理想を持つことが良い転職への近道:転職失敗・成功の分かれ道(7)
毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。
ITエンジニアであれば、常にスキルアップやキャリアアップを意識している方が多いのではないでしょうか。今回は、そういう方に対して、IT業界でキャリアアップのために実際に転職した経験がある先輩としてお話ししたいと思います。
理想を持ち、キャリアを意識しよう!
では、よい転職をするために何が必要かを考えてみましょう。毎日、淡々といまある仕事だけを片付けるようなスタンスでいると、あっという間に年を取ってしまいます。
まずは、理想を持ってください。何年後にはこうなっていたい、いくらの年収をもらいたいなど、具体的な目標を持つことです。これは非常に大事です。この理想(=将来のキャリア像)がないと、悪いいい方をすると、会社に利用されて会社都合での転職を余儀なくされる可能性が高いといえるのです。
次に、現在までの自分の経験・能力を整理してください。目標と現在のギャップが、いま所属している企業で埋まらないと思ったら、転職は1つの選択肢として考えられます。ただし、いまの勤務先でも異動により、ご自身の考える将来のキャリアの実現が可能であるならば、異動も選択肢になるでしょう。
転職を当り前と考える20代のエンジニアは、このような意識が高いように感じます。
エンジニアにとってキャリアアップは必要不可欠です。そのためには転職がどうしても必要な場合があるでしょう。基本的に会社によってその立ち位置あるいは得意分野がありますので、特にその範囲を超えるキャリアアップが必要な場合は、転職が必要になります。例えば、2次や3次請けでのシステム開発をメインにしている会社では、どうしてもシステム開発プロジェクトにおいて詳細設計(内部設計)以降のフェイズでプロジェクトに参画することが多い傾向にあるのは事実です。
実際に顧客の要件を取りまとめたり、ソリューションの提案を行いたいというキャリアップを考えているエンジニアにとって、そのような上流工程の仕事ができる会社に移ることはとても意味のあることです。
スキルの勘違い
エンジニアのスキルとして、プログラミング言語やデータベース、設計技法、開発環境などの技術的スキルを意識される方が多いと思いますが、それ以前に社会人としての基本となるスキルが欠けていると転職は非常に苦戦を強いられます。実際、年齢の割に非常に豊富なITスキルをお持ちであったAさんは、転職活動で自己のスキルを大いにアピールしました。Aさんは応募した10社すべての書類選考は通過したものの、面接ですべてNGという結果に終わったのです。それは、何に対しても考え方が懐疑的だったためです。
技術的なスキルは、はやり(流行)で変化することがあります。しかし、社会人としての基本的なスキルはどの業界でもどの職種でも必要とされることです。エンジニアですので当然、技術的スキルは求められますが、社会人としての基本的なスキルを顧みないと、転職でもうまくいかない例が多いのです。
基本スキル
(1)コミュニケーションスキル
システム開発のプロジェクトは基本的に複数の人間で仕事をするので、情報交換や情報共有のためにコミュニケーションが必要ですし、上流工程になればなるほど直接顧客と話をして仕様を確定させていく場面が増えます。また、プロジェクトマネージャであれば、進ちょく管理や予算管理以外にプロジェクト要員のモチベーションコントロールもコミュニケーションスキルにかかっています。仕事をするうえでの最も基本的かつ重要なスキルなのです。
(2)論理的思考
ある要求がなされた場合、必ずその理由があるはずです。常にその背景にある理由を意識することを心掛けることが必要です。それによって、ある要求を別の手段で解決する方法も提示できることがあります。また、人を説得したり人に説明したりする際に論理的でないと、相手を不快にさせることがあります。
(3)前向きな考え方
どんな仕事でも、すべて自分の納得いくものばかりではありません。また、現状に対して不満ばかりいう人がいますが、そういう方はどんなに環境を変えても不満をいい続ける傾向にあるようです。そのような場合は、転職しても転職して成功したと実感できないようです。ご自身の考え方が変わらないと転職も難しいようです。仕事の本質は、課題の解決にあります。仕事環境に課題がある場合も同様に、解決させる前向きな心が必要です。その解決は外部環境の改善もあるが、自分の考え方を変えることで解決される場合もあります。
転職成功のポイント
エンジニアが転職を成功させるポイントは、3つあります。
(1)何を目的として転職するか明確であること
(2)エンジニアとしての自分の市場価値を認識すること
(3)転職に関する情報を多く取得すること
(1)についてはご自身がきちんと認識する必要があります。転職するに当たって複数の目的がある場合は、その優先度も明確にしておくとよいでしょう。すべてを満たす転職ができるとは限りません。
また、(2)と(3)については、キャリアアドバイザーなどの転職をサポートするプロフェッショナルに相談することが一番有効であると思います。特に、エンジニアの転職であれば、エンジニアとして実際に仕事の経験があり、開発現場の状況やエンジニアの気持ちを理解していたり、この業界を深く広く理解しているキャリアアドバイザーのサポートを受けて転職活動をされるとよいと思います。
著者紹介
パソナキャレント
高橋英輔氏
東京都出身。大学卒業後、大手住宅メーカーにて注文住宅の営業として間取りのプランニングや資金計画などの提案営業を経験後、システムエンジニアにキャリアチェンジ。システムエンジニアとして7年ほど、損害保険会社の基幹システムやナレッジマネジメントシステムなどの業務系アプリケーションの開発で業務分析、要件定義から運用まで携わる。その後、それまでの経験を生かし、パソナキャレントにてキャリアコンサルタントとして活躍中。
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