プロダクト・レビュー・スペシャル

大量導入向け低価格1Uサーバ
「コンパック ProLiant DL320」

2.マザーボードを詳しく観察する

デジタルアドバンテージ
2001/04/11

 規格統一と低価格化により、最近のデスクトップPCのマザーボードはどれも似たり寄ったりで画一的になってしまったが、サーバのマザーボードには、製品ごとの特色が見られる。ProLiant DL320の場合、たとえばマザーボードのフォーム・ファクタは独自のようだ。また、ディスク・インターフェイス用に専用ドータ・カードを装着できるよう設計されている。DIMMソケットも、ケースの高さを1Uサイズに抑えるための工夫がなされている。拡張カードは、写真のPCIスロットにライザー・カードを差して、そこに横差しすることになる。チップセットは、Pentium III搭載サーバで採用が多いServerWorks製のServerSet III LE(製品情報)だ。

本機のマザーボード (拡大写真:112Kbytes
撮影のため、拡張スロットのライザー・カードやディスク・インターフェイスのドータ・カードなどは取り外してある。フォーム・ファクタは独自のようだ。
  プロセッサ
Socket 370にPentium IIIが装着されている。ZIFソケットなので、プロセッサの交換は可能だ。
  チップセット(サウスブリッジ
サーバ用として定評のある旧ServerWorks(現Broadcom)製のServerSet III LEというチップセットを採用している。64bit PCIをサポートするなどデスクトップPCとは異なる特徴を持つ。とセットで利用される。こちらは主にI/Oを担当する。
  チップセット(ノースブリッジ
とセットで利用されるチップ。こちらは主にプロセッサやメモリとのデータのやり取りを担当する。
  スーパーI/Oチップ
シリアル・ポートやフロッピー・インターフェイスなど、PCの基本的なインターフェイスを統合したチップ。古くからスーパーI/Oチップのメーカーとして知られるNational Semiconductor製である。
  CD-ROM/フロッピー・インターフェイス・ケーブル
後述するCD-ROM/フロッピー一体型ドライブ・ユニットと接続されるインターフェイス・ケーブル。コネクタやケーブルは独自仕様だが、電気的特性やプロトコルは一般的なPCと同等である。
  グラフィックス
ATI Technologies製のRage XLというグラフィックス・アクセラレータを採用している。PCサーバでの採用が多いチップで、最大1280×1024ドット/1677万色の表示が可能など、サーバ用途には十分な機能を備えている。
  ドータ・カード用コネクタ
ディスク・インターフェイス用のドータ・カードを装着するコネクタ。詳細は後述。
  イーサネット・インターフェイス
2組の10BASE-T100BASE-TX両用ポートを搭載しいる。詳細は後述。
  メモリ・ソケット
メイン・メモリは最大2Gbytesまで実装できる。詳細は後述。
  PCIライザー・カード用スロット
64bit/33MHz PCIに対応する。詳細は後述。

メモリ・ソケット − 1Uサイズに抑えるための工夫あり

メモリ・ソケット (拡大写真:68.4Kbytes
メモリ・モジュールDIMM)を最大4枚まで装着できる。ソケットの向きが傾いているのは、厚さ44.4mmのケースに背の高いPCサーバ用DIMMを装着するためである。DIMM1枚あたりの最大容量は512Mbytesなので、利用可能なメイン・メモリは最大2Gbytesだ。DIMMの増設は1枚単位で可能だ。
 
メモリ・モジュール
評価機に装着されていたのは、このPC133規格に合致したRegisteredタイプのSDRAM DIMMである。一般的なデスクトップPC用のUnbuffered DIMMに比べると、Registered DIMMはより多くのメモリ・チップを搭載可能で、1枚あたりの記憶容量を大きくできるという特徴がある。そのため、大容量のメモリを搭載する必要があるPCサーバやワークステーションなどでは、Registered DIMMを採用している場合が多い。
  DIMMのスペックを示すシール
このDIMMの概要を記しているシール。「M」のロゴはMicron Technology製を表す。また記憶容量は「128MB」つまり128Mbytesであるほか、「PC133」や「ECC」対応であることも読みとれる。
  Registered DIMM特有のチップ
Registered DIMMでは、これらのチップでいったんチップセットからの電気信号を受け取り、メモリ・チップに分配している。これが多数のメモリ・チップを搭載できる仕掛けの1つだ。ただ、これらのチップと多数のメモリ・チップを実装する面積が必要なため、Registered DIMMはUnbuffered DIMMより背が高めになりやすい(このせいもあり、メモリ・ソケットは傾けられて実装されている)。

イーサネット − 2系統のインターフェイスでフォールト・トレランスなどをサポート

2組のイーサネット・インターフェイス
このように、同じパーツからなる2組のイーサネット・インターフェイス回路()が実装されており、コネクタものように2つ装備されているのが分かる。2組のインターフェイスは独立しており、ルータのような用途もカバーするが、特徴的なのは専用ドライバとの組み合わせで、フォールト・トレランスとロード・バランシングも実現できる点だ。つまり、片方のインターフェイスに障害が生じても、もう一方が代わりに働くことでサービス停止を防げるし、両方稼働することで転送レートを倍増させることも可能だ(ただし性能向上には、対応するスイッチング・ハブとの連動などが必要)。イーサネット・コントローラはIntel 82559というチップで、ラックマウント型IAサーバでは採用例が多い。10BASE-Tと100BASE-TX、および半二重全二重それぞれに対応しており、自動切り替えもサポートしている。

ハードディスク・インターフェイス − 交換可能なドータ・カードで実装

 評価したProLiant DL320はIDEハードディスク搭載モデルだが、コンパックは同じProLiant DL320でSCSIハードディスク搭載モデルもラインアップしている。そのためなのか、ハードディスク・インターフェイスはドータ・カード上に実装されている。

マザーボード上のIDEインターフェイス・カード (拡大写真:70Kbytes
マザーボードの中央にあるこのカードは、1つのコネクタでマザーボードと接続されている。SCSIモデルには、このIDEカードの代わりに1チャネルのWide Ultra2 SCSIカードが装着される。わざわざディスク・インターフェイスがマザーボード直付けではなくカードに実装されている理由の1つは、IDEとSCSIの2モデルを一種類のマザーボードでカバーするためだろう。両方のインターフェイスをマザーボードに直接組み込むのは、コストの上昇を招くからだ(とコンパックは判断したということだろう)。PCIカードではなく専用カードなのは、拡張性確保のため、標準状態で最低1本のPCIスロットを空けておく必要があるからだろう。
 
取り外したIDEインターフェイス・カード
カード上にはIDEコネクタが2つ、つまりプライマリとセカンダリの2系統のIDEインターフェイスがあることが分かる。これらはハードディスク専用で、内蔵の2台のハードディスクがそれぞれ別々のインターフェイスに接続される。IDEの場合、1本のケーブルに2台のハードディスクを接続すると性能が下がりやすいため、このように設計されたのだろう。なおCD-ROMドライブ用のIDEインターフェイスはマザーボード上に実装されている。
 
IDEコントローラ・チップ
古くからIDEコントローラのメーカーとして知られるCMD Technology製のPCI-649(製品情報)が用いられている。Ultra ATA/100対応のIDEインターフェイスを2つ持っており、ホスト側とはPCIバスで接続される。つまり、このIDEカードの形状は独自のものだが、電気的なインターフェイスはPCI互換のはずだ。

  関連記事(PC Insider内)
資料
1Uラックマウント型IAサーバ:「コンパックコンピュータ ProLiant DL320
IT Market Trend:第2回 拡大するラックマウント型サーバ市場
スケーラビリティの高い1Uサーバ「PowerEdge 1550」
 
  関連リンク
ProLiant DL320の製品情報
 


 INDEX

  [ プロダクト・レビュー・スペシャル ]
   大量導入向け低価格1Uサーバ「コンパック ProLiant DL320」
    1.1Uサーバの内部をのぞく
  2.マザーボードを詳しく観察する
    3.ハードウェアの拡張性を探る
     コラム:リモート管理用カード「リモートInsightボードLights-Out Edition」
 
「PC Insiderの特集」


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