無償のMDTツールを使った展開作業の実際。インストールしたいOSとアプリをMDTに登録してネットワーク・ブートすれば、大量導入も手間いらずだ。
前編では「Microsoft Deployment Toolkit 2010(以下MDT 2010)」の概要とインストール方法までを紹介した。後編では、実際にクライアントPCにOSをインストールする手順を解説していく。
MDT 2010をインストールすると、管理ツールとして[スタート]メニューに[Microsoft Deployment Toolkit]−[Deployment Workbench]が登録される。これを起動し、[Information Center]−[Getting Started]を選択すると、MDT 2010を使った展開手順のヘルプが表示される。この番号順に進めていけば展開作業が完了する。
少し分かりづらいので、表にすると次のようになる(用語については後述)。
手順 | 作業内容 | |
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事前の準備 | ||
事前準備1 | コンポーネントのダウンロードとインストール(これは前編の作業で完了済み) | |
事前準備2 | 展開用の共有フォルダを作成する | |
インストールの準備 | ||
手順1 | Windows OSイメージや言語パック、デバイス・ドライバ、アプリケーションなどを管理コンピュータに読み込む | |
参照コンピュータへの展開とイメージのキャプチャ(省略可能) | ||
手順2 | 参照コンピュータ向けのタスク・シーケンスおよびブート・イメージを作成する | |
手順3 | ソース・ファイルやブート・イメージ、タスク・シーケンスを展開用共有フォルダへ配置する | |
手順4 | 手順3の共有フォルダから、PXEなどを使って参照コンピュータをブートする | |
手順5 | 展開ウィザードを使って参照コンピュータをセットアップし、そのイメージをキャプチャする(これがマスタとなる) | |
手順6 | キャプチャしたイメージを管理コンピュータに戻す | |
ターゲット・コンピュータへの展開 | ||
手順7 | ターゲット・コンピュータ向けのタスク・シーケンスとブート・イメージを作成する。Windows OSの標準イメージか、手順5でキャプチャしたイメージのいずれかを使用する | |
手順8 | 新しく作成したソース・ファイルやブート・イメージ、タスク・シーケンスを展開用共有フォルダへ配置し直す | |
手順9 | 手順8の共有フォルダから、PXEなどを使ってターゲット・コンピュータをブートする | |
手順10 | ターゲット・コンピュータ上で展開ウィザードを使ってセットアップを開始する。この作業を複数台のターゲット・コンピュータに対して行う | |
MDT 2010を使ったOSイメージの展開手順 用意したWindows OSやアプリケーションをいったん参照コンピュータ上にインストールし、そのイメージをキャプチャしてマスタとする。参照コンピュータを利用しない場合は、手順2〜6を省略し、最初からターゲット・コンピュータに展開、インストールしてもよい。 |
手順が10段階もあって複雑だが、手順2〜6の「参照コンピュータへの展開とイメージのキャプチャ」を行わない場合はシンプルである。MDT 2010をインストールしたサーバ上にまずWindows OSのイメージとインストールするアプリケーションのイメージを用意し、それをPXEブートなどでクライアントへ配布するだけだからだ。PXEブートとは、ブートするOSなどのイメージをPXEサーバ(Windows Server 2008 R2では「Windows展開サービス」に含まれている)からネットワーク経由で取得し、実行する機能である。MDT 2010を使った展開では、PXEブートでまずWindows PE環境を起動し、次にインストールするWindows OSの本体と設定情報をMDT 2010のサーバからファイル共有などを使ってダウンロードする。インストールの終了後は、指定されたアプリケーションのインストール作業が自動的に行われる。
参照コンピュータを使ったインストールの場合は、いったん参照コンピュータすなわちリハーサル用のコンピュータにOSとアプリケーションをインストールして必要なカスタマイズを行い、そのインストール・イメージをキャプチャし直してMDT 2010に保存する。その後、インストールされたイメージを(複数の)ターゲット・コンピュータに展開する。追加のソフトウェアを各ターゲット・コンピュータ上で個別にインストールせず、あらかじめインストール済みのイメージを展開するだけなので、展開作業は速くなる。ただし参照コンピュータとターゲット・コンピュータのアーキテクチャやシステム構成が大きく異なっているとデバイス・ドライバなどがそのままでは使えない可能性も高くなるし(その場合は手動でデバイス・ドライバをインストールし直す)、インストールするアプリケーションを更新/変更するたびにイメージを作り直す必要があるなど、同一構成のターゲット・コンピュータが大量にある場合以外は使いづらいかもしれない。
本記事では、参照コンピュータを使わない、一番シンプルなインストール方法を紹介する。
具体的な手順の解説の前に、MDT 2010で利用する用語について簡単にまとめておく。
用語 | 意味 |
---|---|
管理コンピュータ | MDT 2010をインストールしたコンピュータ(サーバ)。以後の操作はすべてMDT 2010の管理コンソールから行う |
参照コンピュータ | 展開の対象となるOSイメージを作成するための一時的なコンピュータ。最終的なターゲット・コンピュータとなるべく同じアーキテクチャ/構成のものが望ましい(ターゲット・コンピュータを一時的に利用することも可能)。参照コンピュータ上にOSや追加ソフトウェア、デバイス・ドライバ、パッチ、ユーザー・アプリケーションなどを一度的に導入しておき、そのイメージをキャプチャしてマスタとすると、展開時の再コンフィギュレーション作業などが少なくて済む。ただしこれを利用せず、直接ターゲット・コンピュータ上に展開してもよい |
ターゲット・コンピュータ | 最終的な展開対象。ターゲット・コンピュータごとにカスタマイズしたイメージ(もしくは構成情報)を送信して、完全無人インストールすることも可能だし、コンピュータ名やネットワーク接続の設定、アカウント設定などを展開時に行う方法(通常のインストールDVDによる個別インストール)のいずれにも対応可能 |
展開用共有フォルダ | 参照コンピュータやターゲット・コンピュータに配布するイメージを保存しておくフォルダ。この中に最終的なインストール・イメージを置き、それを例えばPXEなどを使ってネットワーク経由で配布したり、ネットワーク・ドライブとしてマウントしてネットワーク・インストールしたり、DVD-RやUSBメモリなどにコピーして利用する |
タスク・シーケンス | ターゲット・コンピュータ上で展開時に行う作業シーケンスを定義したもの。コマンドの実行やソフトウェアのインストール、ネットワークの設定、ディスクのパーティショニング、再起動といった作業を定義できる |
MDT 2010の用語 |
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