愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶプロジェクトはなぜ失敗するのか(最終回)

皮肉なことに、プロジェクトと失敗とは相性がよい。納期どおりにできなかった、要求どおりにできないことが多い、機能を削減することが多いなど、もともとの目的、スコープから、後退したプロジェクトの経験を持つITエンジニアは多いに違いない。なぜ目的どおりにいかないのか。どこを改善したらいいかを本連載で明らかにし、処方せんを示していきたい。

» 2009年02月03日 00時00分 公開
[落合和雄@IT]

プロジェクトの失敗を覆い隠そうとする経営者

 あるSIベンダで大規模なプロジェクトが失敗し、数十億円の赤字を計上した。開発当初、そのプロジェクトは成功すれば大きな利益がもたらされるという良いうわさが流れていたが、しばらくして「プロジェクトがうまくいっていない」という悪いうわさが流れるようになった。このころから、プロジェクトメンバーの変更が頻繁になされるようになり、変更になったメンバーの多くは関係会社へ出向させられていった。最終的に、大きな損失を残してプロジェクトは終結したのだが、プロジェクト終結時には当初の関係者はほとんど残っていなかった。経営トップの間では、このプロジェクトに関する反省が行われたのかもしれないが、少なくとも担当・部門の中では、このプロジェクトの総括がなされた形跡はなかった。

過去の他人の失敗から学ぶことの重要性

 これは第二次大戦で日本軍が取った行動と非常に似ている。当時の日本軍は、ある作戦が失敗すると、その原因などを分析するのではなく、失敗を覆い隠すことをしていた。作戦を立てた指揮官は、いつのまにか後方部隊などに配置転換されていた。このような行動は非常にもったいない話である。ドイツ初代宰相のビスマルクは、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と語ったそうだが、愚者は自分で失敗して初めて失敗の原因に気付き、その後同じ失敗を繰り返さないようになるが、賢者は過去の他人の失敗から学び同じ失敗をしないようにする。プロジェクトも同じである。できれば、他社の失敗から学んで同じ失敗をしないようにするのが望ましい。だが、実際には他社の情報を正確に入手できることは少ないので、これは少し難しいかもしれない。それであれば、せめて自社のほかのプロジェクトの失敗から学ぶぐらいは、当然行うべきである。これを行わず、失敗を覆い隠すような行為をするから、同じ失敗を何度も繰り返してしまうのだ。

完了報告書の重要性

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