トラブル時、ユーザーが本当に知りたい情報は何か仕事を楽しめ! エンジニアの不死身力(18)(2/2 ページ)

» 2011年11月25日 00時00分 公開
[竹内義晴特定非営利活動法人しごとのみらい]
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トラブル=より望ましいシステムに変わる機会

 具体的なメール内容の変更は、下記のようなものでした。

Before

  • まず、影響がある機能を伝える
  • 次に、その他は影響がないことを伝える

After

  • まず、影響がない機能を明示する
  • 次に、影響がある機能を伝える

 内容はそれほど変わっていません。変えたのは、順番です。まず、「どこまでなら安心して使えるのか」を伝える文面に変えました。

システムトラブルが発生しました。ただいま原因を調査中です。影響は一部の機能の限定されており、多くの機能は通常どおりお使いいただけます。

 これらの機能には、特に問題はございません。

  • ○○機能
  • △△機能

 問題が発生し、利用できないのは次の機能です。

  • □□機能
  • ××機能

 状況が分かりましたらあらためてご連絡いたします。ご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。


 このように文面を変えることで、その後、ユーザーから同様の指摘を受けることはなくなりました。

 この経験は、私に「何が問題なのか」から「どこまでなら大丈夫なのか」という影響範囲を把握するスキル、「ユーザーが本当に必要な情報は何か」と、開発者視点からユーザー視点へ切り替えるスキルを与えてくれました。

 問題点ばかりに目を向けていると、気持ちが焦って志気も下がりがちです。ですが、問題が“起きていない”点を最初に明確にすれば、安心感を得られます。また同時に、大丈夫な点を自信を持ってユーザーに伝えられるので、志気の低下を防ぐことにも役立ちました。


 トラブルが発生した際、良かれと思って伝えた情報が、逆にユーザーの不安を誘うことがあります。時には、ユーザーから非難されることを恐れるがあまり、情報を表に出さない選択をしてしまいたくなることもあるでしょう。

 ユーザーが本当に望んでいるのは、不安ではなく、非難することでもありません。「安心できる情報」が欲しいのです。エンジニアとしては、やはり「ユーザーが安心できる情報」を提供する必要があるのではないでしょうか。

著者紹介

竹内義晴

特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分がつらかった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場がつくれるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。ITmedia オルタナティブ・ブログの「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織づくりやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。



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