ITの世界で意匠権が関係あるのは、ハードウェアの筐体デザイナーくらいと思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。ソフトウェア・エンジニアにとっても意匠法は大いに関係します。
まず、物品と結び付いた画面(典型的には液晶画面)のデザインは意匠法で保護されます(例えば、iPhoneやiPadのロック状態からスライドして起動する画面のデザインは意匠登録されています)。多くの機器の操作が物理的なツマミではなく、液晶画面上の表示で行われることになっているので当然の規定です。
しかし、前述の通り、現時点の日本の意匠制度では、プログラム(システムソフトウェアかアプリかを問わずハードウェアにインストールして使われるもの)の画面デザインは意匠登録の対象ではありません。
米国を含む諸外国ではプログラムの画面デザインも意匠権で保護されるようになっており、日本が国際的調和を欠く状況になっていることから、意匠法改正の動きが出ています。
いままで、プログラムの画面デザインは、よほど美的な要素があるものでない限り、著作権法では保護されないため、模倣を防ぐことが困難でした。真にクリエイティブな画面デザインが意匠法で保護されるような改正が行われれば、そのようなデザインの価値が増し、加えて、ソフトウェアの画面デザイナーの地位向上にも結び付く可能性が十分にあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.