今回はサーバ・クラスタの構築手順を解説する。仮想化環境を利用することで、1台のサーバでWindowsクラスタを構築する方法を紹介する。
第1回ではサーバ・クラスタの一般的な説明、およびMicrosoft Cluster Service(以下MSCS)の概要を紹介した。今回は、MSCSの詳細について説明し、実際にMSCSをインストールしてみる。なおインストールを手軽に試すことが可能なように、Microsoft Virtual Server 2005 R2を使用した仮想マシンを使って、Windows Server 2003によるMSCSを構築する。
MSCSのシステム要件としては、当然ながら各ノードはWindows Server がOSとして動作するため、最低限Windowsのシステム要件を満たす必要がある。なお、ここで説明する要件は最小システム要件ではなく、推奨システム要件を挙げている。最小システム要件に関しては、下記に示したマイクロソフトのホームページやホワイトペーパーなどを参照していただきたい。
MSCS固有のシステム要件としては、まずハードウェアの要件を満たす必要がある。基本的にはWindows Serverが実行できればよいが、安定稼働させるためにはMSCS動作の確認済みのハードウェアを用いる。特にMSCSはハードウェアに依存する部分が多く、運用では専用のハードウェアを用いる方が望ましい。MSCS動作確認済みのハードウェアはWindows Server CatalogのCluster Solutionで確認が可能だ。
準備が必要なハードウェア要件としては、すべてのノードで2枚以上のネットワーク・アダプタが必要である。1つはクライアント・アクセスのために使用し、もう1つはノード間のハート・ビート用に用意する。クライアント・アクセスのためのネットワークだけでもハート・ビートのやりとりは可能だが、障害の誤認識のもととなるため、専用に用意するのが一般的だ。また、その際にはクロス・ケーブルを使用してノード間を直接接続する。ハブなどを経由するとそこがSPOF(単一障害ポイント)となり得る可能性が増すからだ。次に各ノードにSCSIアダプタを用意する。なお、Windows Server 2008からはパラレルSCSIのサポートが行われなくなった。加えて1台以上のSCSI共有ディスク、またはSANなどのネットワーク共有ディスクが必要となる。
ネットワーク要件としては、2ノードでクラスタを構成する場合、3つのコンピュータ名と3つの静的なIPアドレスをあらかじめ決めておく。これは、2つの各ノードと管理者用の仮想サーバ用に使用する。次にActive Directoryドメインが必要であり、各ノードはドメインに参加している必要がある。さらにドメイン内では各ノードをメンバ・サーバとして登録するか、ドメイン・コントローラ(DC)とする場合はすべてのノードをドメイン・コントローラとして構築する必要がある。異なるサーバ・ロールでMSCSを構築することはできない。また、ドメイン・ユーザー・アカウントを用意する必要がある。このドメイン・ユーザー・アカウントはクラスタ・サービスのサービス・アカウントとして利用する。サービス起動の権限などが必要になるため、特に問題がない限り、各ノードのローカルAdministratorsグループへの登録を推奨する。
ハードウェア | 各ノードに2枚以上のネットワーク・アダプタ | |
・クライアント・アクセス用のネットワーク・アダプタ ・ハート・ビート用ネットワーク・アダプタ各ノードに1つのSCSI アダプタ ※Windows Server 2008ではパラレルSCSIはサポートされない |
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1 台以上の共有 ハードディスク | ||
ネットワーク | 一意のNetBIOSコンピュータ名:3つ以上 ・各ノード用 ・仮想サーバ用 |
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3つ以上の静的IP アドレス ・各ノードのパブリック用ネットワーク・アダプタに1つずつ ・各ノードのプライベート用ネットワーク・アダプタに1つずつ ・仮想サーバ用に1つ |
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Active Directory ドメイン | ||
すべてのクラスタ構成ノードを同一のドメイン・ロールとして構成 | ||
クラスタ・サービス用ドメイン・ユーザー・アカウント | ||
MSCSのシステム要件 |
あとは、ノード上で実行するサービスやアプリケーションに必要なリソースに合わせてプロセッサやメモリ搭載量などをプランニングする。このあたりは、MSCSを意識する必要はない。
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