ところで。私は思ったことをストレートに伝える性分で、相手からも率直な言葉が欲しいと思っています。
新人研修時代のニックネームは「カミソリ」。歯に衣着せぬものいいをする、の意。同期にはさらに上をいく「かなづち」も。議論の余地なし! と完全理論武装だった(もちろん、「そんな2人も次第に円くなっている」[同僚談])。
そんな私が入社したアクセンチュアグループは、「大枠での指示出し」をするカルチャー。
「何かあれば自分がカバーするから」。そんな頼もしい先輩方がいてこその素晴らしいカルチャーですが、当時の「カミソリ」性分からすると、とてもソワソワ心配になるものでした。
上司 「こんな感じでやってみて」
私 「はい!」
と、見た目さわやかなやりとり。
けれど、「感じ」って何? というのが本音でした。
もちろんこの後、上司に付きまとい、どういうことか聞き込むことになりますが、基本は、「これでいいんだ」と自分を納得させられるまで調べて、ちゃんと上司に説明できるように考える、そんな感じでした。
いま思えば、詳細な指示をもらい、ワンステップごとに確認してもらうよりも、「自力」「底力」が付いたわけなので、結局はあの「ソワソワ」に成長させてもらったということになります。
が、当時はまだ「疑問符を自己消化できないカミソリ」だった私。中国メンバーの率直な意見や指摘に大いに助けられたことは、いうまでもありません。
さて、こうして見えてきた「オフショア向けの工夫」は、以下のようなものでした。
テスト結果よりも、「つまりこうしてほしいのです」と、相手の取るべきアクションを前面に出す。
画像・吹き出し:多め、スクロール:少なめ。
個条書きにする。
文章でなくとも意味の通じる個所は、単語と記号で表現する。
極端な例:○ [condition] A: true
× I tested on the conditions that A is true.
個人の「好み」ではないか、骨組みや仕組みからは遠い、メモのようなものではないかと思われるかもしれません。しかし、そんなことは関係ありませんでした。当時は、自分に合ったやり方が分かり、仕事が進みだしたことだけで満足でした。
こうして輪郭が見えてきた工夫がその後どうなったのかを、最後にお話ししましょう。
時は流れ、2年後。私にオフショア協業の機会が再び訪れました。
すでにオフショア経験を積んでいた私の成果物(ポリシー)は、初速から周囲に差をつけ、次第に存在感を増していきました。そしてオフショアメンバーからの評判が評判を呼び、「我流の工夫」は、Tipsとしてチーム内外に共有され、活用され始めたのです。
「終わり良ければすべて良し」。かつての武骨な資料、中国メンバーの英語ラッシュ(怒り気味)、すべてが前向きな思い出に変わった瞬間でした。
「自分が誰かのまねをするか、誰かが自分のまねをするか」。どちらが自信を与えてくれるかはいうまでもありません。この小さな出来事で、私は大いに勇気づけられました。どんな経験がいつ生きるかは分からないものです。
さて、こうして新人(私)は、半年間テストチームで経験を積み、新天地「品質管理チーム」へと移っていきます。
ここでも壁にぶつかる私ですが、そのお話は次回。キーワードは「疎外感」です。
檜山亜紗美
1982年生まれ。東京理科大学理工学部経営工学科を卒業後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズに入社。Javaの大規模プロジェクトで開発から運用までを経験、現在はStrategic Delivery Office(社内組織)にて方法論の展開・定着化に取り組む。趣味は幹事(ノンジャンル)。主催から出欠係まで幅広くたしなむ。
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