80:20の法則/パレートの法則(Pareto Principle)とは?AI・機械学習の用語辞典

成果の大半(80%)は、一部の要素(20%)から生まれる──この構図を示す経験則が「80:20の法則(パレートの法則)」。経済やビジネスの世界で広く知られ、しばしば引用される。この法則はAI・機械学習の分野でも比喩的に用いられることがあるが、そこに理論的な根拠があるわけではない点には留意しておきたい。

» 2025年04月09日 05時00分 公開
[一色政彦デジタルアドバンテージ]
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連載目次

用語解説

 80:20の法則(別名でパレートの法則Pareto principle)とは、「全体の結果のうち大部分(=80%)は、限られた少数の要因(=20%)によってもたらされる」という経験則である。この法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Pareto)氏が1896年に発表した著書『経済学講義(Cours d'economie politique)』の中で、イタリアの土地の約80%が人口の20%によって所有されていることを示したことに由来する。

 その後、この法則は経済や経営、マーケティング、品質管理など、さまざまな分野で応用されるようになった。例えば「売上の80%20%の商品で生み出される」といったように、全体の成果の大部分が一部の要因によってもたらされる構図を説明する際に用いられる(図1)。また、この法則はAI・機械学習の文脈でも比喩的に参照されることがあり、その具体例について以下で取り上げる。

図1 80:20の法則(パレートの法則)のイメージ 図1 80:20の法則(パレートの法則)のイメージ

 機械学習の分野では、80:20という数値の形だけを模倣しているようにも見える使い方がある。その一例が、「訓練データ80%、テストデータ20%に分割する」という方法である。だが、これはパレートの法則に基づいた理論的な根拠があるわけではなく、あくまで実務上よく使われている便宜的な目安に過ぎない。データの量や性質、モデルの目的などによっては、9:17:3、あるいは交差検証(クロスバリデーション)など、別の分割方法の方が適している場合もあるので、目安の利用には注意してほしい。

 また、機械学習プロジェクト全体の作業量においても、80:20という数値が一種の目安として言及されることがある。具体的には、モデル構築の工程はごく一部に過ぎず(約20%)、その前段階にあるデータの準備やクリーニング/前処理、特徴量の設計などに、大部分の時間や労力が費やされる(約80%)、という現実を示すときだ。ただし、パレートの法則は「20%が重要」とされることが多いが、この目安ではむしろ80%の作業の方にこそ重きが置かれている点には注意したい。

 さらに、「80:20の法則」的な構図は、機械学習モデルの特徴量が持つ「予測精度に対する寄与度」(permutation importance)においても見られることがある。全ての特徴量が均等に貢献するとは限らず、寄与度を表す「SHAP値」などの解析により、一部の特徴量が予測に大きく影響していることが示されるケースもある。これは、「限られた要素が成果に大きく関わる」という点で、80:20の法則的な視点と重なる部分がある。

 80:20という数字はキャッチーで汎用(はんよう)性が高いため、さまざまな場面に機械的に当てはめられることも多い。しかし、実際のデータや状況においては、必ずしもこの比率が最適とは限らないことに留意すべきだ。AIや機械学習の分野でも、意味のあるデータ分割や特徴量選定にするためには、データの性質や目的に応じて個別に判断すべきである。パレートの法則を使うときは、比率そのものよりも、その背後にある「偏り」や「集中」の構造に注目することが大切だ。

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