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■経営戦略、経営学
 
社長でもわかるIT──社長のためのやさしくわかるIT経営入門
●ITガバナンス研究会=著
●日本能率協会マネジメントセンター 2004年12月
●1500円+税 4-8207-1643-3
 経営者に必要なのは、ITに関する細かい技術知識ではなく、ITをビジネスに生かす方法だ。その視点から、ITを管理するときに必要なポイントを、社長の疑問と気付きをまとめたカバーストーリーを章ごとに折り込みながら展開する。
 まず、第1章では「IT戦略と経営戦略は同じものだ」と勘違いしている社長のストーリーが出てくる。それに対して、経営戦略が先にあってこそIT戦略を作ることができること、CIO任せにはしないことなどのポイントをまとめる。このような構成で、システム障害やコンプライアンスなどのITのリスク管理(第2章)、情報セキュリティ対策(第3章)、情報化投資の判断(第4章)などを扱う。
 専門用語を極力排除する中でも、トレンドのエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)の枠組みやCOBITの34のプロセスなどを図表でまとめ、言及している。ITには詳しくないが、情報システムを見直したい、情報化の投資効果を評価したい、と考えている経営者の指針になるだろう。(ライター・生井俊)
誰も語らなかったIT 9つの秘密──なぜ、会社のしくみは変わらないのか?
●山本修一郎、鈴木貴博=著 浜口友一=監修
●ダイヤモンド社 2004年8月
●1500円+税 4-478-37466-X
 本書の冒頭、あるメーカーの経営会議を再現する。
──「次は在庫管理システムの統合の件です。現行の販売系受発注システムのアラゴン3と製造管理系のNNSCのDBを一元化して在庫管理の精度をあげるのが目的です」と発言がある。その瞬間、会議室の温度がぎゅっと下がったような気がする──。
 ITについて議論できない旧世代の経営者が多い。アメリカに比べ、経営者の情報リテラシーが低いため、ITを導入してもその効果が低い。そのITからブラックボックスをなくし、秘密のないものとして理解してもらうことが本書の目的だ。
 先ほどの会議の場面で必要なことは、目的や狙い、効果をきちんと聞き出すこと。そうすれば、12億円の見積額に対し、なんとなく「8億円でできないか」といった的を射ない質問を投げかけることがなくなる。また、システム開発の6割が人件費だと本書は指摘するが、そのコストを削減すると、システムの試験期間を短縮するなど、不完全な納品となることが多いと警鐘を鳴らす。
 情報システム構築に必要なことの把握や、予算を削る意味について、経営者のみならずSE/情報マネージャも本書から学ぶことは多いはず。ぜひ一読を。
(ライター・生井俊)
オンデマンド・ロジスティクス──経営成果を最大化する統合的物流管理
●有安健二=編著、水谷浩二=監修
●ダイヤモンド社 2004年6月
●2200円+税 ISBN4-478-37472-4
 顧客の要望にタイムリーに対応する一連の物流業務の取り組み──オンデマンド・ロジスティクスを提示し、グローバルな調達・生産・配送流通の事例を通じて、さまざまな概念の定義、影響力、構造、最適化などについて解説する。
 第2章では「デマンドマネジメントとサプライマネジメント」について取り上げ、それぞれ計画系システムと実行系システムと分けるのではなく、一体のものとしてとらえるべきだと述べる。
 第4章では、RFIDなどのツールとインターネットを活用すれば、在庫の可視性が高まり、また在庫量と在庫(仕掛)期間をグラフ化した流動数図表を利用することで、サプライチェーンでの在庫動態がふかんできるため、在庫量の最適化につながると説く。また、キャリア選択問題、配車計画問題などを取り上げている。
 各章はいくつかの節に分かれ、2ページから10ページ程度で構成されるため、テンポ良く読み進めることができる。図表なども盛り込み、物流全体を見渡せる分かりやすい内容だ。部門の担当者だけでなく情報マネージャにも読んで欲しい。(ライター・生井俊)
IT活用勝ち残りの法則──IT投資を活かすマネジメント
●淀川高喜=著
●野村総合研究所 2004年6月
●1890円+税 ISBN4-88990-113-2
 本書は「“事業サイクル”に基づいたIT活用目的の設定方法」と「“ITマネジメント”の実践方法」という、2つの軸を持つ。事業サイクルには「起業−成長−成熟−再編−分化−模索」があり、その段階によって取るべきIT政策が変化していく。また、ITマネジメントは、「変革」「アセット」「リスク」の3分野について考察する。
 企業のIT活用がうまくいかない背景に、「ベンダからの提案を真に受ける」「システム開発から運用までアウトソーサーに丸投げする」「撤退のシナリオが描けない」といった問題点があると指摘する一方で、ユーザー発のシステムにも「部門だけは便利になるが、事業全体に対する貢献は少ない」「現行業務の改善はできるが、業務そのものの抜本的な改革は難しい」などと手厳しい。
 それなら、どういうシステムやマネジメントが必要なのか。1つの解になり得るのが、経営者の在り方だという。情報システム部門やアウトソーサー任せになりつつある今日的状況に、ITマネジメントの重要性を説く本書は、経営者がIT戦略の理解を深めるために役立つはずだ。(ライター・生井俊)
BCG戦略コンセプト──競争優位の原理
●水越豊=著
●ダイヤモンド社 2003年11月
●2400円+税 ISBN4-478-37444-9
 タイトルにあるBCGとは、戦略系ファームとして知られるボストン コンサルティング グループのこと。著者の水越豊氏は同社のヴァイスプレジデントだ。
 経営者向けに書かれた本書では、“me too”型経営ではなく、BCGが推進してきた“only me”戦略を前面に押し出す。競争を優位に進めるため、株主価値、顧客価値、バリューチェーン、事業構造、コスト、時間の6つの視点が重要だと説き、それぞれに即した事例を紹介している。
 「株主価値」(第2章)では、日本企業が1980年代までは売り上げ至上型、1990年代初頭から半ばまでは利益追求型、1990年代後半以降は株価型へ、評価方法が変わってきたと解説。支持される評価方法が時代とともに変わった、という点だけでなく、これまで売り上げや利益という企業ごとに持つ「内のモノサシ」で評価してきたものが、株価型に変わってきたことで自社ではコントロールできない株価という「外のモノサシ」で評価されるようになったことに着目している。といっても、「外のモノサシ」だけに気をとられてはダメで、「内のモノサシ」とどう結び付けるかが大切で、そのためにTBR(Total Business Return)などの指標を用いながら、バリュー・マネジメントの手法を取り入れていくべきだという。
 そのほか、戦略的セグメンテーション(第3章)、デコンストラクション(第4章)、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(第5章)、エクスペリアンス・カーブ(第6章)など、IT時代のように、動きの早い経営に欠かせない戦略や要素についても詳しい。(ライター:生井俊)
コア・コンピタンス経営──未来への競争戦略(文庫版)
●ゲイリー・ハメル、C・K・プラハラード=著、一条 和生=訳
●日本経済新聞社 2001年1月
●800円+税 ISBN4-532-19031-2
 1990年代に登場した経営概念は数多いが、その中で最も有名なものの1つ「コア・コンピタンス」の原典ともいえる本。しかし原題は「Competing for the Future」で、本書は“長期レベルの企業変革”をテーマにしている。著者はいう。「未来のための競争とは、生まれつつある市場機会を自ら創造し、それを制覇する競争、すなわち新しく生まれる戦場の支配権をめぐる競争である」。経営資源に恵まれた大企業が、野心的な後発企業に敗れることがたびたび起こるのはなぜか?──それはビジネスには「未来をイメージする競争」「構想を有利に展開する競争」「マーケットシェアを獲得する競争」の3つのフェイズがあるのに、多くの企業では市場が見えてきてから行われる「シェアを獲得する競争」ばかりに注目しているからだ。本書でリエンジニアリングは後追い戦略であるとして厳しい批判の対象になっている。そこで未来を展望すること、未来に必要となる企業力を構築することの重要性を強調する。経営ビジョンとアクションプランの間を埋めていく際に、有益な示唆を与えてくれる1冊だ。
最強組織の法則──新時代のチームワークとは何か
●ピーター・M・センゲ=著、守部 信之ほか=訳
●徳間書店 1995年6月
●1900円+税 ISBN4-19-860309-X
 注文量を増やせば増やすほど納品が遅れるのはなぜか──。企業をシステム思考の面から考察して、組織というシステムの特徴とその動作メカニズムを明らかにし、その従来型企業組織を乗り越える策として「ラーニング・オーガニゼーション」を提言する本。「リエンジニアリング」「コア・コンピタンス経営」と共に、1990年代の経営学を席巻したこのキーワードを世界に広めた原典である。といっても、日本では「ラーニング・オーガニゼーション」は「ナレッジマネジメント」に押されて、ブームといえるほどには盛り上がらなかった。本書も「ナレッジマネジメント」の関連書として紹介されることが多いが、やはりかなり視点が異なる。情報マネージャなら押さえておきたい1冊だ。
イノベーションのジレンマ──技術革新が巨大企業を滅ぼすとき(増補改訂版)
●クレイトン・クリステンセン=著、玉田 俊平太=監修、伊豆原 弓=訳
●翔泳社 2001年7月
●2000円+税 ISBN4-7981-0023-4
 企業の寿命は30年などといわれることがあるが、本書は優良企業がその“優良さ”ゆえに市場における優位性を失うというジレンマについて述べ、話題となったベストセラーだ。
 本書は顧客ニーズに適合して持続的イノベーションを果たしている優良企業が、破壊的イノベーションに直面した際に適切に対応できないことを示唆する。事例研究としてHDD業界を取り上げ、メインフレーム向けの14インチドライブメーカーがミニコンの需要に、ミニコン用の8インチドライブがデスクトップPCの需要に応えられなかったことをあげ、これらは「顧客の声を聞いた」ためだったと分析する。HDDが映像や音楽の記録・再生に使われるようになっている現在、感慨深いものがある。
 クリステンセンはこうした現象を優良企業と既存顧客の間で作られる「バリューネットワーク」という概念で説明する。そして破壊的イノベーションが作り出す新市場においては、バリューネットワークにしばられないベンチャー企業などの新規参入企業が有利であることを解説する。優良企業(大企業)が新規事業に取り組む場合は、それが持続的か破壊的かを見極め、必要に応じて主力事業から独立した部門で行うようにすべきだという(この結論はP・F・ドラッカーに通じる)。
 過去・現在・未来すべての優良企業に属する人々に推薦できる名著である。

 

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