IT担当者不在の物流企業が、4年かけてたどり着いた「自走するDX」「Excelでよくね?」をどう乗り越えたか(1/2 ページ)

IT担当者不在の物流企業が実践した「現場発」のデジタル化。その本質的なプロセスとは? その先を目指す「物流業界のDX」とは?

» 2026年05月18日 05時00分 公開

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 物流業界は、私たちの生活に不可欠な社会インフラだ。ネット通販で注文した商品が翌日には手元に届くという「当たり前」の背後には、休むことなく荷物を運び続ける、物流業界で働く方々の強い使命感がある。

 一般市民の立場から物流業界を眺めると、トラックの運転や倉庫内での積み降ろしなど「現場仕事」のイメージが強い。物流業界におけるデジタル化の実態はどうなのだろうか?

 会社や社会のさまざまな課題に、デジタル化やDXなど「ITのチカラ」で取り組んでいる人や企業の「ストーリー」をお届けする連載「ITのチカラ」。今回は、社会を支える物流業界のデジタル化に迫る。

 IT担当者不在の物流企業が実践した「現場発」のプロセスには、単なる「アナログの置き換え」ではない「デジタル化の本質」があった。

会長の一言から始まった「IT担当者不在のDX」

 第一製品流通は、新潟県新潟市に本社を置く、物流・運送業を主力とする企業だ。地元新潟の大手印刷会社である「DI Palette(旧:第一印刷所)」のグループ企業であり、配送・発送、梱包(こんぽう)・包装など、グループの物流部門を担っている他、印刷物に関連する多様なサービスを提供している。

 第一製品流通がデジタル化に取り組み始めたのは約4年前。会長の提案からだった。事業推進課 課長補佐の押見透さんは、当時抱えていた課題を次のように話す。

押見透(おしみとおる)さん 第一製品流通 事業推進課 課長補佐

 「大きな戦略や計画があったというよりは、業務における『効率の悪さ』を感じていました。当時、社内での情報管理はMicrosoft Excel(以下、Excel)が中心で、『何が最新なのか分からない』問題がよく起こっていました。いろいろな人がそれぞれ情報を持っていて、それをまとめるために複数のExcelファイルからデータをコピー&ペーストして、また新しい『まとめExcelファイル』を作る……。共有フォルダで管理はしていましたが、何が最新で、どれが本当の情報なのか分からなくてイライラすることが、たびたびありました」(押見さん)

 また、ずいぶん前に社外で作ってもらったMicrosoft Accessのシステムにも問題があった。現状の業務と合わなくなっていたが、社内でメンテナンスできる人がいない。かといって、お金をかけて社外に依頼するほどでもない。

 そこで、自社の業務に合うシステムを探してはみたが、ぴったりと合うシステムがなかなか見つからなかった。また、既存のシステムはコストが高く、導入しても本当に使えるのか、そこまでの機能が必要なのかといった不安もあった。

 「業務自体はこなせているから『まぁ、いいか』と思っていました。正直、考えるのも面倒くさかったんです。そんな折です。会長との雑談の機会に『kintoneっていうのがいいみたいだよ』という、一言がありまして」(押見さん)

 kintoneとは、サイボウズが提供している、プログラミングの知識がなくても自社の業務に合わせたシステムを構築できるクラウド型業務改善プラットフォームだ。

 kintoneを活用すれば、現場に合った仕組みを、自分たちの手で作れるかもしれない――そう考えた押見さんは、単なるシステム導入ではなく、自分たちで改善していく「自走型の現場づくり」を目指したいと考えた。

 だが、第一製品流通には、いわゆる「IT担当者」のような、情報を専門に扱う担当者はいない。幸い、押見さんが所属している事業推進課は、新規案件を受注したり、社内における新たな取り組みを考えたりする部署。そこで「まずは、自分たちからやってみよう」と考えたのが始まりだった。

「Excelでよくね?」現場の停滞と、見えてきたコミュニケーションの壁

 最初に取り組んだのは、配送に関わる業務のシステム化だった。しかし、実際に進めてみると、業務プロセスの変更やデータ連携など、デジタル化だけでは解決できない課題が次々と浮かび上がった。また、配送部門の担当者は外出していることが多く、作成したアプリケーションに対してフィードバックが欲しくても、なかなか使ってもらえず、会話する時間も取れない。ITが苦手な人も多く、なかなか前には進まなかった。

 「各現場は通常業務を抱えています。また、物流業界の管理職はプレイングマネジャーが多く、現場が忙し過ぎて業務改善に取り組めないんです」(押見さん)

 そこで、配送部門と関連がありそうな、他の部門の業務改善から先に着手できないか考えた。総務部門なら社内に従業員がいるし、請求書の発行など、さまざまな実業務があると考えた押見さんは、総務課の風岡さんに相談し、課題の洗い出しに着手した。

 だが、こちらもすぐに暗礁に乗り上げた。

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