毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。
転職は、成功するときもあれば失敗することもあります。失敗する原因にはさまざまものがあります。例えば、転職理由が明確ではなかった、技術スキルが不足していた、ヒューマンスキルが問題だった、などです。その1つに、「キャリアプランの作成ミス」があるのです。
皆さんは、キャリアプランを作成したことがあるでしょうか。作成したことなんてないという人も多いかもしれません。しかし、将来的に「こうなりたい」というような希望とか、理想のキャリア像を抱いたことはあるのではないでしょうか。広くとらえれば、そんな希望や夢もキャリアプランと呼べるものです。
しかしもう少し狭義の意味としては、「これまでの経験をもとに、今後どのようにキャリアを構築していくかを考え」、5年後、10年後を見据えて計画を立てることを「キャリアプランを作成する」といったりします。
今回は、よくある「キャリアプランの作成」の失敗例を取り上げたいと思います。
鈴木さん(仮名)は、オープン系のシステムエンジニアから、サポートエンジニアへのキャリアチェンジ転職を果たしました。
鈴木さんは、「顧客ニーズに対応できる職種」を転職活動の際に求めていたため、プリセールスエンジニアやシステム導入コンサルタントへの道もあったのですが、アフターフォローが中心となるサポートエンジニアを選択したのです。
これで希望の仕事ができると、夢を抱いて転職先に出社。が、実際に仕事をしてみると、「お客さまのニーズをシステム導入から支援したい」という気持ちが膨らんでいきました。そしてサポートエンジニアというポジションよりもシステム導入プロセスのポジションに興味を持つようになり、入社後3カ月で退職してしまったのです。
やはりオープン系のシステムエンジニアの山田さん(仮名)は、上流工程のポジションへのキャリアアップ転職を果たしました。
山田さんは、前職では5人程度の規模のプロジェクトリーダー(PL)として仕事をしていました。転職によって「要件定義を含め5人規模以上のPL」への転身できると喜んでいました。そして転職後最初のプロジェクトでは3人、次のプロジェクトでは2人……。1年たちましたが、当初の希望どおりの仕事が回ってきません。山田さんは焦りました。「こんなはずでは……」
しかし、それは当然だったのです。入社した会社は、2次・3次請けを主流としていたので、顧客の要件定義はほとんど元請けが担当するため、要件定義からの仕事は回ってくることがありません。山田さんはこの事実を知って退職しました。
鈴木さんの転職は、「これまでの経験職種ではない職種への転向」で失敗しています。
上に詳しいことは書いていませんが、鈴木さんの場合、自己分析が不足していたのです。そのために、実際に仕事をしてみると、「自分と合わなかった」となってしまったのです。その結果、自分が出社する意味がないと感じてしまい、すぐに会社を辞めてしまったのです。
山田さんの場合は、会社分析と募集ポジションの分析が不足していたために、転職した後に「想定していた仕事内容でなかった」ことに気付いたのです。
「私はこんな失敗はしない」と思うものですが、このような失敗は、意外に多いのです。では、こんな失敗を防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか。
私は、綿密なキャリアプランの作成をお勧めします。
キャリアプランの作成には、最低でも次の2つの分析が必要です。これがどこまでできるかによって、転職の成功と失敗に道が分かれるのです。
(1)自己分析
(2)企業と募集ポジションの分析
皆さんは意識していないと思いますが、通常は無意識に自己分析と募集ポジションの分析を行っていることがあるのです。そしてこの2つを照らし合わせることで、転職先候補が浮かび上がってきます。
(1)は自分の適性や希望職種の分析なので、すぐにできると思います。(2)に関しては、幾万ものポジションがあるので、なかなか分析しきれないのではないでしょうか。
つまり、自分に合うキャリアを探し当てることは、「土の中から目的の宝石を見つける」ぐらい難しいのです。
こうしたキャリアプランの作成に重要な役割を果たすのが、専門家であるキャリアカウンセラーです。
キャリアカウンセラーは、「どのようにキャリアプランを作成したらいいか」というようなノウハウを持っているはずです。皆さんも一度、キャリアカウンセラーにキャリアプランの作成を相談してみてはいかがでしょうか。
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川嶋梢(インゲート)
大学卒業後、システムエンジニアに。主な業務はWeb系・オープン系。レコメンデーションエンジンを組みこんだシステムの開発・検証などを行う。資格として当時ORACLE MASTERを取得。その後、ブリッジSEを目指し中国に渡るも、MBAに興味を持ち、帰国後に立教大学大学院に入学。その後、立教大学大学院特認教授と人材紹介会社を立ち上げる。前職までの経験を生かして、ITエンジニアから管理系職種まで幅広く転職支援を行っている。
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