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» 2009年08月28日 00時00分 公開

ヒアリング現場で使えるコミュニケーション力誰にでも分かるSEのための文章術(2)(2/2 ページ)

[谷口功,@IT]
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ヒアリング現場での7つのポイント

 実際にコミュニケーションする段階に来たら、以下の7点に気をつけましょう。

(1)まず全体像を説明する

 ヒアリングを始めるに当たって、その目的や趣旨、大まかな流れ、質問項目を最初に相手に説明します。これらのことが相手の頭に入っているのといないのとでは、コミュニケーションの質が大きく変わってきます。

 全体像の情報は、事前に文書で通知しておきますが、多忙などの理由で相手が目を通していないことも考えられるので、あらためて説明するようにします。

(2)相手の領域で話をする

 なるべく相手の領域の言葉を使って対話を進めます。

  • 経営陣:経営やビジネスについての言葉を使う
  • 業務部門の管理職:業務部門で扱う業務に関連する言葉(経理部門であれば経理や会計の分野の用語、営業部門であれば営業用語など)を使う
  • 実際にシステムを利用するチームリーダー:業務の現場で使われている言葉(業務遂行で一般的に使われている言葉)を使う
  • 自分の分野であるIT、コンピュータ、通信・ネットワークなどの専門用語を駆使するのは避けるようにする

(3)相手の話をしっかり聞く

 コミュニケーションの基本は、相手の話をしっかりと聞くことです。話し合いでも討論でもなく、相手から情報を引き出すのですから、特に聞くことが重要になります。

a.話の腰を折らない

 相手が、ひとまとまりの話題を話し終わるまで、質問や意見を差し挟まないで、しっかりと聞きます。

b.聞いていることを示す

 相手が話しているときは、真剣に聞いていることを相手に認識してもらうことが重要です。黙って聞いているのではなく、所々でうなずいたり相づちを打ったりして、聞いていることを態度に表します。

c.内容を確認する

 相手がひとまとまりの話題を話し終えたら、その時点で内容を確認しておきます。「わたしは、いまの話をこのようなものであると理解した」ということを、相手の話を要約して自分の言葉で伝えます。こうすれば、相手は自分の話をきちんと聞いてもらっていると確認できます。また、要約の内容に誤りがあれば相手から訂正があるはずで、それにより正しい情報を手に入れることができます。


d.追加の質問をする

 内容確認の時点で、相手の話に対して感じた疑問点への質問、相手の話だけでは不足していたり欠けていたりすると考えられる情報を引き出すための質問をします。

(4)相手が主役であると心得る

 自分の都合や論理、考え方を押しつけない、押し通さないようにします。相手の話を聞く場であることを認識して、対話を進めなければなりません。相手の話や考え方に対する意見、批判、反論などは厳禁です。こうしたことを行った途端、きちんとしたコミュニケーションが取れなくなってしまいます。

(5)対話をコントロールする

 顧客とのコミュニケーションでは、SEが対話をコントロールします。

a.話の区切りをつける

 ひとまとまりの話題を話し終えた相手が、さらに続けて次の話題に移ろうとするのであれば、次の話題に移る前に一区切りつけるようにします。ひとまとまりの話題が終わったことを敏感に察知し、相手に不快感を抱かせないようにして(例:「申し訳ありませんが、ここで少し確認させてください」などの言葉を差し挟む)、自分の方から一区切りつけさせます。そして、そこまでの要約を伝えたり質問したりします。

b.話がそれたら、軌道に戻す

 相手の話が、質問の趣旨や対話のテーマなどからずれていきそうになったら、元に引き戻します。相手に不快感を抱かせないようにして(例:「なるほど、そういうことですか。ところで、○○についてですが……」などの言葉を差し挟む)、元の軌道に戻します。

c.テーマや質問の切り替えを行う

 相手が、考えが整理できていないために話に詰まったり、知らなかったために質問に答えられなかったりした場合は、素早く別の質問に移り、別のテーマや話題に切り替えます。このときも、相手に不快感を抱かせない言葉遣いで次の地点に誘導します。

 このように対話をコントロールできるのは、事前にヒアリングの目的と趣旨、展開、質問項目、質問の順番を明確にしてあるからです。これらに基づいてコントロールすればよいのです。事前準備が明確になっていないと、コントロールしようにもそのよりどころがなく、成り行き任せに進行するしかなくなってしまいます。

(6)対話中はメモを取る

 ヒアリングの最中は、必ずメモを取ります。まず、相手が話した内容を簡潔に書き付けます。また、相手の話の中で疑問に感じたことを、その都度メモします。単に疑問に感じただけでは、時間がたてば忘れてしまい、後で質問できません。質問をして相手の話を聞いて理解し、話の内容のメモを取りながら疑問点を書き記すということを1人で遂行するのが難しいのであれば、2人でヒアリングを行います。例えば1人が質問し、話の内容を理解しながら疑問点を書き付け、もう1人が話を理解しながら、その内容をメモに残します。

(7)相手を不快にさせない態度でヒアリングに臨む

 コミュニケーションは相手がいて成り立つものです。相手の協力、相手からの信頼感、相手が前向きに臨んでくれることが質の高いコミュニケーションの基礎です。そのためには、社会人・ビジネスパーソンとしての常識をわきまえた、相手を不快にさせない言動・態度でヒアリングを行わなければなりません。

 相手を不快にさせない言動・態度は、いすに正しく腰を掛けて、相手を見て話し、聞き、はっきりとした聞き取りやすい発音で話すことが基本です。一方、次のような言動や態度は相手を不快にさせます。

  • 体をずらしていすに座る
  • 腕組みして話を聞く
  • テーブルにひじをついたり、ほおづえをついたりして話を聞く
  • うつむいたまま話し、聞く
  • 相手を見下すような言葉遣いで話す
  • ボソボソとした聞き取りにくい発音で話す

 対話にのめりこむと、無意識のうちに上記のような言動や態度を取ってしまいがちです。自分の言動や態度に気を配りながら対話を進めていくようにすべきでしょう。

 また、ヒアリングは、相手に時間を取ってもらっているという考え方で臨むことが重要です。「忙しい中で時間を割いてもらっている」という意識があれば、言動や態度はおのずと決まってくるはずです。

著者紹介

谷口 功 (たにぐち いさお)

フリーランスのライター、翻訳家。企業にて、ファクシミリ通信網を使ったデータ通信システム、人工知能、日本語処理関連のソフトウェア開発、マニュアルの執筆などに関わる。退職後、コンピュータ、情報処理、通信関連の書籍の執筆、翻訳、各種マニュアルや各種教材の執筆に携わる。また、通信、コンピュータ関連のメールマガジンの記事、各種雑誌においてインターネット、パソコン関連の記事やコラムなども執筆。コンピュータや通信に関連する漫画の原作を執筆することもある。 主な著作は、『SEのための 図解の技術、文章の技術』(技術評論社)、『ソフト契約と見積りの基本がよ〜くわかる本』『よくわかる最新 通信の基本と仕組み』(秀和システム)、『図解 通信プロトコルのことがわかる本』『入門ビジュアルテクノロジー 通信プロトコルのしくみ』(日本実業出版社)、『図解 ネットワークセキュリティ』『マスタリングTCP/IP IPsec編』[共著](オーム社)など。



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