この感覚は、ジグソーパズルを組み立てる際に抱くものと似ています。
ジグソーパズルを組み立てる前は、最終的な完成図と、山積みになったピースだけが目の前に存在します。完成図を見ながら「組み立ててみたいな?」という気持ちは抱きますが、目の前のピースだけでは実際に組み立てるシーンがイメージできないばかりか、ピースがたくさんあればあるほど「本当にできるのか」「いつ終わるのか」など、モヤモヤした不安感を抱き、なかなか最初のピースを置く気になれません。
こんなとき、できることは何でしょうか。決心して最初のピースを置き、次のピースを探し、並べ始めることぐらいです。そうです、「ただ、やる」のです。
何枚かのピースを並べていくと、最初はまったく意味が分からなかったピースに、部分的な形やつながりが見えてきます。少しずつ進んでいくと、「ジグソーパズルを完成させたい!」という気持ちが内側から生まれてきます。進めば進むほどモヤモヤ感はなくなっていき、完成に向かうスピードも加速がついてきます。
冒頭で、Twitterでコメントをくれた方のお話をしました。いまでこそ、やりたいことが見えてきて、仕事にワクワク感を抱いている著者ですが、最初はかなり曖昧で、どうしたらいいのかまったく分かりませんでした。
そのころの記録は、「ITmedia オルタナティブ・ブログ」に書いてあります。頭の中で「こんなことやってみたいな?」と思ったことを、「どうなるか分からないけど、ただ書き出してみよう」と記録したものです。
『最近、作りたいと思っている「新たな集い」』というブログエントリには、こんなことが書かれています。
「新たな集い」のようなものを作りたいな〜と思っています。
それはまだ、全然具体的ではなくて、どうすればいいのか全然分からなくて、到底言葉ではうまく説明できないのですけれど、けれども、社会の閉塞感を取り除いたり、自分らしく生きたり、仕事を楽しんだり、新しいビジネスが生まれたり、心が癒されたり、悩みを解決できたり・・・そんなような、会社を超えた「人の集まり」、いや、「場」なのかな。コミュニティというのだろうか。何か、そういったものが今、必要なんじゃないかと思うのです。
読めば分かるとおり、このときの考えは非常に抽象的で、着地点がどこか分からないまま、何をしたいのかすら自分自身で分かっておらず、モヤモヤしています。法人を作ろうなどとは考えておらず、「ただ、なんとなくやってみたいことがある……」というイメージです。
その後も、頭の中でモヤモヤしていることを図にしたり、言葉にしたりしていきました。なぜなら当時、筆者にできることといえば、ブログを書くことぐらいしかなかったからです。「ただ、やる」ということを続けました。
書き出すと、自分の気持ちがはっきりしてきます。途中で発散したり、混乱したりしながら、コンセプトが生まれ、やがて法人を作ることを考え、次第に収束していき、やりたいことが具体的に見えてきました。
自分の気持ちを言葉にしたおかげで、人への説明も上手になりましたし、意見に賛同してくださる方も現れました。現在は、少しずつ事業化に向けて動き出しているところです。
「やりたいことがある」という人の話を聞くと、「やりたいことがはっきりしていてうらやましい」と思われるかもしれません。ですが、筆者のやりたいことが明確になったのは、このようなモヤモヤした時期を経てきたからなのです。全然、特別なことではないでしょう?
モヤモヤ感が晴れ、やりたいことが見えてきたときの瞬間は、まるで、雲で覆われている空に、少しずつ光が差し込んできて、次第に青空に変わっていくようなワクワクした気持ちを抱きました。
「やりたいことが常に明確な人」は、それほど多くありません。ジグソーパズルがそうであるように、最初のうちは「やってみたいな?」と思うぐらいで、その内容はぼんやりとしていて、体系的ではないのが当然なのです。
何もやりたいことがなかったり、現状に満足している方の場合、モヤモヤ悩んだりはしません。「やりたいことがモヤモヤしていて悩んでいる」のは、やりたいことに気付き始めている証拠です。現状に満足しておらず、何となくやりたいと思うことがあるからこそ、モヤモヤしているのです。
ポジティブな気持ちであれ、ネガティブな気持ちであれ、モヤモヤしている感覚は、「やりたいことをはっきりさせたい」という、もう1人の自分からの合図なのです。悪いことではないので安心してください。そのモヤモヤ感を大切にしてください。
モヤモヤした気持ちをそのままにして「やりたいことがあったらいいな?」とぼんやり考えていても、何も変わりません。そういうときこそ、モヤモヤした気持ちに向き合い、ノートやブログに書き出したり、関連する本を読んだりするなど、まず、いまできることから手を動かし始めてみてください。次第にピースがつながり始め、あなたを「やりたいこと」へ導いてくれることでしょう。
竹内義晴
特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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