現場デビューのお供はビジュアル多用の報告書システム開発プロジェクトの現場から(17)(3/3 ページ)

» 2008年08月13日 00時00分 公開
[檜山亜紗美アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ]
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ニックネーム「カミソリ」の成長

 ところで。私は思ったことをストレートに伝える性分で、相手からも率直な言葉が欲しいと思っています。

 新人研修時代のニックネームは「カミソリ」。歯に衣着せぬものいいをする、の意。同期にはさらに上をいく「かなづち」も。議論の余地なし! と完全理論武装だった(もちろん、「そんな2人も次第に円くなっている」[同僚談])。

 そんな私が入社したアクセンチュアグループは、「大枠での指示出し」をするカルチャー。

 「何かあれば自分がカバーするから」。そんな頼もしい先輩方がいてこその素晴らしいカルチャーですが、当時の「カミソリ」性分からすると、とてもソワソワ心配になるものでした。

上司 「こんな感じでやってみて」

 「はい!」

と、見た目さわやかなやりとり。

 けれど、「感じ」って何? というのが本音でした。

 もちろんこの後、上司に付きまとい、どういうことか聞き込むことになりますが、基本は、「これでいいんだ」と自分を納得させられるまで調べて、ちゃんと上司に説明できるように考える、そんな感じでした。

 いま思えば、詳細な指示をもらい、ワンステップごとに確認してもらうよりも、「自力」「底力」が付いたわけなので、結局はあの「ソワソワ」に成長させてもらったということになります。

 が、当時はまだ「疑問符を自己消化できないカミソリ」だった私。中国メンバーの率直な意見や指摘に大いに助けられたことは、いうまでもありません。

「オフショア向けの工夫」まとめ

 さて、こうして見えてきた「オフショア向けの工夫」は、以下のようなものでした。

  • メッセージがつかめる資料構成

 テスト結果よりも、「つまりこうしてほしいのです」と、相手の取るべきアクションを前面に出す。

 画像・吹き出し:多め、スクロール:少なめ。

  • 一文は短く

 個条書きにする。

 文章でなくとも意味の通じる個所は、単語と記号で表現する。

 極端な例:○ [condition] A: true
        × I tested on the conditions that A is true.

 個人の「好み」ではないか、骨組みや仕組みからは遠い、メモのようなものではないかと思われるかもしれません。しかし、そんなことは関係ありませんでした。当時は、自分に合ったやり方が分かり、仕事が進みだしたことだけで満足でした。

チーム内外に共有された「オフショア向けの工夫」

 こうして輪郭が見えてきた工夫がその後どうなったのかを、最後にお話ししましょう。

 時は流れ、2年後。私にオフショア協業の機会が再び訪れました。

 すでにオフショア経験を積んでいた私の成果物(ポリシー)は、初速から周囲に差をつけ、次第に存在感を増していきました。そしてオフショアメンバーからの評判が評判を呼び、「我流の工夫」は、Tipsとしてチーム内外に共有され、活用され始めたのです。

 「終わり良ければすべて良し」。かつての武骨な資料、中国メンバーの英語ラッシュ(怒り気味)、すべてが前向きな思い出に変わった瞬間でした。

 「自分が誰かのまねをするか、誰かが自分のまねをするか」。どちらが自信を与えてくれるかはいうまでもありません。この小さな出来事で、私は大いに勇気づけられました。どんな経験がいつ生きるかは分からないものです。

 さて、こうして新人(私)は、半年間テストチームで経験を積み、新天地「品質管理チーム」へと移っていきます。

 ここでも壁にぶつかる私ですが、そのお話は次回。キーワードは「疎外感」です。

筆者紹介

アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ

檜山亜紗美

1982年生まれ。東京理科大学理工学部経営工学科を卒業後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズに入社。Javaの大規模プロジェクトで開発から運用までを経験、現在はStrategic Delivery Office(社内組織)にて方法論の展開・定着化に取り組む。趣味は幹事(ノンジャンル)。主催から出欠係まで幅広くたしなむ。



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