第二新卒での転職、その落とし穴に注意を!転職失敗・成功の分かれ道(25)

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

» 2006年12月09日 00時00分 公開
[西川可那子パソナキャレント]

 転職に当たって、本当にその企業を選んでよいのかどうかを見極めるため、応募する企業情報をいかに収集するかについてお話しさせていただきたいと思います。

転職で失敗しないためには、以下の記事も参考になります
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最近よく見掛ける「第二新卒歓迎」

 最近よく見掛ける「第二新卒歓迎」の文字。企業は実務経験がなくても、若くて将来に期待する第二新卒枠を設け、広く募集するところが多くなりました。それと同時に、弊社に転職相談に来る方も、20代半ばのまだ経験2〜3年の転職志望者が非常に増えています。

 経験者を求めるはずの中途採用で、経験の少ない第二新卒を歓迎していることの意味とは何でしょうか。自分がまさに第二新卒に該当するとしたら、この第二新卒ブームに乗るべきなのでしょうか。

第二新卒の定義とは

 そもそも、第二新卒の定義とは何でしょうか。実は明確な定義はないのです。ただ、一般的に認識されている定義は下記のようなものです。

  • 入社後1〜3年目の若手社員
  • 即戦力としてのキャリアはないが、基本的なビジネスマナーは身に付いている方
  • (場合によっては)学校を卒業後、正社員としての勤務経験がない方

 では、なぜ企業が第二新卒獲得に乗り出しているのでしょうか。理由は2つ考えられます。

 1つ目は、新卒採用の競争の激化にあります。不景気で長年企業は新卒採用を控えていました。しかし景気が上向きになってきたいま、多くの企業は新卒採用に積極的になりました。しかし、思うように新卒を採用できない企業が、新卒の代わりに第二新卒を採用しているのです。

 2つ目は、若手の早期退職者への対応です。現在は「3年で3割の新卒が辞めてしまう」といわれています。企業はせっかく採用した新卒でも数年で辞められてしまい、若手社員が恒常的に不足している状況です。そのため、こうした欠員となった若手社員を補充、確保するため、第二新卒を積極的に採用する企業もあるのです。

第二新卒枠を利用してキャリアチェンジを

 第二新卒枠を使ってキャリアチェンジする方法はうまい転職方法です。

 25歳の田中さん(仮名)は、「いまの会社では自分のやりたいことができない」と考え、転職したいと弊社にご相談にいらっしゃいました。

 田中さんは、大学の情報工学科を卒業後、何となくSE(システムエンジニア)を志望し、受託開発専門のソフトハウスに入社しました。初めに配属された部署が、基盤系の部署だったため、これまでずっとインフラでの仕事をしてきました。CCNA(Cisco Certified Network Associate)の資格も取得しましたが、勤務しているうちにインフラの上に載るアプリケーションというものに興味を持ち、アプリケーション開発に携わりたいと考えるようになりました。そして3年目になったときに、キャリアチェンジするなら若いうちにと思い、転職を決意。結果として、元請けの割合が多い大手SIer(システムインテグレータ)に入社が決まりました。

 中途採用での募集は、経験者募集がほとんどです。しかし、第二新卒枠を使えば、未経験でも入社することが可能です。今回のように、3年間インフラでのSEをされてこられた方でも、アプリ系SEへの転身が可能です。

 とはいえ、誰でも面接を通るわけではありません。むしろ、企業は3年未満で前の会社を辞めてしまう人が、新しい会社で長く勤めてくれるのかという不安を持っています。よって、面接では経験より明確な志望理由を聞かれます。はっきりとした理由を持たずに、いまの会社が嫌という理由だけでは、転職を考えても企業はもちろん採用してくれません。

 田中さんの場合は、身近でアプリケーション開発というものを見てきたということと、独自で基本情報処理の資格を取得するなど、明確な志望理由と裏づけがあったため、満足できる転職活動ができました。

第二新卒の落とし穴

 第二新卒枠を使ってキャリアチェンジをする方法はうまい方法ですが、落とし穴もあるのです。

 24歳の山本さん(仮名)は大学卒業後SEとして、アプリケーション開発に携わりました。しかし、残業が多く、パソコンの画面に向かってばかりの作業に嫌気が差し、もっと人と接する仕事をしたいと思い、転職を決意しました。

 転職サイトを見ると、未経験歓迎の求人がたくさんあったため、「人と接することのできる仕事」と考え、営業職を募集している会社に応募しました。

 書類を出すと、すぐに面接に来てくださいという連絡が来ました。そこでさっそく面接に行くと、業務の説明があり、これまでとは違って、いろいろな人と会うことができて、お客さまに対して提案もできるとのことでした。しかも、その場で内定を提示されたのです。

 未経験ということで、年収は400万円から300万円に下がるといわれましたが、年収よりも仕事のやりがいと考え、山本さんはその場で入社を即断してしまいました。

 しかし、入社してみるとイメージしていた仕事とはまったく異なりました。毎日飛び込みで営業をかけ、契約を取らずには会社には戻れない雰囲気です。終電で帰るのは当たり前、数字のためには顧客のことを考えてはいられない。そんな日が3カ月も続き、ついに体調を崩し会社を退社してしまいました。

 山本さんは弊社に相談に来ました。イメージが先行し、入社後にギャップを感じてしまう典型的なパターンです。特に、社会人経験が短く、本当に自分が求める仕事内容を理解していない人が陥りやすい失敗です。

 その後、山本さんにキャリアカウンセリングを行いました。もっと人と接し、お客さまに提案のできる仕事がしたい、とは考えていたものの、もともとITエンジニアの仕事も嫌いではなかったことが分かりました。初めはプログラミングから入りますが、上流ではお客さまとの折衝もあることをお話しして、結局ITエンジニアとして再挑戦することに決めました。その結果、中規模のSIerに入社が決まったのです。

 最終的には転職活動は成功したものの、山本さんの場合は、24歳にして経験社数が3社となってしまいました。第二新卒で転職できるからといって、あまりよく考えずに転職を決めてしまうと、このような落とし穴もあるのです。

第二新卒だからこそよく考えて転職しよう

 仕事というのは一生のうちでも、大部分を占めるものです。仕事が充実していないと、人生がつまらないものに感じてしまうかもしれません。30代、40代になってキャリアチェンジするのは非常に難しいのが現実です。学生のときに何がやりたいのか分からずに、何となく入社を決めてしまったけれど、働いているうちに自分の本当にやりたいことが見えてきたという人も少なくないようです。

 十分に考え、自分の本当にやりたいことを目指すことにしたのならば、第二新卒のうちに思い切って転職するのも、1つの手だと思います。ずっと、悩みながら働き、あのとき転職していればよかったと後悔するより、充実した仕事ができ、充実した人生になるでしょう。

 社会人になって2〜3年たったころは、本当にこの会社にずっと勤めていいのか、そもそもこの仕事でいいのかなどと、一番悩む時期だと思います。そのときに間違った選択をしないためにも、キャリアコンサルタントにご相談いただきたいと思います。

著者紹介

パソナキャレント 西川可那子

千葉県出身。立教大学法学部を卒業後、パソナキャレントに入社。IT業界のキャリアアドバイザーとして、第二新卒など、若手を中心とする人材の転職のサポートを行う。



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