio Code」のコピーを実行できる。オープンソースの「Remix」も、プログラミング言語「Solidity」を使ってイーサリアム仮想マシン(EVMEthereum Virtual Machine)用のスマートコントラクトの作成に使用するブラウザベースのIDEだ。また、ブラウザベースの「Solana Playground IDE」を使えば、ソラナブロックチェーン用のスマートコントラクトを作成できる。Java、「PHP」、C、C++、「Go」「Bash」をはじめとするさまざまな言語でコーディングできる「Online-IDE」というツールもある。
こうしたブラウザベースのIDEは強力だ。その多くはGitHubの「GitHub」に格納されたコードを扱うことができる。Remixなど一部のIDEには、OpenAIの「ChatGPT」と統合してデバッグ時にAIベースの支援を提供するものもある。
ブラウザベースのIDEの能力が強化されるにつれ、利用する開発者も増えている。ブラウザベースのIDEは開発者の生産性をいち早く高める。開発者が1日かけて自身のPCにIDEをインストールして構成する必要はなく、ブラウザでIDEを開くだけで、GitHubやAtlassianの「Bitbucket」といったオンラインリポジトリのコードにアクセスできる。開発者が使用しているPCがダウンしても、ブラウザをインストールした新しいPCを用意するだけで開発を再開できる。多くの場合、キーボードとマウスを接続したGoogleの「Chromebook」やタブレットがあれば、プログラミングが可能だ。
こうした利便性は無視できない。2024年は、オンラインIDEが飛躍する年になるだろう。
2024年は政府規制当局がビッグテックに注目する可能性が高く、解体も起こり得ると業界ウォッチャーはみている。
政府規制当局がこのような姿勢を見せるのは歴史的にも珍しい。1877年にBell Telephoneとして誕生し、1世紀以上にわたって米国電話サービスに独占的権利を行使してきたAT&Tは、1984年に米国司法省によってベビーベル(Baby Bell)と呼ばれる複数の地域電話会社に分割された。
それからほぼ20年後の2000年、米国政府はMicrosoftにOS部門と業務アプリケーション部門を2社に分離するよう命じた。当時は、家庭でも職場でも、圧倒的多数のPCが同社のOS「Windows」を搭載していた。分社を命じた判決は後に覆されることになるが、同社は引き続き政府の監視下にあり、疑わしい取引慣行がないかと政府は目を光らせている。
2023年、独占禁止法違反は企業と政府の両方にとって差し迫った懸念事項だった。
ゲーム企業Epic Gamesは、Googleの「Google Play」ストアから同社のゲーム販売が削除されたことに対してGoogleを提訴した。Googleがゲーム配信についてほぼ独占的に有する力がゲーム配信の請求金額を不公平にしている、という主張だ。陪審員はEpic Gamesに有利な判決を下したが、賠償額はまだ決まっていない。なお、2020年、Epic GamesはAppleに対しても同様の訴訟を起こしたが、勝訴には至らなかった。Appleは同社の「App Store」で販売されるアプリに対してサードパーティーに直接対価を支払うことを許可することに最近同意しているが、それには多額の手数料を課すことが予定されている。
米国政府と同国17の州はAmazonを相手取って独占訴訟を起こしている。Amazonが自社のプラットフォームとサービスを宣伝し、Amazonのプラットフォームで商品やサービスを販売するサードパーティーに不利益を与えている、という主張だ。オンラインショッピングの約40%がAmazonのプラットフォームで実施されていることをさまざまなレポートが示している。その比率は、完全な独占状態だとは見なされないかもしれないが、さまざまな政府機関の注目を集めるには十分な比率だ。
こうした訴訟の結果はまちまちだが、ビッグテックが市場でかなりのシェアを握っているのは明らかで、その活動は注意深く監察されている。Amazonの配送サービスが成長していることから、Amazonが自社プラットフォームで販売していない商品やサービスの配送に着手し、一般配送事業に乗り出した場合、UPSやフェデックス(FedEx)などの運送業を担う企業がAmazonに対して訴訟を起こすと考えられる。また、Meta PlatformsやX(旧Twitter)がT-Mobileなどの電気通信会社の買収に乗り出せば、米連邦取引委員会(FTC)が訴訟を起こす可能性もある。
まとめると、ビッグテックが他社を排除し、市場を独占しようとする傾向が高まっており、2024年にその勢いが収まるとは思えない。さまざまな政府当局や当事者企業がこうした独占を阻止しようと試み、小さな独立企業に分割される企業が出る可能性もあるだろう。
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