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日本の開発者へのエール、HTML5標準化貢献への期待を語る〜W3C Developer Meetup - Tokyo 2013レポートUXClip(31)(3/3 ページ)

日本のWeb開発者がW3Cの標準化にどう貢献していけるのか。国内外の著名人によるパネルセッションで、熱い議論が交わされた。本稿ではその模様をお伝えする。

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W3Cは魔法の部屋ではない。日本のニーズを伝えてほしい

 4番目のパネラーは、W3CでInternationalizationのActivity Leadを務めるリチャード・イシダ(Richard Ishida)氏。W3Cは、望みを叶える「魔法の部屋」ではなく「議論の部屋」であり、議論のための情報やニーズを伝えてほしいとのことです。


リチャード・イシダ氏

 同氏はイギリス出身。ハリーポッターのふるさとです。「ハリーポッターには望みを叶えてくれる魔法の部屋が登場しますが、W3Cは残念ながら、そのような魔法の部屋ではありません」「W3Cは議論の部屋。ユーザー・開発者・コンテンツ制作者、それらWebにかかわる全ての人が集い、議論を行うことでWebを進化させる場所」とイシダ氏は述べます。

 「縦書きやルビをWebでサポートしていくに当たり、日本人でないと分からないことは非常に多いです。日本人からの固有の情報・要望がとても重要になります」とイシダ氏は語りました。ちなみに「仕様を書く」「コードを書く」といったことは必須ではないそうです。

 W3Cにはメーリングリストや、Twitterなど、複数な手段で参加することが可能です。興味を持たれた方は、参加してはいかがでしょう。

i18n Mailing list:www-international@w3.org

W3Cの仕様一覧:http://www.w3.org/TR/tr-technology-drafts

コードは世界共通、国境は無い。友だちを助けよう

 最後のパネラーはノキアの井村友美氏。友だち同士の助け合いが大切との見解を示しました。


井村友美氏

 W3Cの活動に直接貢献するには、ハードルが高いと感じるのも事実です。しかし、そういう場合であっても、コミュニティに参加し、友だちを助けることで間接的にW3Cに貢献できると井村氏は話します。

 例えば、「欧州と米国の友だちが、縦書きについてブログを書こうとしたのですが、日本語が分からず、内容が正しいか分かりませんでした。そこで、私がチェックやスクリーンショットの提供を申し出たことで、世界中の人に縦書きを紹介できました」という自らの体験談を紹介しました。

 井村さんは、友だちに助けられた経験から、コミュニティに参加し、講演活動などを行うようになったそうです。そういった経験から、「友だちを助けてほしい、コミュニティに参加してほしい」と訴え掛け、お互いに助け合うことは本当に素晴らしいと語りました。

 英語の問題についても、「コードが書ければ、Webの世界ではあまり問題にならない。ですから、言葉の壁は気にせずに積極的に参加してほしい」とのことでした。

まとめ

 時間の関係もあり、セッションでは各パネラーからの意見を聞くまでにしか至りませんでした(筆者が冒頭でしゃべりすぎたため……)。しかし、「日本人開発者がW3Cに貢献していく」ために、大変有用な意見や提案が挙がりました。

 このパネルディスカッションは出発点にすぎません。ここに挙がった数々の貴重な意見を実行していくことが必要です。筆者としてもコミュニティ運営の立場から、アクティビティを高める活動をしていきたいと思っています。その際は、ぜひご協力ください。また、本記事を見て興味を持たれた方は、ぜひ自分でできそうなところから実行してほしいと願っています。日本の開発者コミュニティは本当に素晴らしいですし、困ったときはみんなが助けてくれます。そして、W3Cのメンバーは、皆さんからの声を待っています。

 最後に、英語の問題について。今回のイベントでは、英語に堪能なコミュニティスタッフによるチャットベースのリアルタイム翻訳を提供しました(英語・日本語双方を表示したかったため、Google Translate APIを利用)。これは、日本人参加者の英語プレゼンテーションの理解を助けるためのものだったのですが、とても興味深い現象が発生しました。


翻訳スタッフの面々

 日本人パネラーはこのパネルセッション中、日本語で意見を述べていました(山崎氏、井村氏はとても英語が流暢です)。それが可能になったのは、この翻訳システムのおかげでした。日本語から英語への翻訳をサポートしていたおかげで、海外からのゲストにも英語の翻訳を簡単に示すことができたためです(付け加えると、WebSocketなどのHTML5技術が大変重要な役割を果たしました)。

 Webテクノロジーの進化と、英語が堪能な人々によるソーシャルな協力。これらが相まって、国際イベントでも日本語でのディスカッションが簡単にできるようになりました。このシステムは、コミュニティのレポジトリで公開されていますので、ぜひご利用ください(フィードバックお待ちしています)。

小松健作:1972年生まれ。NTTコミュニケーションズにてネットワークとWebとの関わりや、インタラクティブマルチデバイスWebサービスに関する研究開発・標準化活動に従事。Google API Expert(HTML5)、Microsoft Most Valuable Professional(Internet Explorer)


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