トラブル時、ユーザーが本当に知りたい情報は何か仕事を楽しめ! エンジニアの不死身力(18)(1/2 ページ)

あなたはエンジニアの仕事を楽しんでいますか? この連載では、仕事を「つらいもの」から「楽しいもの」に変えるためのヒントを考えていきます。

» 2011年11月25日 00時00分 公開
[竹内義晴特定非営利活動法人しごとのみらい]

不死身力が試されるトラブル対応

 前回『「潜在バグはある」という意識でトラブル解決に臨む』では、システムトラブルへの意識の持ち方と、プロジェクトメンバー間の関わり方についてお知らせしました。

 前回は開発チーム内向けの記事でしたが、実際のトラブルでは、開発側だけではなくユーザー側にも影響を与えます。トラブル時のユーザー対応として最も重要なスキルの1つが、「状況をうまく説明できる力」です。トラブルは業務に影響を与える分、ユーザーの不安をあおらないための工夫が必要なのです。

 今回は、「トラブル発生時のユーザーへの伝え方」について解説します。

トラブルが発生したとき、ユーザーが知りたい情報は何か

 トラブルが起きたとき、私たちがもっとも知りたい情報は何でしょうか。

 例えば、乗っている電車が急に止まり、動かなくなったとします。このような状況下ではまず、「何が起きたのか」という、トラブルの原因を知りたくなります。ですが、最終的に知りたいのは、「すぐに動き出すのか」「このまま待っていれば大丈夫なのか」という“安心・安全に関わる情報”です。

 システムトラブルでも同様です。ユーザーはトラブルの原因や影響範囲も知りたいと思うかもしれませんが、最終的に知りたいのは「このまま仕事をしていて大丈夫なのか」という“安心・安全に関わる情報”だと言えます。

ユーザーの不安をあおる情報になっていないか

 しかし、トラブル対応に直面しているエンジニアは、それを解決しなくてはならないという仕事柄、「何が問題なのか」に目を向けています。その結果、「○○という問題が発生している」「どこまで大丈夫なのか分からない」など、ユーザーの不安を煽るような情報の伝え方をしてしまいがちです。

 ここで、私の体験談をお話しましょう。

 私は以前、24時間365日稼働する生産管理システム開発に携わっていました。不具合があると生産が止まってしまうため、絶対に止めてはならないシステムでした。

 しかし、ある日トラブルが発生しました。直接生産に影響するトラブルではありませんでしたが、まず現状をユーザーに知らせようと考え、関係者に向けて次のようなメールを送りました。

システムトラブルが発生しました。ただいま原因を調査中です。問題が起きているのは、次の機能です。

  • □□機能
  • ××機能

 その他の機能には問題ありません。ご迷惑をお掛けして誠に申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。


 すると、ユーザーからこのような指摘を受けました。

私たちユーザーからすると、最初にできないことを列挙されると、とても不安な気持ちを抱きます。現場はできるだけ生産を続けたいので、最初にお知らせいただきたいのは、「このまま生産を続けていて大丈夫なのか」という情報です。

 ですから、「何ができないのか」よりも、「どこまでなら安心して使えるのか」を最初に知らせてください。


 

大切なのは、「ユーザーが安心できる情報を伝えること」

 「まず、問題を知らせることが大切だ」と思っていた私にとって、この指摘は目からうろこでした。良かれと思って知らせた情報が、ユーザーの不安をあおってしまっていたのです。

 自分の立場に置き換えてみると、確かにうなずけました。例えば、家族が交通事故にあったときにまず知りたいのは、「何が悪いのか」という原因よりも「大丈夫なのか」です。なぜなら、「とにかくホッとしたい」からです。容態はその後にゆっくり聞けばいい……。

 そこで、メールの内容を変えました。

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