福島編:歴史とテクノロジーが融合する街「会津若松」は、そこそこ利便性の良い田舎:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(64)(2/2 ページ)
マッチングイベントはキャンセル待ち――会津若松が○○好きの女性に人気の理由とは?
歴女に人気の移住体験ツアー
永峯 移住というと、かつては「余生をどこかで過ごす」という意味合いが強かったのですが、ここ数年で変化が出ているように感じます。
最近は「転職先があり、そこそこ利便性の良い田舎」を求めている20〜40代の方が増えてきました。必要なものが買える商業施設や病院が近くにあり、教育も整備されている環境を望んでいる方にとって、会津若松市はちょうどいい街なんですよ。
さらに、NHK大河ドラマ「八重の桜」(2013年放映)の舞台となり、歴史スポットが数多く残されているので、歴史好きな方、特に「歴女」と呼ばれる歴史好きの女性から移住相談を多く頂いています。
単身女性からの移住相談がとても多いので、毎年、独身女性限定の移住体験ツアーを1泊2日で企画しています。地元独身男性とのマッチングイベントも兼ねているので、女性はキャンセル待ちになるほど人気なんです。2019年は10月に実施予定です。出会いをきっかけに移住してくれればとの思いで毎年企画しています
齋藤 男性参加者が足りなければ、教えてください。喜んで行きますので(笑)。
もしも、家庭を構えたら
添田 会津は子育てにも向いていますよね。首都圏と比べて子育て支援のための環境が整っているのはとても助かります。
永峯 子育て環境は充実していると思います。市内にある保育所や認定こども園に設けた「子育て支援センター」では、お子さんのいる全ての家庭を対象に、交流の場や絵本の貸し出し、育児相談など、さまざまな子育て支援の事業を実施しています。
東京では待機児童問題が深刻ですが、会津若松市は現在、待機児童はゼロです。学童保育(会津若松市では「こどもクラブ」という名称)における待機児童問題もゼロです。こどもクラブは小学1〜6年生まで入れますし、学校の長期休業期間中は朝8時から夜7時まで利用できるなど、他の自治体と比べても手厚いと思います。
雪道をふんどし&はだしで駆け回るとテンションが上がる
添田 会津若松は、お祭りなどのコミュニティー活動が充実していますよね。例えば、夏は「お日市」(おひいち)という夏祭りが7月から9月ごろまで町内会ごとに開かれますし、秋になれば芋煮会があり、野外カラオケ大会などが開かれます。
近隣の柳津町では毎年正月に、無病息災を願ってふんどし姿で大綱を奪い合いながらよじ登る「七日堂裸詣り」という奇祭があります。馬藤さんと一緒に参加したことがあるのですが、雪道をはだしで駆け回るのは思っている以上にテンションが上がります(笑)。こんな体験は都会じゃできないので、お祭り好きにとっては最高です。
原 勇気が要りますね。私は恥ずかしいから、絶対にやらないです(笑)。
馬藤 会津近郊には猪苗代湖や磐梯山、大内宿などの観光資源が豊富にあります。公共交通やシェアリングカーのような仕組みをもっと充実させて、移動をより便利に最適化できれば、街ももっと賑わうのではないでしょうか。
私が関わっている市の地域情報ポータルの「会津若松プラス(会津若松+)」には、マッシュくんというチャットbotがあって、ごみの収集日や病院の休日診療対応日などを教えてくれます。デジタル技術を活用した公共サービスの改善ができる余地はまだまだ大きいと感じています。
商店街も「ICT」に親近感を
原 IT企業からも、会津若松に拠点を設けたいという問い合わせが増えています。地元の会津大学が文部科学省のスーパーグローバル大学に採択されたり、世界ランキングの上位4パーセントに選ばれたりするなど、国内外での知名度が上がっていますので。
データアナリティクスなどに強い優れたデジタル人材を会津地域で採用したいというニーズが高まっているので、ITエンジニアの方々が活躍できる場は整ってきています。
齋藤 ITエンジニア向けのコミュニティー活動も盛んになってきています。代表的なものとしては、「Open App Lab(オープンアップラボ)」やオープンデータを活用し、「会津のために行動を」という意味が込められた「CODE for AIZU」などがあります。
行政との距離も近く除雪の苦労をITで解決できないか考えたり、子ども向けのプログラミング講座を企画したりなどの取り組みが行われています。身に付けたスキルを活用して社会の課題を解決したいエンジニアにとって、とても面白い場所だと思います。
原 ITエンジニアの皆さんは、地元出身であれ他地域の出身であれ、会津に愛着を持って地域の課題に向き合っていただいているので、今では中心商店街の昔ながらの事業者の間にも「ICT」という言葉が浸透してきたように感じています。
AiCT開設をきっかけに、新たなカフェやマンションができるなど、町並みにも変化が生まれてきていますし、さまざまなバックグラウンドやアイデアを持つ方々に来ていただくと、街のにぎわいにもつながります。
会津若松市は、それほど不自由せずに暮らせて、自然にも気軽に触れ合えます。伸び伸びと子育てもできる街なので、少しでも関心があれば、移住支援ポータルなど、ご覧になってください。
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馬藤宏一(ばとうこういち)
アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 シニア・アナリスト
1987年生まれ、石川県中能登町出身。大学時代を会津ですごしたことをきっかけに、慣れ親しんだ会津若松から全国に展開できるICTサービスの実現を目指し、2017年7月からアクセンチュア 福島イノベーションセンターに所属。「東京ではできないが、会津ではできることは何か」を日々考えながら、エンジニアとしての技術習得や新たなスキルアップにいそしむ毎日です。
アクセンチュア福島イノベーションセンター
2011年8月に東日本大震災の復興支援、および地域産業の活性化を目的に設立。国や会津若松市、会津大学や企業と連携し、IoTやアナリティクスなどの実証事業を数多く推進している他、国内開発拠点の一つとして地域の課題や実情を踏まえたイノベーションの創出などにも取り組んでいる。
添田智之(そえたともゆき)
アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 シニア・アナリスト
1989年生まれ、福島県会津若松市出身。大学時代まで会津若松市ですごし、大学卒業後に東京で5年間エンジニア生活を送るものの、会津の人や土地のぬくもりが忘れられず、妻の妊娠を機にUターンを決意。2016年11月からアクセンチュア 福島イノベーションセンターでエンジニアとして勤務開始。妻と1歳の娘の3人家族で、プライベートではカメラや動画作成などが趣味。「会津の三泣き」に代表されるように、会津の自然は過酷だが、人の温かさがある会津で場所にとらわれない柔軟な働き方を確立し、東京と会津の垣根をなくしていきたいと考えている。
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