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■企業改革
 
マニュアルの活かし方──業務改善からリスクマネジメントまで、経営課題を解決する活用事例
●福山穣/梶川達也/渡辺季幸/吉田薫=著
●実務教育出版 2005年6月
●2000円+税 4-7889-0726-7
 1995年に発売、5万部を販売した『マニュアルのつくり方・使い方』の続編で、経営の効率化・活性化・創造化支援のための手法・技法を紹介する。前作は日常業務を主力としていたが、今回は異常管理や危機管理マニュアルを含めた。
 マニュアル作りの前提になるのは業務の適正化で、人を生かすためのマニュアル作りやその使い方を提案している。マニュアルは、自分の担当部分をそのまま文書化するのではなく、体系化し、どの程度まで業務水準を高めるかなど職場の中で検討することが大切だ。そして、その内容が期待する水準で実施されるためには、教育・訓練が欠かせない(第1章)。
 実効あるマニュアルにするためには、PDCAに尽きる。チェックの本質は、複数の目、多角性にある。チェックし忘れることは本当に問題で、その目的を口に出せばチェックミスは防げる。また、苦情や不満は発生することを前提にマニュアル作りや教育・訓練を行う。表現は「〜しない」ではなく、「○○する」と書いて、対応の手順やポイント・コツ、レベルをまとめるといいという(第3章)。
 ほかに、情報セキュリティ、医療リスク対策、環境負荷低減のためにマニュアルをどう生かすかを扱う。目次が使いやすく、内容も見開きで1トピックになっていて探しやすい。ISOや危機管理マニュアルの担当者には大いに役立つだろう。(ライター・生井俊)
情報技術を活かす組織能力──ITケイパビリティの事例研究
●岸眞理子、相原憲一=編著
●中央経済社 2004年7月
●3200円+税 ISBN4-502-37460-1
 情報技術の組織的活用能力(=ITケイパビリティ)に着目し、その概念と分析フレームワークから、企業によるIT導入効果をまとめている。
 企業が競争優位を獲得するには、ヒト・モノ・カネの3資源に加え、情報、技術力、ブランド、専門能力、組織能力などを開発し、これらを組み合わせて企業のケイパビリティを生成することが重要だ。ITケイパビリティは、情報技術資産とそれを扱う人的資産、情報技術を活用する企業コンテクストにかかわる資源に分類できるという。
 ここに登場する7社は、長野県の別所温泉にある上松屋旅館、靴下の専門店を展開するダンなど、ほとんどが衰退業界とされる世界で勝負を挑む中小企業である。
 上松屋旅館は、料理長の采配次第でブレのあった食材の調達コストを、情報システムを導入することで低く抑えることに成功した。また、ダンは、小売店に設置したPOSシステムのデータを、自社だけでなく染工場などとも情報共有し、商品販売サイクルの短縮化と在庫規模の適正化を実現し、販売機会損失や値崩れを防いでいる。
 伝統産業や中小企業であっても、適切な規模のIT導入には大きな効果があることを証明している本書は、大企業に限らず中堅・中小企業の情報マネージャに目を通して欲しい。
(ライター・生井俊)
成功企業のIT戦略──強い会社はカスタマイゼーションで累積的に進化する
●ウィリアム・ラップ=著、柳沢享、長島敏雄、中川十郎=訳
●日経BP社 2003年12月
●2800円+税 ISBN4-8222-4367-2
 世界のリーディング企業における戦略的IT活用のケーススタディ集である。日米欧の有名企業十数社が登場するが、トヨタ、新日鉄、イトーヨーカ堂など半数は日本企業だ。著者は、その日本の大手ユーザーの特徴として、「カスタマイズしたソフトウェアを大量に使用していること」「IT子会社の発展」を挙げ、これによりITの高度な専門化とITの業務関連(知的)財産の集積という優位性を獲得していると説く。これらの企業は、ITを目的達成と差別化のための道具として見ており、「累積的進化」を実現しているとし、米国のソフトウェア産業主導型のITに警鐘を鳴らす。「日本はIT化に遅れている」という俗論を真正面から切る1冊である。
企業変革力
●ジョン・P・コッター=著、梅津祐良=訳
●日経BP社 2002年4月
●2000円+税 ISBN4-8222-4274-9
 企業変革での失敗事例を数多く挿入した読みやすい経営書で、経営者やプロジェクトマネージャに向けリーダーシップ論を展開している。
 変革を推進する上で「8つのプロセス」があると本書では説く。具体的には、1.危機意識を高める、2.変革のための連帯チームを築く、3.ビジョンと戦略を生み出す、4.変革のためのビジョンを周知徹底する、5.従業員の自発を促す、6.短期的成果を実現する、7.成果を活かして、さらなる変革を推進する、8.新しい方法を企業文化に定着させること、の8項目だ。これらは、順番にこなすだけでなく、複数が同時に進行する必要がある。
 新しいシステムを導入したり業務プロセスを変更することで、一時的に生産性が低下することがある。そのとき、問題に対して危機意識が低いと、なぜ新しいことを始めたのか、あるいはシステム導入の是非を問うといった議論が再燃することがある。結果、プロジェクトの撤退や見直しが起こり、従来型のやり方に戻ることになり、変革は失敗に終わる──。
 どの時代でも、変革には痛みが伴うものだ。これを推進するためには、人格者のリーダーが求められている。過去よりも、将来を重視するリーダーのいることが、企業にとって有益だという視点でまとめられている。(ライター:生井俊)
チェンジモンスター──なぜ改革は挫折してしまうのか?
●ジーニー・ダック=著、ボストン・コンサルティング・グループ=訳
●東洋経済新報社 2001年12月
●2200円+税 ISBN4-492-53131-9
 ITプロジェクトがそのまま、企業改革プロジェクトであることは少なくない。ITプロジェクトの失敗とされる例も、改革の失敗であることが多いのではないだろうか?
 本書は、企業改革を阻む人間的・感情的な障害要因を“チェンジモンスター”と呼び、これを乗り越えてチェンジマネジメントを実現する方法を述べている。この中では変革のプロセスを「停滞-準備-実行-決着-結実」からなる曲がりくねった道のり(チェンジカーブ)ととらえる。そして「停滞にありながら全社的にはそれに気付かない」「準備段階でプロジェクトを完了したと思ってしまう」「リーダーが孤立する」などのチェンジモンスターの退治の仕方を述べていく。
 内容は方法論や理論ではなく、実例集といったところで読みやすい。例えばITプロジェクトでの例として、システム部門とユーザー部門で愚痴を言い合う場を設けるといったやり方が紹介されている。
 プロジェクトの中で頑強な抵抗勢力に出会った経験がある方なら、手にとってみる価値があるだろう。

 

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