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» 2009年04月14日 00時00分 公開

育成のプロが伝授。今年の新人との付き合い方特集:「ハチロク世代」がやってくる(2)(2/2 ページ)

[唐沢正和,@IT]
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新人を上手に育てるコツ

 ITの知識レベルが高く、仲間内での協調性がとれる一方で、上下関係のコミュニケーションが苦手な新人たち。現場の教育担当者は、どのように付き合っていけばよいのだろうか。

 小林氏は「説明し、納得してもらうのが重要」と語る。何か指導する際に、なぜそれが彼らにとって必要なのか、その意味を説明する。一方的に「こうしろ」では動かないのだ。自分のためになることであると納得すれば、意欲的に取り組むようになるという。

栗林陽子氏「研修の段階で、あえて失敗を経験させましょう」 栗林陽子氏「研修の段階で、あえて失敗を経験させましょう」

 また、吉田氏は「自分で考えて仕事をさせるという突き放した教育は重要ですが、それを最初から行うのは、いまの新人には合っていません」と語る。どんな業務であれ、最初はある程度「レール」を敷いておき、その中で経験を積ませることが第一であると吉田氏は説明する。「その業務が軌道に乗ってきたら、次のステップとして新たな課題を与え、徐々に自分で考える業務を増やしていくといい」というのが吉田氏のアドバイスだ。

 2008年度から新人研修を担当し始めたという栗林陽子氏は、「研修の段階で、あえて失敗を経験させる」ことを勧める。栗林氏のやり方は、ただ失敗させるのではなく、いくつか選択肢を与えるところから始める。「失敗した場合、なぜそのやり方を選んだのか、失敗した理由は何か、どこにどんな影響を与えたのかを考えさせます。失敗から学べる仕組みをつくっているのです」(栗林氏)

プライベートでは、どこまで接するべきか?

 新人の教育担当者にとっては、教育面での付き合いだけでなく、普段からの接し方にも頭を悩ませるところだ。新人との距離感はどう取ればよいのだろう。

 小林氏は、「いきなりプライベートにまで介入されることは、嫌がるでしょうね」と語る。例えば飲みに誘う場合、初めは2人きりではなく、まずはグループで飲みに行き、ある程度の信頼関係をつくってからの方がよいだろう、とのことだ。では、信頼関係を築くコツは?小林氏は「まずは自分の方から心を開くことが大切だと思いますよ」と断言。ごもっともである。

 矢島氏は、プライベートに深入りし過ぎることに関して注意を促す。あまり仲良くし過ぎると、頼られ過ぎてしまう可能性があるためだという。上司や先輩の立場としては、グループでコミュニケーションを深める場をつくる方がよいようだ。

 新人同士で飲みに行くシチュエーションづくりも大切だ。「上司や先輩のいないところで、新人のストレスを発散させてあげてください」と矢島氏は語る。確かに思い返せば、自分たちも新人のころは、新人同士で会社の愚痴を語り合っていたのではないだろうか。

 自分から心を開いて信頼を得つつも、友達付き合いのような関係にはならないように接する。これが、講師陣の共通見解のようだ。

新人のモチベーションをコントロールする

 「最近の新人はモチベーションが長続きしない」「入社から3年たったら転職してしまう」などといった声を耳にしたことのある方は多いのではないだろうか。せっかく新人から育ててきた人材が短期間で職場を離れてしまうのは、その部署だけでなく、会社全体にとっても痛手となる。

 そうならないためには、新人のモチベーションがどんな状態にあるのかを把握し、教育担当者が適切にコミュニケーションを取っていく必要があるだろう。例えば、モチベーションが低めの新人には、なるべく褒めてモチベーションを上げる工夫をする。逆にモチベーションが高い新人には、あえて厳しく指導する。タイプに合わせてうまくモチベーションをコントロールしていくことが求められる。

 「褒める」ことは、新人のモチベーションを高めるためのポイントになると矢島氏は指摘する。「新人は、指導されたり、怒られたりすることの方が圧倒的に多い。だからこそ、タイミングよく褒めてあげると効果的」とのことだ。反対に、「しかる」ことをポイントに挙げるのは栗林氏。「新人が失敗したときには、頭ごなしに怒鳴るのではなく、後から感謝されるようなしかり方をしてほしい。しかるという行為には、怒るとは違う、特別な温かい意味が込められていると思います」(栗林氏)

1人で育てるのではなく、チームで育てるべし

 小林氏は新人教育時のポイントとして、「自分の常識を一度、捨てましょう」と語る。「教育担当者自身の意識改革が必要。自分の常識がそのまま新人に通じる、という固定観念は一度捨てて、できなくて当たり前という新人の立場になって接してみてはどうか」とアドバイスする。

 教育担当者が抱え込み過ぎることは避けるべきである、と注意するのは吉田氏。職場全体で新人を育てる環境をつくることの重要性を指摘する。「職場全体で共通意識を持ってバックアップしていけば、新人のモチベーションが低下することはないはず」という。

 教育担当者はすべて自分1人でなんとかしようと考えるのではなく、うまく周囲の人間を巻き込んでいく姿勢が求められる。それが、新人にとっても、教育担当者にとっても、部署にとっても、会社にとっても有益なのである。

 いま、まさに新人と向き合っている教育担当者は、「最近の若い者は……」といってあきらめるのではなく、新人の目線に一歩でも近づいて、育成指導に取り組んでみてはいかがだろうか。


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