毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。
スポーツ界では、オフシーズンになると新しい環境や可能性を求めての話題が事欠きません。例えば「メジャーリーグに挑戦」といっても、すんなりと契約が決まって「頑張ってこい」とポジティブに送り出されることもあれば、「まだ早い」「事情が変わった」と引き留められて断念することもあります。
実際、新しい環境への挑戦が成功だったか失敗だったかは、その後の選手の活躍を見れば分かるかと思いますが、個々の選手を振り返って見ると、単に実力だけではなく、タイミングも大事なのではないかと気付かされます。
こういったスポーツの話題、皆さんの転職活動に置き換えることはできませんか。毎年、ボーナス時期や転勤、異動の時期になると「転職フェア」「キャリアアップ」といった文字が、インターネットや雑誌、電車の中の広告などで目立ってきます。求職者も企業も、良い企業に転職しよう、良い人材を確保しようとこの時期を狙って動きが活発になります。
転職するのはいましかないかな、まだ早いから情報収集から始めようかな、と転職をするタイミングは人それぞれです。ただこのタイミングこそ、転職の失敗・成功の分かれ道になりかねません。単にスキルを満たしているから、とか、市場価値が高いから、というだけで良い転職につながるとは限りません。同じようなスキルであっても、入れる時期、入れる企業は異なるものです。
転職して良かったか悪かったか、その感想は人それぞれです。転職をしたことで夢のような生活に変わったという人も、完全に失敗だったという人もいます。タイミングを逃さないためにも、常にアンテナを張りめぐらせておくことが大事だと思います。
情報化社会とはいっても、自分の力だけで転職活動をするには限界があります。
最近は「人材紹介会社」や「キャリアコンサルタント」の存在が認知されてきており、求職者はもちろん、求人企業もキャリアコンサルタントに着目するようになってきました。人材紹介会社は豊富な求人情報を持っているので、求職者から見ると自分の活動範囲が一気に広がると思います。
でも、人材紹介会社を初めて使う人は抵抗がありますよね。見知らぬ人と面談するのは怖いし、面倒だし、そこまでして転職しようという意欲もないので、情報だけ送ってほしいという人も多いかと思います。
私も転職者として、初めてキャリアコンサルタントと面談したときはドキドキしました。どんなことが行われるのか、見知らぬ人に会って何をいわれるのだろうかと……。
だから皆さんの気持ちもよく分かります。でもこの仕事をしていると、もっと早く縁があればなぁ、と思うことが本当に多いのです。あと3カ月早くお会いできていれば、もっと良い求人がご紹介できたのに、という感じです。
私も人材紹介会社に登録したからといって、1カ月や2カ月で転職活動が終了するとは思っていませんでした。私の場合は、人材紹介会社に登録をしてから6カ月以上かかりました。当時のキャリアコンサルタントと何度も面談をし、求人情報が届くと直接キャリアコンサルタントに会って詳しい求人内容を伺ったりと、とにかく時間をかけたことをいまでも思い出します。
人材紹介会社に登録するのに期限はありません。私と面談をした求職者の中には、1年後、2年後の転職を視野に入れている方もたくさんいます。その方々とは時々コンタクトを取りながら情報交換をしております。
タイミングを逃さないために、転職をしたい時に登録するのではなく、少しでも早めに登録して縁の機会を設けることも大事かと思います。
私たちキャリアコンサルタントは、転職市場を常に「線」として見ています。いまはどの企業に入れば幸せか、景気が良い企業、採用が活発な企業、これから成長しそうな企業は、などを常にチェックしながら転職市場を追い続けています。
でも皆さんにとって転職は、人生の中の1つの「点」でしかないはずです。「線」で見ているからこそ経験できたタイミングと縁の例を挙げましょう。
2カ月前から募集を行っていた某外資系企業のマネージャのポジション。以前から転職をしようと考えていたAさんは、この求人をWebサイトで募集の案内を見て気になっていたそうですが、当時は情報収集に専念していたため、応募はしていなかったのです。
とはいえ、結局Aさんは応募したのです。そして1次面接終了後、Aさんは絶対にその企業に転職したいと思い、面接官や人事担当もぜひ採用したいと意気投合しました。ところが、絶対に内定が取れると思っていた矢先、急に本国から「求人募集凍結」のアナウンス。募集再開のめどが立たず、残念ながらAさんは他社に転職することになりました。
半年後に募集は再開。少しでも応募が前後していれば意中の会社に入れただけに、タイミングがすべてであったのだと思います。じっとしているのではなく、少しでも行動を早くして、タイミングを逃さないことが大事なのです。
ある企業の社内SEに応募をしたBさん。その会社の業務内容に大変関心を持ち、何としても転職したいと思っていたのです。しかし私の目には、どう考えてもBさんのスキル不足が否めませんでした。ところがそのBさんの人柄にほれ込んだ面接官。すると今度は面接官が何としてもBさんを採用したいと考え、Bさんのために新しい募集職種を用意してくれたのです。もちろんBさんはその職種で応募し、見事その企業に入社することができました。
募集要件を満たしていなくても、その企業に応募をしたことで内定を勝ち取ることができたのは、何かの縁があったとしか思えませんでした。
人材紹介会社やキャリアコンサルタントも千差万別です。理想的な求人企業を見つけることも、自分に合った人材紹介会社、キャリアコンサルタントを見つけることも、運命的なものを感じずにはいられません。
転職を成功させるためにも、タイミングと転職希望企業との縁のほか、良いキャリアコンサルタントを見つけて、運気を高めることも大事なのだと思います。
毎日コミュニケーションズ 海波芳和
東京都出身。7年間SEとして活躍した後、毎日コミュニケーションズへ転職。SEとしての実務経験や人材紹介会社を利用した転職経験を生かし、数多くのITエンジニアの転職をサポート。キャリアアドバイザーの有資格者として、親身になった対応やアドバイスを行っているという。
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