書類と面接が転職失敗・成功の分かれ道転職失敗・成功の分かれ道(3)

毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。

» 2005年01月26日 00時00分 公開
[有山義也ワークス・アンド・アソシエイツ]

成功・失敗を分ける基本は?

 日ごろ私たちはキャリアカウンセリングを通して多くのエンジニアの方と接しています。その中で気付き、感じたことの中で、「転職の成功・失敗」の分かれ道になりそうな基本な事柄を2点、皆さんに簡単にアドバイスしたいと思います。

(1)職務経歴書について

 転職活動で重要なこととして、履歴書や職務経歴書(ここでは2つをまとめて呼ぶ場合、書類と表します)の作成が挙げられます。書類は転職市場という顕在化したマーケットにおいて、自分の市場価値を求人企業などに最初に判断してもらうための最初のツールといえます。そのため、自分(=商品価値)をいかにPRできるかが重要です。しかしながら、こうした商品価値を書類にどう書けばいいか分からないITエンジニアが意外と多いのです。

 書類の形式にこだわる必要はありません。が、エンジニアであれば最低次の点(実際はもっとありますが)をきちんとまとめておくことをお勧めします。

  • 担当業務
  • 各Task(プロジェクト)
  • 上記の内容と期間、担当した役割、専門領域、専門技術、資格、システム環境、成果などです

 書類は一度作成しておけば、後は最低1年に1回の割合でアップデートしていけばいいと思います(より望ましいのはプロジェクトが終わるごとでしょう)。初めて作成するときだけ時間とエネルギーが多少必要になりますが、自分のキャリアの棚卸しができ、自分の強みや弱みを再確認できるいいチャンスです。

 さらに転職を具体的に考え、書類を提出する段階になったら、実際に転職したい会社やポジションを思い描いて書類のカスタマイズをするのです。

 これまで最低1年に1回アップデートしていた書類を基に、転職したい会社やポジションに合わせた形に、経験やスキルを書き直すのです。その会社やポジションで必要とされるであろうスキルやキャリアを書類の最初に持ってくる、経験していたのにアップデートを書類に書き忘れていたことがあれば追加する、といったことをすれば、書類で落とされる確率は格段に低くなります。

 キャリア採用においては、基本的には即戦力としての人材を雇用したいという思惑が読み手(つまり求人企業)にはあります。企業の求人職種と似たような状況で、似たような経験をしている人が有利なのはそのためです。

 具体的な例として、ITコンサルタントのレジュメを例に挙げてみたいと思います。

 コンサルティング系のレジュメを書きやすく、また読み手にとっても魅力的にするポイントとしては、次のような点が挙げられます。

  • プロジェクトの背景(外部コンサルティングを必要とした顧客、企業、組織の状況)、その背景に対し、どのようなアプローチ、アクションを講じたのか、その中で自身が果たした役割など
  • 上記の対応から、どのような結果(利益アップ、コスト削減、プロセス時間の短縮など、顧客にとっての何らかの価値)を導き出したか

 これらを踏まえたような書類がいいといわれます。さらに、可能なものはできるだけ表現を数字化すると説得力が増す、と読み手側からよく聞きます。例えば、システムの規模や予算、人月、売り上げや削減できた時間やコストなどです。

 ちなみに、上記のポイントは、これまでかかわったプロジェクトすべてについて上記のポイントを書類に書く必要はありません。あくまで「売り」になりそうなもの、直近のもので構わないのです。

 書き方ですが、……の詳細化、……分析、……評価というように、個条書き程度のものをよく目にします。しかし、それではダメです。上記の部分を踏まえて肉付けし、文章にしていく必要があります。文章化することも、相手に内容を分かってもらおうという努力、そして文章力(というビジネススキル)を示すものとなります。が、文章といっても長ければいいわけではありません。きちんと要約され、理解してもらえるような表現が必要です。

 しかし、個条書きでも構わない点はあります。例えば、プロジェクト名、概要などです。こうしたことは、実際に転職が具体的になった際に、人材紹介会社などに相談したうえで書くといいと思います。

(2)面接(インタビュー)について

 中途採用での面接は、よく「お見合い」に例えられられます。相互理解を深め、お互いのベクトル方向が同じかを確認し合う、そういう場です。ですので、できる限り相手について事前に知っておいた方が、話の深さや広がりは増します。

 こんなことは当然のことだと思うのですが、そこまでできる方は意外と少ないようです。十分な準備をしないで(転職を希望しているのに、どんな会社なのか、事業内容などをまったく調べないなど)面接に臨むとか、遅刻や直前のキャンセル、度重なる面接日時の変更などは避けるべきことでしょう。特に会社で働きながら転職活動を行う場合、忙しいからといって準備不足になる方が目立ちます。こうした場合は、内定を得るのは難しいことが多いようです。

 さて、求人企業が採用面接で必ず聞くアセスメント項目があります。転職される方はぜひ頭の中に入れておいてほしいことです。その内容は次のようなものです。

  1. 知識・スキル:その職位・職務を遂行するのに十分な経験や技能を有しているか
  2. 一緒にやっていけるか:組織のゴールとしているものに共感できるか、組織のカラーになじめるか、ほかのメンバーと協調していけそうか
  3. 志望動機:なぜこの会社、職種を選択したのかを自分の言葉で伝えられるか、将来の自分のキャリア形成をどのように考えているのかなど

 どうでしょうか。参考になったでしょうか。ここに書いたことは、全体の一部でしかありません。実際に書類を書く場合、面接の際には、もっと研究するなり、人材紹介会社に相談するなりして転職に臨んでください。

著者紹介

ワークス・アンド・アソシエイツ

有山義也氏

1972年生まれ。米・ロサンゼルスの人材紹介会社で、主に日本企業の現地採用を担当。その後、シリコンバレーのサーチ会社にて日本で勤務するITエキスパートやコンサルタントのスカウトを4年間担当。2003年より現職。



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