Javaアプリケーションサーバ・カタログ
鶴長 鎮一
2003/5/13
オートノミック・コンピューティングに期待が掛かる IBM WebSphere Application Server, V5.0 |
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■製品概要
WebSphere Application Server(以下WAS)には、同社が提唱するオートノミック・コンピューティング(自律型コンピューティング)への取り組みがうかがえる。その一環として、複数ノードによる分散コンピューティング環境下で各ノードが果たすプロセスモデルが一新され、さらなるハイアベイラビリティを提供する。残念ながら、複数サーバ/ノード環境に対応させるにはNetwork Deployment(ND)版を購入する必要があり、WASはシングルサーバ環境に限定される。
同社は以前からオープンソース化やオープンスタンダード化に積極的であり、同製品に実装された多くの技術が標準策定のプロセスに進むとみられているが、その1つにWSIF(Web Service Invocation Framework)がある。WSIFは、SOAPなど複雑なアクセスプロトコルを表面に出すことなくWebサービスを直接呼び出すことを可能にするもので、V5.0ではWSIF1.0が提供される。
同社が仕様策定に取り組んでいたWS-Securityも提供されているが、こちらはテクノロジー・プレビュー(サポートがなく評価相当の機能に限定される)にとどまっている。
■管理/モニタリング機能
V5.0では管理モデルが刷新されたため、前バージョンとは多少操作方法が異なる。V5.0で提供される管理インターフェイスは次のとおり。
- ブラウザ・ベースの管理コンソール
通常のコンフィグレーション管理は、Webブラウザを通して行うスタイルが最も使用されると思われる。
設定項目はサーバ、リソース、セキュリティなど、カテゴリごとに大別されており大変使いやすい。簡単なステータス情報は表示されるが、パフォーマンスにかかわるモニタリングはここでは行わない。
サービス開始後「http://サーバのアドレス:9090/admin/」にアクセスした様子。Tivoli Performance Viewerを利用するには、「RMI要求メトリック」の有効とアプリケーションサーバの「パフォーマンス・モニター・サービス」を始動しておく必要がある(画像をクリックすると拡大表示します)
- スクリプト・ベースの管理クライアント
スクリプト・ベースによる管理のために、従来のWSCPとXMLConfigに代わり「wsadmin」が提供される。
# wsadmin.sh
wsadmin>$AdminControl startServer サーバ名 $nodeName
wsadmin>$Help Help ←コマンド確認
のように対話的に使うのはもちろん、スクリプトとしてバッチ処理を記述することも可能だ。V4.0では一部制限のあったTclコマンドも改善され、Jacl(Java Command Language)のような既存のスクリプトも有効に活用できる。
- JMXによるシステム管理
JMX(Java Management eXtensions)標準をベースにしたことで、オープンで柔軟な管理モデルとなっている。SNMPのような標準的な管理モデルを導入したことで、サードパーティ製の管理ツールの導入や自作管理ツールの作成も可能になる。
また、WAS V5.0のプロセスはJMX agentで実行され、実行時の管理はJMXオペレーションで行われる。オートノミック・コンピューティングにおいて、JMXは重要な役割を果たしている。
なお、これらの構成情報は従来のRDBを使う方式からXMLで管理する方式に変更されており、さらに扱いやすくなっている。
V4.0の「パフォーマンス・モニター」は、V5.0で「Tivoli Performance Viewer」に刷新された。見た目や操作方法、機能は旧来のパフォーマンス・モニターと変わらない。
Tivoli Performance Viewerを$WAS_Install_Dir/AppServer/bin/tperfviewer.shコマンドで起動した様子(画像をクリックすると拡大表示します) |
主な機能は、サーバのパフォーマンス状況をリアルタイムにグラフで見たり、その結果をログに保存するといったものだが、オートノミック・コンピューティングの要素であるSelf-Optimizing(自己最適化)がPerformance Tuning Advisor(自動パフォーマンス・チューニング)として将来的に統合されることが期待されている(注)。
注:発表では、(テクニカル・プレビューではあるが)一部利用可能とのことだったが、使用した評価版には含まれていなかった。 |
アプリケーションサーバ管理者にとって、JVMのヒープサイズの設定などパフォーマンスにかかわるチューニングは多くの経験と手間を要するが、Self-Optimizingにより具体的で的確なチューニングが自動で施されるのは期待したいところである。ただし期待が大きい半面、要件がそれぞれ異なる現場でどこまで通用するものなのか、十分に見定める必要がある。
■開発環境
開発環境に、WASでは別売となるWebSphere Studio Application Developer for Linux and Windows V5.0(以下WSAD)がある。
Windows XP上のWSAD(画像をクリックすると拡大表示します) |
WSADは、Eclipse 2.0(注)をベースにWebSphereに親和させるための独自のplug-inと改良を加えたもので、軽快な動作とクールなルックアンドフィールを実現している。
注:Eclipseはオープンソースに寄贈され、Eclipse.orgコミュニティでも開発が進められている。最近2.1がリリースされ話題となった。 |
J2EE開発の際にしばしば使用されるlomboz plug-inは非常に便利だが、EJBを作るうえではXdocletの知識がないとリモート・インターフェイスやホーム・インターフェイスの作成もままならない。さらに、RDBMS中のレコードとCMPのオブジェクトのマッピングも、深い階層に潜むXMLファイルを編集してやっと完成となるなど、いくらかの知識が必要となる。WSADでは、そうした余計な知識や労力を必要とすることなくEJBを対話形式で作成できる。しかし、残念なことにLinux用の評価版WSADは公開されていない。
編注:WebSphere Application Server, V5.0については、Java
Solutionフォーラムの 製品紹介:WebSphere Application Server V5 でより詳しく解説している。 |
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